おすすめ書籍:「発達障害サバイバルガイド」

このコラムを読んでいただいてる皆さんの中には、日常の場面で自分だけの『生活術』のようなものを活用している方っていらっしゃるでしょうか。例えるなら、普段の生活での「抜け」「忘れ」「ミス」などを防ぐための、言わば『ライフハック』のようなものです。
『ライフハック』とは、簡単に説明すると「より良い暮らしや人生を実現させるための工夫術」と表現すればいいでしょうか。

「忘れ癖」のある私であれば、
①普段使用するバックには予め「ハンカチと携帯用ティッシュ(今はマスクも)」を常備している
②メールやLINEなどの返事はすぐに送信する
「①」であれば、バックを変えると忘れ物をしてしまう「癖」があります。そのため、日常で使用する頻度の高いバックには事前に「ハンカチと携帯用ティッシュ(今はマスクも)」を入れておき、出掛ける時には財布とスマホを持てば大丈夫という状態にしています。
「②」は、返事に時間を空けてしまうと忘れてしまうため、調べ事などが必要ない連絡の場合であればなるべくすぐに返信するようにしています。
といった具合です。
「癖」や「性格」に加えて「障がい特性」により生活の色々な場面で発生する「抜け」や「ミス」を補うための自分だけの「工夫」「生活術」を持つ障がい者は多いと感じます。(実際のところ、障がいの有無に関係ないと思っています)

そこで今回は『発達障害サバイバルガイド』という書籍をご紹介したいと思います。
こちらの書籍は以前に『発達障害の僕が『食える人』に変わったすごい仕事術 / 借金玉・著』と同じ筆者で、自身も発達障がいの当事者という立場にあります。
前著は、発達障がいという特性からくる日常生活の不便やできないことを筆者の経験から得た「生活の知恵」として非常にユニークな表現で表されており、また赤裸々な部分として語られる内容は、これまでになかった当事者目線の書籍だと感じました。

おすすめ書籍「発達障がいの僕が『食える人』に変わったすごい仕事術」

2018.09.25

今回の書籍は前著をさらに普段の日常生活で見られる場面で発達障がい者が陥りがちな「できないこと」をセルフケアするためのヒント集のような内容だと思います。もちろん、当事者の方にはぜひ手に取ってもらいたい書籍である一方で、職場で発達障がいのある方と一緒にはたらいている方々にも読んでもらいたいと思います。

それは、「発達障がい」という障がい特性を深く理解し、職場で適切な配慮や支援を実施する立場になってほしいということを強く訴えているわけではありません。ご存知の通り、障がい者手帳に記載されている「障がい特性」が同一であっても、共通する部分もありますが個々が感じる困りごとや必要とする配慮には大なり小なりの違いがあり、その点が「障がい者理解」「コミュニケーション」が難しいと言われる理由のひとつです。
職場で一緒にはたらく周囲の方々には、この書籍を通じて健常者には感じない場面でも障がい者であれば感じる不便や困りごとがあることを知ってもらい、その対処法や工夫についても一緒に考える役割になってもらいたいと考えるからです。

「発達障害サバイバルガイド」を具体的に解説

『発達障害サバイバルガイド』では、色々な生活の場面や状況ごとに区切り、それぞれに活用できる『ライフハック(工夫術)』を具体的に解説しています。


繰り返しになりますが、「障がい特性」が同一であっても個々が感じる困りごとや必要とする配慮には違いがありますので、この書籍に書かれている『ライフハック』は、自分に当てはまる工夫もあればそうでない工夫もあります。

私は、これらのようなジャンルの書籍は、『自分に当てはまる工夫や解決法に出会うためのきっかけ』になると感じています。私から見て、著者である借金玉氏という方は、「発達障がいの研究者」「工夫の探求者」のような存在なのだろうと考えることがあります。感心するのは、ご自身で工夫ポイントを発見しようとする姿勢です。
当然、このようなタイプの方は多くありませんから、読者は書籍に書かれている工夫術をどんどん取り入れてみてはどうでしょう。そのまま自分に当てはまるケースもあれば、自分なりのアレンジを加えた独自の『ライフハック』になるかもしれません。マネできるものはマネをしましょう。
少しずつ自分の中で「できる」を増やし、自信を付けてほしい。著者はそれを望んでいると思います。

著書には他にも特徴的な点があります。前著に詳しく書かれていたのですが、筆者は二次障がいによる双極性障がい(躁うつ病)で大変苦しんだ時期があり、体調を崩した時の心の動きや命の危険があるところまで状態が悪化したことが記されているのですが、他の人が自分のような状況にならないように、または同じ状況の人をひとりでも多く救いたいという使命感があることを文面から感じます。
発達障がいのように、一見して周囲が認識しにくい特性では、二次障がいになる確率が低くありません。発達障がいの診断を受けた方の中には、メンタル疾患がきっかけで受診した際に発達障がいが発見される事例が多いです。
誰も悪くないのですが、本人も含め「発達障がいへの理解」が進んでいないために起こる二次障がいのような弊害は残念でなりません。

読み終えて感じたこと

日常の『当たり前』といわれることができなくて苦しんでいる発達障がい者の方は少なくありません。それは、見た目では分からない障がい特性であり、障がい特性の認識が深くないため、周囲は「できない苦しさ」を分かってあげられないのです。
ある特定の人たちにとっては該当しない『当たり前』ということばは、それ自体が意味する『当たり前』から逸脱してしまっているように思えてしまいます。

著 書:「発達障害サバイバルガイド」 定価1,500円+税
著 者:借金玉(しゃっきんだま)
1985年、北海道生まれ。ADHD(注意欠陥・多動症)と診断されコンサータを服用して暮らす発達障がい者。二次障がいに双極性障がい。
幼少期から社会適応がまるでできず、小学校、中学校と不登校をくりかえし、高校は落第寸前で卒業。極貧シェアハウス生活を経て、早稲田大学に入学。
卒業後、大手金融機関に就職するが、何ひとつ仕事ができず2年で退職。
その後、かき集めた出資金を元手に一発逆転を狙って飲食業界で起業、貿易事業等に進出し経営を多角化。一時は従業員が10人ほどまで拡大し波に乗るも、いろいろなつらいことがあって事業破綻。2000万円の借金を抱える。
飛び降りるためのビルを探すなどの日々を送ったが、1年かけて「うつの底」からはい出し、非正規雇用の不動産営業マンとして働き始める。
現在は、不動産営業とライター・作家業をかけ持ちする。
著者に『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』
(KADOKAWA)がある。
Twitter:@syakkin_dama
note:https://note.com/syakkindama
発行者:ダイヤモンド社 東京都渋谷区神宮前6-12-17

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム