障がい者担当者が取得しているとメリットになる5つの資格

2019年を振り返ると今年もたくさんの相談や雇用事例、先進的取り組み企業に関わる機会がありました。「法定雇用率の引き上げ」「精神障がい者の雇用義務化」など、法律の改正に伴い、企業に雇用される障がい者が増加するのに合わせて、人事担当者の役割や業務範囲も大きくなるのと同時にいち担当者に掛かる負荷も大きくなってきていると感じます。

障がい者雇用を上手く取り組んでいる企業では、人事担当者を中心とした組織化された雇用環境づくりに力を注いでいるところが多くなってきました。この障がい者の雇用環境づくりというのは、設備に関することだけではなく周囲で一緒に働く従業員の理解促進という部分も指しています。

今回は、人事担当者も含めた職場で障がい者と一緒に働く従業員や管理者が取得しておくとメリットになる資格についてお話しようと思います。下記に挙げる5つの資格は、ほとんどが講習を受講することで取得可能なものになっています。資格取得者を配置することで安定した障がい者の雇用を職場で実現させることができます。

障がい者職業生活相談員

  • 受講要件:5人以上の障がいのある従業員が働いている事業所は配置義務
  • 取得方法:講習の受講
  • 問合せ先:独立行政法人 高齢・障がい・求職者雇用支援機構

「障がい者職業生活相談員」とは、職業生活全般(業務マッチング、キャリア育成、職場環境の構築、労働条件、職場の人間関係、余暇活動など)についての相談・指導を行うことが大きな役割となっています。

講習の受講には、各都道府県に設置されています「高齢・障がい・求職者雇用支援機構」の各支部への申し込みが必要です。講習は2日間、計12時間の受講となります。講習につきましては、年間スケジュールが決まっています。近年、企業からの受講申し込みが増加していますので、必ず予定を確認した上で早めの受講をおすすめします。

【独立行政法人 高齢・障がい・求職者雇用支援機構「障がい者職業生活相談員認定講習」】
https://www.jeed.or.jp/disability/employer/employer04.html

雇用環境整備士第Ⅱ種(障がい者)

  • 受講要件:特になし
  • 取得方法:講習の受講
  • 問合せ先:一般社団法人 日本雇用環境整備機構

雇用環境整備士とは、多様性ある人材の対象となる育児者(第Ⅰ種)・障がい者(第Ⅱ種)・エイジレス(第Ⅲ種)を企業として採用し活用するために必要な知識を持ち、職場環境を整備する役割となります。
障がい者の場合は雇用環境整備士第Ⅱ種となり、例えば、精神障がいや発達障がいに見られる特性やそれに付随した職場での雇用事例などを題材にした講習を受講することで、企業側が知っておくべき環境の整備やマネジメントについて学ぶことができます。

【一般社団法人 日本雇用環境整備機構「雇用環境整備士」】
http://www.jee.or.jp/eei/eei.html

精神・発達障がい者しごとサポーター

  • 受講要件:特になし
  • 取得方法:講習の受講
  • 問合せ先:厚生労働省、各地域の労働局

「精神障がい者の雇用義務化」の施行後、企業での精神障がい者・発達障がい者の雇用が進む一方、当事者が求める配慮は様々であるために周囲の理解が難しいという課題があります。講習が約2時間の「精神・発達障がい者しごとサポーター」では、その名の通り「サポーター=応援者」という立場から、想定された職場での色々な場面(出勤時、業務中、休憩時間など)での当事者たちとの接し方や配慮について、実践できる具体的事例をもとに学ぶことができます。

今後、企業で働く精神・発達障がい者は確実に増えていきます。「精神・発達障がい者しごとサポーター」の受講者が企業内に増えることで、当事者はもちろんですが、一緒に働く周囲の従業員にとっても安心した職場生活を送ることができます。

【厚生労働省「精神・発達障がい者しごとサポーター」】
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shigotosupporter/

企業在籍型ジョブコーチ

  • 受講要件:特になし(様々な特性の障がい者を多数雇用する企業)
  • 取得方法:研修講座の受講
  • 問合せ先:独立行政法人 高齢・障がい・求職者雇用支援機構

今回、ご紹介する資格の中で最も専門性の高いものがこの「ジョブコーチ」になります。
役割としては、障がい者と企業の両者からの情報をもとに、実際に職場でどのようなサポートが必要なのかを見極めます。障がいのある従業員の個々の特性を理解し、当事者はもちろん一緒に働く従業員も仕事がしやすくなる工夫や方法を見つけていきます。また、会社や当事者以外にも支援機関やご家族との連絡・情報共有など、業務範囲は非常に広域となります。

一般的なジョブコーチは社外から来ていただく専門員というイメージが強いと思いますが、企業の従業員がジョブコーチの資格を取得することも可能です。この場合のメリットは、自社のことを理解している従業員だからこそ「職場」と「障がい者」の双方の立場からできる支援を実施します。また、社外のジョブコーチと違い常に社内に配置されているため、迅速な対応と期限なくしっかりとした支援体制が整えられます。
ジョブコーチ取得に際して活用できる「障がい者雇用安定助成金 障がい者職場適応援助コース」という制度もあります。

メンタルヘルス・マネジメント検定(Ⅰ種~Ⅲ種)

  • 受講要件:特になし
  • 取得方法:検定試験の合格
  • 問合せ先:大阪商工会議所

職場や日常生活などの場面で、強い不安や悩みによるストレスを感じる人が年々増加しており、近年では精神疾患の発症を理由に会社を休職・離職する人も珍しいことではない時代となりました。安全衛生管理の立場から、責任を問われる事業主としては、従業員が仕事や職場で成果ある活躍するためには、心の健康管理への取り組みを含めた職場の好環境設置が一層重要になってきました。

「メンタルヘルス・マネジメント」の考え方は、ストレスやそれによる心身への影響などのメカニズムとその原因となる問題の対処法を理解することで精神疾患の発症を予防することが重要だと説明しています。これにより、従業員ひとり一人が知識や対処法を身に着けることで、労働生産性の維持・向上、社会的責任、人的資源の活用が図れます。結果として、休職者や離職者を軽減させることができる組織では、障がいのある従業員の採用や職場定着にも大きく作用することが考えられます。

現在、厚生労働省の発表では法定雇用率を達成している企業の割合は45.9%となり、企業規模ごとの内訳を見てもほとんどが半数を下回っているということは多くの企業が納付金(罰金)を収めている状況です。その中で障がい者の法定雇用率を意識しすぎた企業は、従業員の理解促進などの雇用環境整備が後回しとなった状態での求人活動が目立ち、そのため障がい者に対する間違った思い込みや理解不足からくる考え方は障がい者の職場定着を邪魔することになっています。

障がい者雇用を進める上で必要なことのひとつは障がい者への理解です。障がい者への理解が進むことで生まれる「安心安全な職場の実現」は障がい者だけではなく、一緒に働く従業員にとっても健康を維持させる快適な環境となります。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム