2026年がスタートしました。今年は7月に一般企業の法定雇用率が2.5%から2.7%への引き上げが行われます。2025年12月に厚生労働省から公表された障がい者雇用状況の集計結果では、企業で雇用される障がい者の実数が初めて70万人を超えました。
2026年は障がい者雇用にとって通過点ではありますが、障がい者・雇用企業・支援者をはじめ、様々な関係機関など、ひとつひとつの視点に立ってみると、重要な一年になると思います。
今回は誰もが豊かな生活を目指すことができる社会の実現を念頭に、大いなる期待を込めてこれからの障がい者雇用について5つのことを綴っていきたいと思います。
① 支援する役割の重要性:「採用」から「定着」へ、プロフェッショナルな支援の確立

2026年以降、障がい者の働く職場が増加することで障がい者が安定して長く働き続けるための「支援する役割」の重要性はかつてないほど高まります。
ここで言う「支援」とは、単なる優しさや守を指しているのではありません。障がい特性に基づいたひとりひとりが求める最適なサポートと期待される業務の遂行を併せ持った「プロフェッショナルな支援」を指しています。
企業内には「企業在籍型ジョブコーチ(職場適応援助者)」や「障がい者職業生活相談員」を持つ担当者人材の配置が一般的であると考える組織が増えてきました。担当者は、現場のマネージャーと障がい当事者の間に入り、「通訳」としての役割を果たしこともあります。当事者の「困りごと」に目を向け、一緒に改善できる方法を見つけサポートする。一方、当事者が業務を遂行できるような形にカスタマイズした配慮が提供できるように一緒に勤務する同僚や上司と組み立てを行います。併せて、当事者と周囲との関係調整を図るコミュニケーション能力も求められます。それらによって組織の安定が保たれることになります。
また、外部の支援機関(就労移行支援、障がい者就労・生活支援センター等)との連携もより重要なプロセスになります。担当者は支援機関を「人材定着のための外部パートナー」として位置付け、協力関係を重視します。
例えば、外部からの定着支援の質が期待に届かなかったり、障がい者自身にとって重大な問題に遭遇した際の対応が不完全だと感じられる支援機関に対して担当者は改善を求めていかなければなりません。担当者にとって支援機関と密に連携することで得られるメリットは非常に高くなります。勤務する障がい者人材が健康な状態で、期待される業務を実行するためのサポートを提供してくれる支援機関は、企業の担当者にとって心強い存在となります。
さらに、これからはIT技術を活用した支援も標準化するかもしれません。ウェアラブルデバイスによる体調管理アプリは私のまわりでも導入する企業が増えてきました。また、AIを活用したメンタルヘルスの可視化、業務のサポートなど、仮に支援者の経験が浅くてもそれらを補うデータに基づいた客観的な支援体制が構築される日も遠くないと感じます。今後AIは、業務を行う障がい者のサポートに加えて、担当者の実務をサポートする役割も担う時代が遠くない未来にあると思います。
支援はたとえ経験や知識があっても時には失敗することもあります。その失敗した経験を次に活かすためのデータとして蓄積し、組織で共有することで「個人のミス」にしない体制づくりこそが重要です。障がい者雇用は一過性のものではなく、継続性のある取り組みにできる組織がこれからの時代を生き抜く組織であると考えます。
② 企業による職業訓練機関:受動的採用から「育成型採用」への転換

2026年以降、障がい者雇用において従来の採用チャネルだけでは法定雇用率の引き上げや労働者不足を補う採用で計画を満たすことは困難な時代になるかもしれません。特に、一定のスキルを持った即戦力人材などは獲得競争が非常に厳しく、企業間での採用競争がより加熱した状態になることが考えられます。
そこで数社の企業(おそらく大企業)が自社にとって必要なスキルを身につけられる障がい者人材を育成する「ジョブトレーニングセンター(職業訓練機関)」を開設するところが出てくると考えます。
従来の障がい者採用では、就労支援機関にてジョブトレーニングや自己理解・セルフケアなどを習得した障がい者を企業見学や実習、面接を経て採用にいたるケースが多かったと思います。
「ジョブトレーニングセンター(職業訓練機関)」は、複数の企業が共同出資し、各企業が自社の業務に必要なITスキルや経験をトレーニングの実施と合わせて障がい者が身につけられるようになります。特にIT分野の企業であれば、専門的な経験としてRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やノーコード開発の技術を教え、自社のDX推進要員として育成してから採用するといった動きが加速します。センターでトレーニングを積む障がい者は習熟度が一定以上になったタイミングで、採用予定である企業での実習を経て正式採用となります。仮に採用予定である企業への就職が叶わなかった場合、他の参加企業へのエントリー変更なども可能で、センターでトレーニングを受けることが障がい者にとっては就職に求められる多くのことを学び・習得できる機会となりますので、戦力としての価値が高くなります。
さらに、センターにおける「訓練」は、障がいのある社員のためだけのものではなく、既存従業員のマネジメント能力向上や、業務プロセスの見直し(業務分解・標準化)の訓練の場としても機能します。障がい者を育成するプロセスを通じて、マニュアルの整備や指示の明確化が進み、結果として組織全体の生産性が向上する。このように、企業自体が「学びと成長の場(ラーニング・オーガニゼーション)」へと変貌することが、2026年以降の雇用成功の鍵となります。
次回に続く。





