サテライトを活用した企業の障がい者雇用を考えてみる①

先日、とある新聞記事が私の目に飛び込んできました。その新聞記事とは毎日新聞の朝刊に掲載されていたのですが、記者が取り上げているテーマに私の眼だけではなく心も大きく引き付けられるものでした。(※下記より記事をご覧いただくことができます)

引用:毎日新聞「2019年11月7日朝刊」

記事を見て気になったのは紙面に大きく表記された「外注」「数合わせ」といった文字。障がい者雇用における「外注」「数合わせ」とはどういうことなのか。記事では、「企業は障がい者雇用を進める中、障がい者との共生社会ではなく分断を選び、雇用した障がい者を一般従業員と隔離したところで仕事に就いてもらっている」とあります。
障がい者の『サテライト雇用』で問題として議題に挙げられる点は、「企業が真剣に障がい者の雇用を考えているのか」ということです。『サテライト雇用』サービスの活用によって「障がい者の働く環境作りの放棄」「形だけの障がい者雇用」になっていないかということです。
記事で取り上げられている『サテライト雇用』サービスでは、障がい者が働く場所として「貸農園」での作業を提供していますが、「果たしてその仕事は契約企業にとって本業と密接な関係がある仕事なのか」「本業と関連性のない仕事に従事することで障がい者たちのキャリア形成をどのように考えているのか」が企業に問われることにはならないのか。企業が仕事を通じて雇用関係のある障がい者との関わりを手放すことこそ『外注』にならないのか。ということを指摘しています。また、そういったビジネスサービスをある自治体が誘致したことについての懸念も述べられています。

「ダイバーシティ(多様性)」や「SDGs」ということばが耳目に触れる機会が多くなった近年、企業の人事担当者にとって障がい者雇用への関心の度合いも大きくなってきている中で、今回の記事にあります『サテライト雇用』による障がい者の雇用について再考する時期に差し掛かってきたかもしれません。
障害者雇用促進法という法律のもと障がい者の雇用が義務化された結果、10年以上にわたって企業の障がい者雇用数は前年を上回る数値となっており、今後も働く障がい者の人数は増えていくことが予想されます。それに伴い、当たり前のように捉えられてきたこれまでの「障がい者雇用」が、時代に合わせて見直すべき部分も増えていくと考えます。

私はそのような想いから、皆さんに「サテライトによる障がい者雇用」について考えていただきたく、ミルマガジンでお伝えしようと考えました。

障がい者の『サテライト雇用』サービスとは

ここで改めて障がい者の『サテライト雇用』サービスについてご説明したいと思います。
企業が障がい者の雇用をする場合、障がいのある方たちは従業員と同様に自社施設(本社や支社など)に通勤し、業務に従事することが一般的だと考えられてきました。『サテライト雇用』の場合、企業の自社施設とは離れた場所に設置された仕事場で雇用関係のある障がい者が通勤・勤務することを指します。
『サテライト雇用』サービスの提供による障がい者雇用が開始されてから約10年が経過。今では全国に大小様々な規模の『サテライト雇用』をサービスとして提供する会社が存在し、数百社の企業が『サテライト雇用』サービスにより障がい者雇用を実践。現在、数千人の障がい者が働いています。

『サテライト雇用』を活用した際の主な特徴として、

  • 職場に常時配置されている専門スタッフが心身の問題発生時に即対応
  • 障がい特性に関係なく勤務が可能
  • ITツールにより遠隔であってもコミュニケーションが可能
  • 特に都心部など、通勤ラッシュが困難な障がい者でも通える職場

という点が挙げられます。

また、『サテライト雇用』サービスを活用する企業の状況として想定されるのは、

  • 法定雇用率が未達成で納付金(罰金)の対象となっている
  • 既に多数の障がい者を雇用する状態にあり、新たな受入れまでの一時的活用
  • 専門性が必要な特性の障がい者雇用の経験値を積むための助走期間
  • 自社施設への通勤が困難な地域での新たな雇用創出を目指す

といったことが考えられます。

いずれにしろ、主となる障がい者雇用を実践している企業が「一時的」であったり「新たな雇用創出」の場として活用する点では大きなメリットが感じられます。
ひとことで『サテライト雇用』と表現しますが、運営会社によって提供しているサービスの内容は様々です。例えば、障がい者の方たちに農作業に従事してもらう「農園スタイル」や契約企業の事務業務を切り出してくる「オフィススタイル」など、他にも軽作業や内職に近い業務に就くスタイルの『サテライト雇用』サービスもあります。

費用設定についても各運営会社によって違いがあります。サテライトとして使用する区画に対する費用、雇用する人材の紹介手数料、設備費用、コンサルティング費用など。
それぞれの運営会社における障がい者雇用に関する考え方にも違いがあると認識しています。

障がい者雇用の現状


2019年11月現在、国内の障がい者雇用状況を見てみましょう。

  • 法定雇用率2.2%の対象となる企業数100,586社(過去最高)
  • 全国で雇用されている障がい者数534,769.5人(過去最高)
  • 障がい特性別にみると「身体障がい者346,208.0人」「知的障がい者121,166.5人」「精神障がい者67,395.0人」(いずれも過去最高)
  • 実雇用率(平均雇用率)は2.05%(過去最高)
  • 法定雇用率達成企業の割合は45.9%(参考:昨年は50.0%)

ほとんどの項目で過去最高の数値となりました。特徴的なのが精神障がい者の雇用数に見られる前年からの伸び率が、身体障がい者(対前年比3.8%増)や知的障がい者(同7.9%増)と比較して非常に大きな数値(同34.7%)となっています。
それでは、企業規模別の雇用状況はどのようになっているでしょうか。

  • 45.5~100人未満:雇用数54,927.0人 実雇用率1.68% 達成企業割合44.1%
  • 100~300人未満:雇用数106,521.5人 実雇用率1.91% 達成企業割合50.1%
  • 300~500人未満:雇用数46,877.0人 実雇用率1.90% 達成企業割合40.1%
  • 500~1,000人未満:雇用数62,408.0人 実雇用率2.05% 達成企業割合40.1%
  • 1,000人以上:雇用数267,036.0人 実雇用率2.25% 達成企業割合47.8%

先ず、当然企業規模の大きな「1,000人以上」の雇用数267,036.0人という数値が目に入ります。法定雇用率を達成している企業の割合は半数に満たないものの、実雇用率は2.2%を上回っています。

障がい者の『サテライト雇用』による就労者数が、上記雇用数にどの程度の影響を与えたのかを正確な数値として知ることはできませんが、一定層の企業にとっては法定雇用率を満たすべく大きな役割となっていることが推察されます。企業が担うべき障がい者雇用が『サテライト雇用』サービスの活用により「楽に補うことができる(メリットがある)」と判断されれば、今後も障がい者『サテライト雇用』サービスが世の中に広まることが予想されます。
それは、違った方向から見た時に、一般企業で障がい者が周囲と机を並べて一緒に働くという「共生社会を作る」という考え方を邪魔する存在になるかもしれません。

次回へ続く

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム