サテライトを活用した企業の障がい者雇用を考えてみる②

前回に続き、障がい者『サテライト雇用』サービスについて。

サテライトを活用した企業の障がい者雇用を考えてみる①

2019.11.28

『サテライト雇用』に関する声


障がい者の法定雇用率が上昇する中で「多様性社会の確立」「社会的責任」といった風潮も追い風となり企業の障がいのある労働者の雇用に向けられた関心度合いは年々大きくなってきています。それは、障がい者『サテライト雇用』サービスの拡大からも証明されていると思います。
では、障がい者『サテライト雇用』サービスに対する世間の声というのはどのようなものでしょうか。

「障がい者『サテライト雇用』サービス“賛成”の声」

  • 専門性の高い支援や設備が助かる
  • 障がい者のペースに合った雇用を実現できる
  • 雇用に関するアドバイスがある(定着フォロー、助成金、コミュニケーションなど)

企業の人事担当者にとって「専門性のある支援」「障がい者のペースで雇用」という点は非常に大きなメリットとして感じられるのではないでしょうか。
障がい者雇用は周囲で働く従業員の理解や協力の有無が職場定着に大きく影響してきます。また、専門的な知識が必要な場面も多くなりますので、法定雇用率を満たすことへの義務感が先に立ち雇用環境の整備が不十分なまま求人活動を始めてしまうよりも、時間とコストを掛けて受入れ準備を作り込むことが大切になってきます。自社の雇用を充実させるための専門的なアドバイスを受けることができるというのも企業が活用したいと思える部分なのではないでしょうか。

「障がい者『サテライト雇用』サービス“反対”の声」

  • 障がい者雇用のアウトソース(外注ビジネス)
  • 手抜きした障がい者雇用
  • 障がい者との共生ではなく分断

『サテライト雇用』の大きな特徴である「離れた場所」での雇用という部分が「障がい者を隔離している」と捉えられてしまう。確かに、自社の施設から離れた場所で障がい者を雇用し働いてもらうというスタイルは見方を変えれば「隔離」と映ってしまう。
また、障がい者雇用に必要な周囲の理解や協力といった組織づくりや環境整備構築に掛かる時間や労力を『サテライト雇用』にアウトソースすることでショートカットしているようにも見えてしまう。

声に関しては、それぞれの考えや想いが限定された場面で一方的に伝えられることが多いと感じています。障がい者雇用への関心が高まり、ひとつの雇用形態として浸透している『サテライト雇用』についても両者の声を出し合う場がそろそろ出てきても良いのではないだろうか。
当然のことではあるが、その場に障がいのある当事者にも是非参加してもらいたいと切に願います。

障がい者本人とご家族

「働く」の意味
肉体・知能などを使って仕事をすること。
「雇用」の意味
労働に従事させるため、賃金をはらって人をやとうこと。

現在、有識者の方々を含め、障がい者の『サテライト雇用』サービスについての意見や考えを耳にすることが多くなったと感じています。(あるところでは「飽和状態の自社雇用の中、新たな雇用形態として役立つ」といった意見。あるところでは「障がい者雇用を丸投げした行為」だという意見。)
しかしながら、ここでも前項と同様に、働いている障がい者やそのご家族からの声が伝えられていないように感じます。

法律による義務化から、仮に法定雇用率を下回ってしまった場合は納付金(罰金)を納めることになりますので、この状態が長期化することによる「イメージダウン」を避けたいと考える企業は少なくありません。しかし、障がい者の雇用定着かを図るためには、従業員の理解も含めた環境整備という課題が人事担当者に大きな負担となります。その点『サテライト雇用』サービスであれば、社内の環境整備に掛かる時間よりも短期間で障がい者雇用実績を作りだすことができます。

その一方で『サテライト雇用』を就職のひとつとして選択する障がい者がいることも事実としてあります。障がいの特性により、今まで就職できる先が見つからず、限定された社会との繋がりの中で生活してきた障がい者とそばで寄り添ってきた家族にとって『サテライト雇用』という働き方はどのように映ったのでしょうか。選ばない選択肢もあったかもしれませんが、『サテライト雇用』による就職をすることで「一般企業」「最低賃金以上の給与」「広がった社会との関わり」を手にすることができるかもしれません。

もし、企業と障がい者がそれぞれの目的と要望を満たすために、安易な考えとして『サテライト雇用』を選択したとするならば、我々はどのような議論を交わし、行動に移すべきなのでしょうか。

これからの障がい者雇用を考える


2回にわたって「障がい者『サテライト雇用』サービス」について伝えてきました。
私自身、『サテライトで障がい者が働く』という選択肢が間違った働き方だとは思いません。これまで、障がい者が選択できる未来というのは、障がいのない人たちと比べてもごく限られたものでした。今、『サテライト雇用』という選択肢が増えたことは良いことなのだと思います。しかしこれは、これから続く未来の途中なのだと信じたい。もっと多くの選択肢を用意する責任が私たちにはあると感じています。
企業にとっても障がい者にとっても、それぞれの置かれた環境や状況に違いがあるため、用意された複数の選択肢の中から最適なひとつを選ぶことが当たり前な世の中を作りたいと思います。

「働く共生社会」の考え方のベースにあるのは「障がいのある従業員と障がいのない従業員が一緒に働く職場を持つこと」が大前提であり、企業も障がい者も安易に選んでしまう世の中の意識を変えていくことがとても重要だと考えています。もし、これまでの障がい者雇用が限定されたものであったなら、これからの障がい者雇用は健常者と同じ環境にすることが求められます。もし、企業が「働く共生社会」を目指すのであれば、義務だけの雇用ではなく障がい者であっても人としての価値を認め企業も一緒に成長するという姿勢が必要なのではないでしょうか。

例えば、「私どもは、障がい者との共生社会を目指して、法定雇用率を満たしています。」と話す企業の障がい者雇用のほとんどを『サテライト雇用』で賄っていると聞いたときに「?」と疑問に感じない世の中であって良いのか。周囲が聞いたときに「本当にそれで良いの?」と声を上げる世の中であってほしいと思います。

障がい者雇用の導入に際して、大変な苦労をしている人事担当者をたくさん見てきました。専門性が必要な障がい者雇用を企業に根付かせるためには、手抜きした取り組みでは共生社会を実現させることが難しいでしょう。「従業員の理解が難しい」「社内の協力が得られない」といった言い訳を人事担当者が苦しい顔をしながらお話する姿を見たくありません。
障がいを「個性」「多様」という言葉で表現するのであれば「働き方の多様性」も目指すことが必要だと感じています。

最後にお伝えしたいことがあります。
「障がい者の方たちのことを議論する場に障がい者がいない」ということ。一番に考えるべき人たちの声に耳を傾けることができる場を作りたいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム