『心の病』の発症を例えるなら『花粉症』の発症と似ている

新年度が始まるこの時期というのは、生活環境が最も大きく変化する時期でもあります。
学生の方であれば、進学や卒業にクラス替え。中には地方から都心の大学へ上京する学生もいるでしょう。また社会人であれば、辞令により昇進や異動が最も多いタイミングとなります。
人によっては、これまで当たり前のように過ごしてきた環境から未体験の場所に放り込まれたように感じる人もいるのではないでしょうか。そのように感じる人たちにとってはこの季節というのは、「嫌な」「日常を邪魔する」と思えるかもしれません。それに、最終学歴となる学校を卒業された方たちにとっては、学生から社会人に脱皮をして本当の意味での“自立”を目指す大きな一歩を踏み出すことになります。

1年の中で大きな節目となるこの時期は、希望や夢を抱いて新しい環境に馴染もうとする人たちがいる一方でそれら環境の変化に対応することができずに『心の病』を患ってしまう人も多く生まれてしまう時期だともいえます。

近年、「働き方改革」や「ストレスチェック制度」の導入など、政府が主体となって法律を定めることにより、これまでの働き方の見直しや改善、職場の安全衛生についてこれまで以上に義務として企業が責任を持って対処させる社会となってきました。未導入の企業に対する罰則(罰金)のようなものはありませんが、意識する企業が増えてきているように感じます。雇用主である企業が、人事を含めた従業員に対して「メンタルヘルスマネジメント検定」などを受講させる動き(個人的には最低でも役職者には受講させることを義務にしても良いと思っています)も活発になっています。
そうすることで、従業員の方々も自分たちの生活の質を重要視するようになってきているのは、仕事以外の日常生活を送る上でもメリットになる考え方ではないでしょうか。

しかしながら、この世から『心の病』になる人の数を減らすことはできますが、完全になくすというのは非常に困難であると感じています。
人が抱える悩みやストレスの原因というのは様々であり、物事に対する感じ方や捉え方も個々によって差があります。私が企業の人事担当者に向けて実施する研修には、障がい者の求人方法、法定雇用率達成や助成金、他社事例などの障がい者雇用に関するものが多いのですが、最近はメンタルヘルス対策をテーマにしたものも増えています。メンタル関連のお話をする際、『心の病』の発症を『花粉症』の発症に例えて説明することで参加者に理解していただきやすい工夫をしています。

『心の病』の発症は『花粉症』と似ている

皆さんもご存知のように『花粉症』というのはアレルギー反応のひとつです。
アレルギー反応とは、「私たちの体というのは、《免疫》と呼ばれる体を守る働きを持っています。この《免疫》作用がある特定の食べ物や花粉に対して過剰な反応を起こしてしまうこと」をいいます。食べ物によるアレルギー反応であれば「蕎麦」「小麦粉」「甲殻類」を口にした後、蕁麻疹が出たり嘔吐したりすることがあります。『花粉症』の場合、一般的によく言われる「スギ」「ヒノキ」や「ブタクサ」の花粉が鼻や目の粘膜に付着することで鼻水や目のかゆみにおそわれます。

『花粉症』の表現でよく使われるのですが、人は体の中に目には見えないコップを持っています。
そのコップは『花粉症』に対する《免疫》力を示しているのですが、人によって様々な容量(大きさ)となっています。仮にそのコップの容量が小さかった場合、晒される花粉の量によっては若い年齢のうちに『花粉症』を発症してしまいます。ちなみに、私の子供も小学生のときに『花粉症』を発症してしまい、春の季節はティッシュボックスが手放せない状態になります。

これを、『心の病』に置き換えてみると、『花粉症』と同じく体の中には目に見えないコップを持っています。
『心の病』でいうところのコップは《耐性》力を表しています。このコップの容量も人によって様々な大きさとなっているのですが、このコップの容量が小さかった場合、普段から蓄積されるストレス値がその容量を上回ってしまったときに『心の病』を発症してしまうことになります。

よく『心の病』による精神疾患と言えば、「うつ病」と認識されている方も多いと思いますが、実はそれだけではありません。
他にも代表的な精神疾患では、「双極性障がい」「統合失調症」もストレスや過労などを原因とした病気のひとつであると言われています。それぞれの精神疾患は違う病気ですので、当然のことながら治療法や周囲の理解にも違いがあります。しかし、区別が付きづらく疾患名を勘違いしてしまうことも少なくないため、間違えてしまうと本人にとっても周囲にとっても悪影響となることがあります。(お医者さんでも間違えることがあるぐらいです)
これら精神疾患が間違えられる原因として、類似した症状があるのですが、そのひとつに「初期に見られる抑うつ状態」というものがあります。分かりやすい症状としては、普段の健康なときの状態と比べて「元気がない」「ボーっとしている」「簡単なミスが多い」といった特徴が2~3週間以上見られます。
また、体の中にあるコップがあふれてしまい発症する『心の病』ですが、顕在化して初めてどの精神疾患に掛かってしまったのかが分かります。

『心の病』と『花粉症』発症の大きな違い

最後に『心の病』の発症と『花粉症』の発症に違いについてお話ししようと思います。
それは、「『心の病』の発症は防ぐことができる」ということです。

『花粉症』の場合、体の中にあるコップにどの程度の容量が残っているのかを自覚することはできません。おそらくは、ある年の春になってコップがあふれてしまうことを自覚します。
しかし、『心の病』は健康な状態の時とコップがあふれそうになっている状態には違いが見られます。これは、自覚することが難しい場合であっても周囲が気づいてくれることがあります。それにより『心の病』の発症の芽を早期に摘むことが可能です。そのためには、健康な状態であるときから『心の病』に関する知識を身につけることで予防することができるんです。

是非、企業が未然に防ぐための考えを従業員に浸透させる文化を作り上げてほしいと考えます。そのために国は助成金や法改正をしてでもサポートをするべきですね。実施しないときの損失(デメリット)は、実施した時の利益(メリット)を大きく上回ると思います。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム