【Q&A】障がい者の職場定着を実現させるために面接で確認したい4つのポイント

【Q】

いつもお世話になっております。

当社は従業員数が250人の会社で、除外率の適応を受けています。現在2名の身体障がい者を雇用しており、お二人とも当社で働き出してから病気が原因で身体障がい者の手帳を取得されました。これまで障がい者の新規採用を経験したことがありません。
来年度以降、法定雇用率が引き上げられ、除外率が引き下げられることを踏まえ、新規の障がい者採用を進めることになりました。ハローワークに求人を出したところ数名の障がい者から応募があり、書類選考後に一次面接へと進みます。
ただ、障がい者の面接経験がないため、どのようなことに注意して挑めば良いか分かりません。
面接で聞いていいこと、聞いてはダメなことなど、アドバイスをいただけないでしょうか。
よろしくお願いします。

《通信系会社、従業員数250名、人事課長》

【A】

人材を採用するプロセスのひとつである「面接」はその人の学歴や経歴だけではなく、これから一緒に働くことになるであろう人物の人となりを知る大切なコミュニケーションの場であるとともに情報収集の場にもなります。

今回のご相談者のように、障がい者の新規採用の経験がない企業の人事担当者から面接時にどのようなことを聞いたり確認すれば良いのか分からないといった声をよく耳にします。面接での対応ひとつで雇用のミスマッチを未然に防ぐことができるケースも少なくありません。
障がい者採用の面接では一般求人では確認しないことも事前に聞かせていただきます。理由は雇用する際に組織としてその人が求める合理的配慮が提供できるのかや受け入れる職場の理解を確認しておくためです。

「支援状況」について

最近の障がい者雇用状況で見られる特徴のひとつとして、年間にハローワークを通じて企業に採用される障がい特性のうち発達障がい者を含む精神障がい者が約半数を占めています。今後もこの特徴は継続されることが考えられます。それに伴い、企業では障がい者が求める合理的配慮を提供できるよう、職場の従業員に対して障がい特性についての理解を進めるための取り組み(研修や実習)を行います。
一方で障がい者自身も社会生活を通じて自分の特性理解を深めることや健康の維持・増進の方法を身につけていくことが長く働くポイントにもなります。

これらのことを企業担当者やその部署が全て実施できる組織は限られており、特に障がい者雇用に取り組み始めたばかりの中小企業規模になると現実的ではないと考えます。そのような時、障がい者自身が障がい者就労移行支援事業所のような就労系障がい者福祉サービスや障がい者就労・生活支援センターのような支援機関からのサポートを受けていることにより、採用側である企業としても雇用しながら専門的なアドバイスを得られ、自社のknowledgeのひとつとしてノウハウを蓄積させることができます。

「健康管理」について


障がい者に限ったことではありませんが、心身の健康が仕事で成果を上げるための不可欠な要素のひとつだと考えます。障がい者の場合、日常の生活で見られる当たり前の場面でも心身に負担やストレスが掛かりやすいことがあります。
普段から自分の健康状態に気を配り、良好な状態を維持するための工夫を取り入れるなどの考えを持っているかどうかは、働き始めてからの環境変化や疲労を受けた心身へのケアにつながり、結果として長く職場で働いてもらうことができます。

例えば、面接では「健康を良好に保つために取り入れていることはありますか?」という質問を必ず行います。もし、その方が自身の健康面に気を遣っている方であれば、
「休みの日でも生活リズムが崩れないように就寝時間を平日と一緒にしています。」
「気持ちがモヤモヤする時には主治医やカウンセラーに話を聞いてもらうようにしています。」
「週末は時間を決めて好きなゲームに没頭して気分転換をしています。」
といった返答を聞くことがあります。

「医療機関」について

私がこれまでお会いしてきました企業で働いている障がい者、特に精神障がい者や発達障がい者の方々の多くが通院をしながら勤務していました。治療中の方もいらっしゃいますが、多くの方々は月1回などの定期通院で、現在の体調の報告や相談、処方箋の確認と受け取りといった内容です。うつや双極性障がいといったメンタル疾患の場合、自分で気付きにくいときや異変があることを教えてくれる人が周囲にいないときは症状が進行してしまったりすると体調にも影響が出てしまい、また回復に多くの時間が必要になってしまいます。そういったことを防ぐ意味でも定期的な通院は主治医からの状態確認や気になることを相談できるなど、障がい者にとって安心を与えてくれる存在のひとつといえます。

しかし、中には医療機関や主治医に対して信頼が持てず、関係性が良好でなくなってしまった障がい者もいます。過去にあった出来事が原因かもしれませんが、雇用する側にとっては健康維持が保障されない可能性が考えられるため、医療機関との信頼関係については確認が必要だと考えます。

「求める配慮事項」について


障がい者の採用時に必ず聞いていただきたいのが「配慮事項」です。仕事をする上で職場の方々からの障がいに対する理解と協力を得ることが配慮で採用プロセスの早い段階での確認が必要です。
仕事に対する意欲もあり、長く勤めたいと考えている障がい者人材は自身の障がいに対する理解にもしっかりと目を向けていて、周囲を頼ることで仕事に取り組むことができると認識しているといえます。
面接の場面で求める配慮事項を会社側に伝えられるかどうか。求める配慮の内容がこちらにも理解できる内容でまとめられているか。も職場定着を実現させるためには重要な判断材料となります。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム