今年度2024年4月1日より障がい者雇用促進法の一部が改正されました。今回の法改正で代表的なものは法定雇用率の引き上げ(民間企業は2024年4月1日から2.5%、2026年7月1日から2.7%へ)が挙げられます。日頃から障がい者の雇用を実践している企業の経営者や人事担当者にとっても、今回の法定雇用率の引き上げによる影響は大きいと感じており、これまで以上に求人活動・雇用定着を企業利益に結びつけるための組織理解と創意工夫が求められることになりました。
厚生労働省が毎年公表している「障がい者雇用状況の集計結果」の直近データである令和5年の結果を見ると企業に雇用されている障がい者の実雇用数は過去最高の数値(642,178.0人)となり、20年連続で前年の雇用数を上回る結果となっています。また、内閣府が公表する「障がい者白書」では、国内の障がい者の人口が1,160.2万人(内訳:身体障がい者436万人、知的障がい者109.4万人、精神障がい者614.8万人)と推計され、国内人口の約10%になります。
今後、生産年齢人口の減少により労働者確保(中小企業は特に)が今以上に困難状況が懸念されている中、多様な人材を戦力として登用するための努力が必要となります。法律により義務化されている障がい者の戦力化については、組織が実践し成果を生み出すことで企業評価につながる以外にも多様な人材のマネジメント力は労働力問題の大きな解決策になると考えています。
早期から多様な人材に目を向け、戦力化させている企業が増えてきています。そういった組織の中にある障がい者雇用の現場では自社の取り組みを進める上で成果につながる「ヒント」「手本」を発見することができます。
今回ミルマガジンでは、障がい者をはじめ多様な人材の活用を通して、強みを活かした戦力化と職場ではなくてはならない存在として人材の育成を実践している株式会社LIXIL Advanced Showroomの取り組みをご紹介します。取材当日は同社エンプロイーオペレーション部の八重樫 祐子氏からお話をお聞きしました。
◯障がい者雇用に取り組んだきっかけ・背景
《話・八重樫氏》
株式会社LIXIL Advanced Showroomは 2013年9月にAdecco株式会社と株式会社LIXILとの合弁会社として設立しました。
設立当初から社員数は1000名を超えており、親会社のグループ参入や特例子会社等の検討も進めていましたが、社長の、「障がい者も他の社員と一緒にそれぞれの部署ではたらき・活躍できる会社を目指したい」という考えを形にすべく、独自の障がい者雇用に取り組むことになりました。
しかし、採用の取り組みや受入の経験がない私たちにとって障がい者の募集をするにしても右も左も分からない状態でした。そこで先ずはネット検索で見つけた障がい者就労・生活支援センターに飛び込み訪問し相談したところ、障がい者就労移行支援事業所をご紹介していただきました。
当時の私たちは暗中模索だったこともあり、ご紹介をしていただいたその日のうちに就労移行支援事業所に連絡を入れて訪問いたしました。
当社の事情をご説明した上で就労移行支援事業所内で当社の企業説明会の実施をお願いし快く受け入れていただくことができましたが、リクルーティングの経験がなかったため、当社新卒採用担当者に相談をして障がい者採用に向けた会社説明会の準備と実施をしてもらいました。
当時、私の所属していたダイバーシティ推進室は障がい者雇用の推進とあわせて、女性活躍の推進、介護・看護が必要な家族やお子さんのいる社員の出社を応援するといった、それぞれの生活スタイルや色々な立場に配慮しながらはたらけるように環境を整える役割がありました。
社員の9割は女性のため、ライフイベントに合わせたはたらき方の選択肢を用意する必要があります。例えば、旦那さんの転勤に合わせて住居を引っ越しをされる方がいた場合に転居先から通勤できるショールームへの配置換えを行うこともあります。
◯自社での取り組みの特徴・苦労した点
当社ではダイバーシティ&インクルージョン推進の一環として「はたらく社員みんなが笑顔ではたらく会社にしたい」という想いのもと笑顔をキーワードに私たちの取組を “Your Smile,Our Smile” というスローガンにしました。
社内から一緒にはたらく障がいを持つメンバーに対し”障がい”という表現をしたくないという意見が挙がり、スローガンの頭文字を組み合わせて『YOurS(ユアーズ)』の愛称になりました。
前項でお話をしました就労移行支援事業所での企業説明会の続きのお話になりますが、参加していただきました利用者のうち、当社に興味を持っていただいた10名の方が当社の職場見学にお越しくださいました。さらにその中から5名が職場実習へと進まれたのですが、実習はひとりずつ、それぞれの利用者の強みや配慮する点などを確認しながら進めていき、このときは最終的には1名の方を採用することができました。
ほとんど知識や経験がないに等しい私たちにとって最初の採用活動は、就労移行支援事業所のご協力はもちろん採用したご本人の適応力の強さもあり非常にスムーズに進めることができました。
後に採用に至ったメンバーの話では、事業所にきて説明会や質疑応答に応じてくれる企業は少なかったと興味関心を惹いたようで、私たちなりの成功体験に繋がっていきました。
その後もこの流れに続こうと別の就労移行支援事業所にもご協力を依頼し、初回と同様に会社説明会から職場見学・職場実習へと進め、情報処理系の学校卒の人財を採用することができました。
その方は自身の強み・能力を発揮し、現在も所属部署で期待以上の活躍をしています。
次回に続く