精神障がい者保健福祉手帳に位置付けられている発達障がい。
でも、精神障がいと発達障がいはちょっと違います。
企業の人と話をしていると、手帳が同じなため誤解を招くことも多いようですので、今回は「発達障がいの特性」について書いてみたいと思います。
発達障がいは、先天的な脳の機能障がいです。
診断の名前はいろいろあって、広汎性発達障がい、自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群、高機能自閉症、ADHD(注意欠如多動性障がい)、LD(学習障がい)など、これ以外にもまだあります。
(LDについては、最新の診断基準であるDSM-5では、SLD=”Specific Learning Disorder”(限局性学習症)に名称が変更されました。)
先天的な障がいなので、生まれ持った障がいです。
ただ、診断の時期は人によって様々で、幼少期、学齢期、大人になってからと診断時期はかなり多様です。
でも、先天的なので生まれ持った障がいであることに変わりはありません。
例えば、大人になってから発達障がいの診断を受けた人がいるとします。
大学や社会人になってからできないことが増え、自分自身の中でしんどい気持ちが膨らんでいき、クリニックで診てもらいたい気持ちになって、受診→診断となります。
これだけで考えてみると、先天的というよりは後天的と思われがちです。
でも、発達障がいは先天的な脳機能の障がいです。
(しつこくてすみません…。)
つまり、先天的ということは、親の育て方、本人の努力不足、性格上の問題ではないということです。
でも、診断は大人になってから。
ややこしいですね…。
発達障がいのある人と関わったことがない人にとっては、いまいち理解しにくいことだと思います。
発達障がい(自閉症スペクトラムを中心に考えると…)の特性は、「社会性」「コミュニケーション」「想像力」「感覚(五感)」に障がい(生きにくさ)があると言われています。
(ADHDやLDの人は、上記とは違った障がい特性がありますが、また別の機会に書きたいと思います。)
詳細は、スライド「3つの障がい特性 + 感覚面の偏り」をご参考ください。
どれも、目に見えない障がい特性です。
幼少期や学齢期では障がいが見えなくても、大人になって障がいが表面化する(苦手なことが目立つようになる)ことはよくあることです。
なぜ、大人になってから障がいが表面化するかというと、幼少期→学齢期→社会人となっていく中で「周囲から求められるスキル」が多様になるからだと、私は思っています。
こちらも、スライド「周囲から求められるスキル」をご覧ください。
大人になっていく中で、赤字でも示しているようにコミュニケーション能力、相手の立場に立って考える、臨機応変、ストレス処理など、たくさんのことが求められ、それは全て自己責任として周囲から求められます。
脳の機能障がいは、脳の中で行う情報処理に機能障がいがあると言い換えることもできます。
周囲の空気を読んで行動する、臨機応変な行動、ストレスをセルフマネジメントするなど、「情報を自分なりに処理して柔軟に行動する」といったことは、発達障がいのある人にとってそもそも高度なことであり、求めること自体本人にとってはハードルが高く、失敗してしまう可能性が高いと思います。
発達障がいは、脳機能の障がいゆえに、できることとできないことがかなりアンバランスです。
スライドの「個々によって多様な偏りがある 」のとおり、真ん中の黒線を平均として上ができる、下ができないとした場合、発達障がいのない人は黒マルで示しているように小さく波打ちます。
でも、発達障がいのある人は、できることとできないことにかなりの差があるため、赤マル・青マルのように大きく波打つことになります。
また、赤マルと青マルは、どちらもアンバランスであるものの中身は少し違います。
ここが難しさであり、奥深さでもありますが、発達障がいのある人のアンバランスさはある程度同じ共通点はあるものの、十人十色であるということです。
私たちもそうですが、発達障がいのある人も個々によってできることとできないことに違いがあり、個人差があることは忘れないようにしたいものです。
発達障がいは、見えない障がいとも言われます。
ですので、特性がわかりにくく、身を置く環境(学校、家庭、職場など)によって障がい特性も大きく変化します。
相手のことを知ることは、障がいの有無に関係なく、時間がかかるものです。
発達障がいの人と話をしつつ、時には本人をよく知る支援者とも話をしつつ、少しずつ本人の障がい特性を理解していけると、本人はより一層働きやすくなるんだと思います。