ひとり言です。
ご存知の通り、法定雇用率が2024年4月に2.5%に引き上げられ、続いて2026年7月には2.7%へ引き上げられることが決まっています。法定雇用率の引き上げには納得しています。障がい者人口が約1,100万人、日本の総人口が約1億2,000万人なのでおよそ10%程度が障がい者となります。では将来の法定雇用率の目標も障がい者の人口比と同じ10%が妥当なのかというとそれほど単純ではないと思います。
当初1.5%から始まった法定雇用率は数年おきに見直しを図り、現在の数値まで徐々に引き上げられてきました。その甲斐もあり、企業が障がい者を雇用する社会が進みました。障がいがあっても “はたらく”ことを目指すことができる人材は企業へ。障がいがあっても社会の一員として社会参加できる世の中が形作られてきたように感じます。
しかしながら、2010年を過ぎた頃から法定雇用率が引き上げられる間隔が短くなってきました。
例えば法定雇用率1.8%の期間は15年間ありました。それ以降2.0%は5年間、2.2%は3年間、2.3%は3年間、2.5%は2年間と続きました。これら引き上げにより企業ではたらく障がい者の実数も毎年右肩上がりとなり、令和6年は全国で約68万人の障がい者が企業に雇用されましたので成果があったと評価できると思います。
一方で障がい者の雇用を推進する企業の受け入れが追いついていないと感じられる部分もあります。組織ごとに違いがありますので一律に考えることではありませんが、障がい者を“戦力”として雇用するためには準備が欠かせません。障がい当事者が職場に求める理解と配慮、職場への共有、求める配慮に基づいた業務割り当て、定期面談の実施など。個別性の高い障がい特性であればさらなる配慮と準備が求められます。また、職場におけるITやAIの導入が進むことで業務の進め方や業務そのものが見直されたことにより、従来の「はたらき方」が変化した時代となりました。在宅ワークやオンラインによるコミュケーションの普及、煩雑になりがちだった業務の効率化といった部分の進化を享受する反面、根本的な業務の見直しが図られたことにより障がいの有無に限らず仕事の領域が変わったと感じる職場もあります。
企業の立場としてみると、これだけ短い期間で法定雇用率が引き上げられてしまうと人材の特性を活かした体制づくりが間に合わず、障がい者の場合、本来ならば時間を掛けてその人がはたらく環境を作り上げる必要性が高いにも関わらず追いつかない現実があります。その先に無理やり数合わせとなる障がい者雇用に結びついてしまっていないかと感じるときがあります。
賛否はあるものの障がい者雇用のアウトソースを提供する企業の契約数が伸びていると聞きます。これは、上記のような状況が生み出した結果として、障がい者雇用のアウトソースに頼るしかない人事担当者の置かれた立場を表しているものではないか。その判断に理解はしないにしても同情する気持ちはあります。
送り出す支援機関側も利用者(支援機関に通う障がい者)の十分な職業準備が整わずに求人先の企業へ送り出しているケースも見られます。特に大きな都心部にある支援機関では企業からの求人ニーズに答えるための行動につながっています。全てではないにしろ、結果的にミスマッチとなってしまった場合に辛い思いをするのは個人である障がい者ではないだろうか。
就職に希望を抱き努力して入社した企業で見た現実は、自分の特性に応じて求めた理解や配慮は考慮されず、障がい者には同じ仕事しか用意されていない職場。その仕事も単調なものでしかない。雇用される障がい者自身の想いが汲み取られた雇用はどのぐらい存在するのだろうか。
障がい者白書の障がい者の人口統計に見られる特徴のひとつは精神障がい者の増加傾向にあります。精神障がい者は発達障がいを除けば、後天的な事象・経験がメンタル疾患を誘発させる原因だと考えられます。精神障がい者が増加している原因のひとつがそれならば、このような社会構造を変革させる方向にもしっかりと歩みを進めるべきではないだろうかと感じます。果たして障がい者の数を抑制させるという行為は困難なことなのだろうか。
国は企業にストレスチェックの実施を義務化しました。メンタル疾患者や長期休職者、労災認定の増加を抑える効果としては十分ではないようです。対症療法だけではなく原因療法にも目を向けることがもっと重要だと考えます。
今の社会は、企業、経営者、組織、管理職、従業員、団体、学校、先生、病院、医者、政治家、役人などなど。まわりに対して結果を求めすぎ、期待を持ちすぎなのではないかと感じます。人は自分となると責任が持てないことも他人であればこれでもかと責め立てることを簡単に行います。SNSやメディアを見ていても他人を責める行為が散見されます。このような社会はどこまで進んでいくのでしょうか。こんな窮屈な世の中では互いに優しくなれず、心が病んでいくのも頷けます。
そういえば法定雇用率の話だったんですけど。
厚生労働省:『令和7年版「過労死等防止対策白書」』
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001586368.pdf
厚生労働省:『令和7年版「自殺対策白書」』
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/001581158.pdf





