【上前のひとり言】「それ『横柄』『尊大』になってない?」【後編】

ひとり言です。

前回の続き。

そのような企業にも関わらず、同社からは『横柄』『尊大』な部分をカケラも感じたことがありません。だからこそ、人が集まってくるのだと思います。

しかしながら同社のようなところばかりでなく、自社で培った経験が、時に人の目を曇らせることがあると感じる場面があります。「障がい者雇用に関わる担当者がそのような態度をとるはずがない。」と思われるかもしれません。もちろん、当事者に対してそのような態度をとる方は少ないでしょう。でも、その矛先が「他社の取り組み」や「他社の事例」に向いたとき、私たちは知らず知らずのうちに、この『横柄さ』や『尊大さ』を発露させてはいないかなと。

障がい者雇用に関するセミナーや研修、あるいは業界のネットワークにおいて、他社の取り組みを見聞きする機会が増えて来ました。その際、あなたの心に最初に浮かぶ感想はどのようなものでしょうか。
「そのやり方は、うちの業種では通用しないな。」「それは大手だからできることだ。予算規模が違う。」「◯◯ができてないから参考になんてならない。」といった「批評」や「否定」が先に立つようであれば、注意が必要かもしれません。

確かに、このような指摘は正しい側面があるかもしれません。自社でこれまでに積み上げた実績に裏打ちされたプライドがそのような考えをさせるのかもしれません。しかし、他社の事例を即座に「自社には合わない」「レベルが低い」と切り捨ててしまう姿勢はちょっと違うように感じます。ちょっと違うと感じた中にも、そこに隠されているかもしれない「新たな気づき」や「ヒント」を自ら放棄すしてしまい、結果的に損をしていないのかなと思います。「大した取り組みではない。」と横柄に斬り捨てるその瞬間に、私たちは自らの成長の機会を閉ざし、組織の可能性を狭めてしまっているように思えてなりません。

心に現れる「横柄さ」や「尊大さ」を払拭し、新たなアイデアとして取り入れるにはどうすればよいのか。例えば、「それは違う」「間違っている」という批判的な反応(Judgment)を、「面白い」「なぜだろう?」という好奇心(Curiosity)に変換するのはどうでしょう。

ある企業が時流に合わない雇用条件や職場体制だったとします。「全くダメ。」と切り捨てるのは簡単です。 しかし、そこで一歩踏みとどまり 「なぜ、この企業はあのような条件で求人を行なっているのか?」「なぜ、障がい者とのコミュニケーションに労力を割かないのか?」と問いかけてみると、その事例は「批判の対象」から「探究の対象」へと変化します。 もしかすると、その疑問に対する問いかけや分析することが自社の取り組みにとって貴重な教材になるかもしれません。

他社の事例は成功や失敗も含めて、すべてが私たちへのギフトだと思います。 それを『横柄な』『尊大な』姿勢で見下げるのではなく、敬意を持って分析し、自社の文脈に翻訳して取り入れることも時には発見になるように思います。

障がい者雇用の現場には最適解がありません。
企業や組織文化に合わせて、雇用を形作っていくように思われます。それは、他社の事例を完コピしても上手くいかないことが証明しています。だからこそ、私たちは経験や他社の事例から学び続けるという姿勢が大切だと思っています。規模の大小や、業種の違い、手法の巧拙にかかわらず、そこには必ず、誰かが悩み、決断し、実行したという「事実」があります。その事実に謙虚に向き合える人だけが、既存の枠組みを超えた新しいアイデアを掴み取ることができます。

今日触れる他社のニュース、明日出会う他社の担当者。 その一つひとつに対して、「何か学べることはないか」と、柔らかい心で向き合いたいと思います。謙虚な姿勢が、これからの障がい者雇用に豊かな実りをもたらすと信じています。

最後に、私は本業以外に一般社団法人日本障害者雇用担当者協議会の代表をしています。同会は2020年10月に有志の集まりからスタートし、2020年8月に一般社団法人として登記をしました。2025年末現在、加盟企業が50社を超える規模へと成長しました。
ここに、同会の会則にある「目的」について記したいと思います。『横柄』『尊大』について考えてみました。

「一般社団法人 日本障害者雇用担当者協議会」会則より一部抜粋。

(目的)
第2条 本会は,会員企業が取り組む障がい者雇用活動を通じて相互に扶助並びに雇用の増進を図るとともに、
会員企業が実践する雇用事例をもとに全国の障がい者雇用の向上と誰もが活躍できる社会環境作りに
努めることを目的とする。
(1) 会員間の相互扶助、支援、親睦のための事業
(2) 関係諸団体との協力関係を増進するための事業
(3) 当法人が掲げる誰もが活躍できる社会環境作りを普及するための事業
(4) その他、当法人の目的を達成するために必要な事業