雇用企業インタビュー:リベラル株式会社

今回、ミルマガジンのインタビューにご協力いただきましたのは、「日本一」の品質を掲げ中古オフィス機器のリサイクルと販売の事業をされている「リベラル株式会社」様です。こちらの会社は、オフィスサポートを事業としているラディックス株式会社様の特例子会社になります。
しかし、その企業理念や業績は特例子会社の域を超えているといっても過言ではありません。また、先日は社会への貢献を大切にしている企業に贈られる「ホワイト企業大賞」を受賞されました。

インタビューにお答えいただきましたのは、クラフトマンシップ事業部管理課の佐久間 賢様です。従業員全員が誇りをもって働いていることが伝わってきます。

Q1.読者向けに会社の紹介をお願いします。

リベラルは社員の大半が障がい者でその多くを知的障がい者が占め、彼らが中古OA機器の清掃・修理を行い、その商品を販売をしている特例子会社です。
「日本一綺麗な中古OA機器を生み出す」ことを指針として掲げ、新品同様の品質で中古OA機器を市場に創出することで、企業理念である「障がい者の仕事ぶりを世の中へ拡める」ことを果たしています。

Q2.障害者雇用に取り組んだ経緯やキッカケを教えてください。

2007年当時、障がい者の雇用率が低く、このままの状況が続くと「厚生労働省のホームページで社名公表する」と宣告を受けたことが全ての始まりです。
そういった経緯で設立された会社がリベラルです。

Q3.準備段階や開始当初の失敗談や苦労はありましたか?また、その克服方法は何でしたか?

すべてがゼロからのスタートでした。障がい者と接したことのない健常者が障がい者の指導にあたるわけですから、苦労というより毎日彼らと仕事をすることで精一杯でした。
何度説明しても理解に時間がかかる、わかりやすいと思って作った自信作のひらがなをふったマニュアルも、字が読めない社員には通用しない、想定外のことが続く日々でした。そんな毎日の積み重ねですから、私たちもかなり疲弊してしまい、江戸川区の就労支援センターへ相談しました。
その時に、私たちの疲れきった顔を見て「障害者雇用に必要なのは、のんき・根気・元気」という言葉をかけてくれました。
この言葉は、今でも私たちが大切にしている言葉です。当時の私たちはその言葉にどれだけ助けられたか、今思い返しても、あの出来事は忘れられない転機です。「元気はあったけど、のんきと根気はなかった・・・」そう気づいた瞬間でした。
それからは、大変な時こそ「のんき・根気・元気」の言葉を思い出しています。障がい者が理解できないのは本人に問題があるのではなく、教える側の問題です。障がい者一人ひとりに合わせたマニュアル作成など、工夫を重ねることに妥協を惜しまず障がい者と向き合っています。

Q4.障害者雇用に関する勉強はどの様にしていますか?また、情報収集の方法も教えてください。

障害者雇用について特別なことを勉強をしてきたわけではありません。どちらかというと座学よりも実践・経験から、多くを学んできたと思い返します。
障がい者と本気で向き合い、どうすれば彼らを成長させられるかを日々考え続けた結果が今のリベラルであり、山あり谷ありでしたが、彼らと共に仕事をしてきたことが何よりの学びになりました。

日々開催されている障がい者関連のセミナーに参加したり、弊社に会社見学に来られる企業・団体の方々との情報交換も学びの場になっています。

Q5.障害者雇用の為に社内で新たに始めたことはありますか?

当初は7名でスタートしましたが、人数が増えたことにより、考え方も多様化しました。かつては「日本一綺麗な中古OA機器を生み出そう」と決めてそれだけで実現できていた社員の気持ちや組織としての方向性も少しずつズレが生じてきたことで、社員全員で「リベラルクレド」を2015年に制定しました。
それからは何か問題が起きた時には必ずクレドを見返し、社内にも掲示することで同じ方向を向いて仕事をすることができています。また、健常者社員に対しては障がい者を指導する際に、ブレがないよう独自の雇用指導マニュアルを作成し健常者社員で共有しています。
設立からしばらくは知的障がい者中心に雇用をしていましたが、2014年からは精神障がい者の雇用も始め、それに伴い職域を広げることができました。
今では、PCデータ消去、キッティング作業、仕入業務、販売なども障がい者が行っています。

Q6.障害者雇用の為に利用したサービスはありますか?

