障がい者の求人や雇用について課題を抱えておられる企業に見られる問題点で共通するのは「準備不足」だと感じるところが少なくありません。
受給できるかもしれない助成金のことをよく知らなかったり、障害者雇用を自社のメリットとしている他社の情報であったり、事前に集めておくべきものがたくさんあるのですが。ただ、どこから手を付けて良いのか分からないといった人事担当者が多いのもよく理解しています。
これまでの障がい者求人のターゲットは最も就職数の多い身体障がい者から、今は精神・発達障がい者へと時代は進みました。これは、毎年厚生労働省から発表される「障害者の職業紹介状況等」による「ハローワークから企業へ就職される障がい者の統計値」を見ることで確認することができます。
そのため、身体障がい者の採用時にはあまり必要ではなかった「受入れ準備」というステップを企業側が設ける必要がでてきたわけです。この「受入れ準備」というのは、採用した障がい者を職場での戦力化や雇用定着させるためには、受け入れる障がい者の特徴をもとにした配慮や理解を一緒に働く従業員が事前に情報共有されることを意味します。
年々、採用数が増加している精神・発達障がい者の戦力化や雇用定着を実現させるためには専門的な知識や経験を身に着けることも必要となってきているということです。理想としては、人事担当者や一部の従業員だけが知識であったり理解を身につけるのではなく、組織全体で取り組むことが重要であると考えます。
従業員向けの「障害者雇用研修」
ここ最近、企業からのご相談として、従業員向けの「障害者雇用研修」の実施に関するものが増えてきました。
『社内研修』の実施は、現在の障害者雇用で重要だと考えられることのひとつである「理解」を従業員に浸透させるためです。障害者雇用に取り組む際、障がい者本人を中心に配慮や安全を考えます。しかしそれと同様に、一緒に働く従業員への配慮も忘れてはいけません。
例えば、明日から日本語の話せない外国人の人が同じ部署で働くことになった場合。配属される部署の方々にとっては色々な情報が必要なはずです。「キャリア」「何語が通じるのか」「得意なこと」などなど。
障がい者が配属されても一緒に働く従業員が安心して受け入れてもらうためにはしっかりとした準備が必要です。それは、研修であり実習であり情報共有です。従業員が安心して働く準備が整えられれば、新たに採用された障がい者も職場で受け入れられ定着することができます。
この『社内研修』ですが、規模は10名程度から100名まで。組織や部署、対象者に合わせて様々です。
人事部員向け
人事部員向けであれば「法律」「助成金」「他社の雇用事例」「正しい知識」など、社内での役割を考えて専門的な内容が中心となります。
それは、企業内で先導役となり従業員に理解と協力を求めなければなりません。障害者雇用に取り組むときには、どうしても「法定雇用率のみを意識」「義務感だけで進める」「消極的な姿勢」になりがちで、それでは障害者雇用が企業にとってメリットある取り組みには成長しません。法律では企業による障がい者は緩和されることは考えにくい状況だと思うと、自社にとって利益となる取り組みにしてほしいと思います。
従業員向け
従業員向けであれば「障がい者の基礎知識」「現場の課題と解決」「障がいの理解」など、一緒に働く立場として不安に感じる部分や知らないことを少しでも解消できるような内容となります。
「障がい者」と一括りにされることが良いのですが、身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者では、特性やそれに伴う配慮・支援の形は全く違うものと言えます。
しかしながら、普段から障がい者と接する機会の少ない人たちからすれば、全部同じ「障がい者」となってしまうのは、仕方のないことです。こういった点から理解をしていただくことで、間違った思い込みによる雇用の邪魔をしてしまう考え方を変えてもらい、障がい者のことを少しでも知ってもらうきっかけ作りの場となります。
管理職以上
他にも管理職以上の方々を対象とした研修では、障がい者が業務を通じて成長させることであったり個々の特徴を職場で活用させるマネジメントの実施をしていただくような内容となっています。
企業規模によっては部長職以上の立場だと、障害者雇用の現場を知らない方々も組織にはたくさんいらっしゃいます。義務だけを意識している管理者は、数字が達成され納付金(罰金)の支払いがなくなった時点で取り組みを止めようとしたりします。
これまでの障害者雇用では、障がいのある人たちに仕事をしてもらうことがひとつの目的だったように思います。仕事を通じて自身の成長ややりたいことの発見などはあまり考えてこられなかったのではないでしょうか。
しかしながら、一部の企業では障がいのある従業員にも評価制度を設け、半期ごとに成果と目標の達成度合いをもとに待遇に反映させるところが増えてきました。そうすることで、障がい者も就職だけが目的ではなく、その先にある自身の生活向上であったり豊かな人生を過ごすことにもつながります。
仕事を通じて得られるものがあるのであれば、障がい者だけではなく社会的に信用の高い企業として評価されると考えます。