利用したサービスというより、協力していただいた機関は本当に多くあります。
就労支援機関や教育機関からは、障がい者と接する際の姿勢を学び、また、既に障害者雇用をしている企業や特例子会社には見学をさせていただき、取り組み方や工夫を学ばせてもらいました。今まで本当にたくさんの方々に支えていただいたと感じています。

設立当初から、親会社の特例子会社だけでなく地域の特例子会社になることを目指してきましたから、地域との繋がりは、今も大切にしています。何か困ったことが起これば、就労支援機関や学校、ご家族と共に、障がい者当人にとって最善は何かを考えています。

Q7.障害者雇用を始めて感じたメリットはありますか?

障がい者の仕事中に見せる真剣な目や姿勢を見ていると、一生懸命に働くことの本質を考えさせられます。
お客さんからお褒めの言葉をいただくと必ず彼らに伝えるようにしています。そうするとすごく嬉しそうな表情で、最高の笑顔を見せてくれます。そんな彼らの笑顔を見ていると健常者も幸せになれますし、逆に「健常者である私たちが障がい者を守ろう」「障がい者に恥じない仕事をしよう」といった覚悟ができます。設立以来、製販一体型をとっているのもそれが理由です。
障がい者と共に働くということで、心が豊かになっていると思います。こういった環境で働けることは幸せですね。

Q8.今現在、障害者雇用においての目標は何ですか?

リベラルで働く障がい者の仕事ぶりを知ってもらうことで、障がい者が活躍する場が増えればという思いが常にあります。実は、この質問もよく聞かれるのですが、正直一番大切なのは「今」だと思っています。社員全員が元気に笑顔でいきいきと働ける職場でなくては、前述も成し遂げることができません。
「人が会社に合わせる経営ではなく、会社が人に合わせる経営」というリベラルの経営方針を守り抜き、その職場環境を作り続けることが、組織としての永遠の課題です。

Q9.障害者雇用に取り組もうか悩んでいる企業へのエールをお願いします。

弊社はゼロから始まり、10年の歳月を経て今日があります。障害者雇用に、すぐ結果を求めることは難しいことや一筋縄ではいかないことも経験してきました。たとえ時間はかかっても、障がい者一人ひとりと真剣に向き合うことがとても大切であり、それが人材育成へと繋がります。決してあきらめることなく障がい者と向き合うことで障がい者が懸命に努力する姿勢を見せてくれました。
弊社の経営方針は「人が会社に合わせるのではなく、会社が障がい者(人)に合わせる経営」です。ひとりでも多くの障がい者が雇用され、戦力として活躍できる場ができればという思いを込めて、今後も「障がい者の仕事ぶりを世の中へ拡める」ということを使命として事業性と社会性双方を実現できるよう取り組んでいきます。

リベラルだけでは達成できない、「障害者雇用が義務だけではない社会」をみなさんと共に目指していきたいです。(いつでも見学を受付しております。是非お気軽にお越しください!)

Q10.就職準備中・求職活動中の障がいを持った方へのエールをお願いします。

(リベラルで働いている精神障がい者当事者よりメッセージ)

就職は、決してゴールではありません。大切なスタートであるべきです。
就職活動が思うようにいかないと、つい妥協してしまいそうになったり、意欲を失ってしまったり…私自身もそうでした。
でも今はリベラルに就職して、仕事ができていることが、とても幸せです。働くことがこんなにも楽しいとは思ってもいませんでした。就労が難しいと言われる障がいをもつ私が働けているように「たとえ道のりは長くても、自分に合った会社に巡り合える」と今の私は、胸を張って言うことができます。
・求めるだけではなく、本気で努力する。
・自分の居場所を自らの手でつかみとる。
「心」が喜ぶ仕事をして、いきいきと働くことで、他の障がい者に勇気を与えられるよう一緒に前へ進んでいきましょう!

インタビューにご協力いただきありがとうございました。

会社情報
会社名:リベラル株式会社
代表者名:本間 省三
設立日:2008年4月
業種:卸売業・小売業
所在地:東京都江戸川区西葛西3-8-18 西葛西3丁目ビル2階
ホームページ:https://www.riberal.co.jp/
事業内容:中古OA機器販売事業 他

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム