「WEBアクセシビリティ」という言葉をご存知でしょうか。
WEBアクセシビリティとは、
どのような場面・状況であっても誰もが等しくWEBを使えるようにすること。
と表現されます。
今日、WEBは我々が日常の生活を送る上で欠かすことができない存在と言っても過言ではないぐらい浸透しました。「連絡手段」「情報収集」「検索」「ショッピング」「仕事」を見てみると、普段から当たり前のように取る行動に大きく関わっていることがわかります。
WEBという発明は一般的な社会生活で不便や困りごとを感じることが多い障がい者にとってもこれまでの生活を豊かなものに変えるひとつと言えます。
- 下肢障がい者にとっては、お店に行かなくても買い物ができる
- 聴覚障がい者にとっては、手話を使わなくてもチャットで会話を楽しむことができる
- 視覚障がい者にとっては、検索サイトで表示された内容をスクリーンリーダーによって理解することができる
実はWEBアクセシビリティは法律によって義務付けている先進国は多く、それらの国では障がい者がWEBサイトを不便を感じずに操作をしたり得たい情報を問題なく取得できるような環境を整えることは当然の権利であるという考えが浸透しています。
日本ではまだ馴染みの少ないワードです。国内に目を向けたときに企業やお店、学校に団体などを紹介するHPが数多く存在しますが、障がい者が問題なく閲覧ができるように配慮されたWEBサイトの構築にどの程度意識が向けられているのでしょうか。
今回ミルマガジンでは、オンライン上でHP作成ができるクラウド型プラットフォームサービスを提供するWixが開発した独自ツール『アクセシビリティウィザード』を取材しました。当日のお話しは、同社アクセシビリティ統括・シニアプロダクトマネージャーのNir Horesh(ニール・ホレシュ)氏に本社のあるイスラエルからリモートにてご参加いただきました。
WixとWEBアクセシビリティについて
《話・Horesh氏》
我々の会社は2006年にイスラエルで設立され、ミッションは「誰もがWEBサイトを制作、運営、そしてビジネスを成長できるようにすること」です。現在では世界190カ国2.2億人のユーザーが我々のサービスを使っています。
日本での活動については、2012年に日本語に対応したサービスをリリースし、2019年に日本法人を設立しました。当社のサービスは大きいところでは経団連、他にもネットショップやレッスン教室にイベントサイトなど職種や業種を選ばず幅広いニーズに対応しています。
我々が求めるWEBアクセシビリティは、WEB技術の標準化を行う非営利活動法人W3Cが定めるガイドライン「WCAG2.0」に基づいて考えられています。
『アクセシビリティウィザード』について
当社が提供する『アクセシビリティウィザード』はユーザーが作成したWEBサイトがWEBアクセシビリティに対応できているかを検索し、問題が検出された場合は必要な修正手順を段階的にナビゲーションするものです。
手順は非常に分かりやすく、設定からサイト全体のスキャンを選択した後は検出された問題がリスト化されます。それらの各項目を指示された通りの手順で操作を行えば理想とされるWEBサイトを専門的な知識がなくても制作することが可能です。
我々の『アクセシビリティウィザード』は従来とは違い、スキャンをするだけでユーザーが作成したページのどこにどういった問題があるのかを指摘してくれます。それによって、ユーザーは項目に沿って自分の手で問題を修正することができるのです。例えば、画像への代替テキストの追加や、そのページに最適なカラーコントラスト比がその一例になります。
当社が『アクセシビリティウィザード』というサービスを提供できるところまで辿り着けたのは、専門家チーム内で何をクリアにするべきかを理解しているからです。我々のチームにも障がいのあるスタッフがいます。当事者の声を参考にして自分たちで作り込み、実際に使えるかどうかをテストし、ユーザビリティテストをもとに日々改善をしています。
障がい者が従業員の中にいることでアクセシビリティを向上させることができます。
私のチームにいる2名の障がい者が全ての障がい者の視点で対応することはできないのですが、当事者の特性に対する理解と対応はチームとしてすぐに対処できるようになっています。組織にそのような人材がいるということは当事者の声を聞きそれを反映させることができる強みだと思っています。
自社が提供するサービスによって目指す社会
Wixが提供するプラットフォームによって世界中に多くのWEBサイトが生まれました。その全てがWEBアクセシビリティに対応したものでないといけないと感じています。そのためには『アクセシビリティウィザード』によってインターネットのWEBアクセシビリティを向上させ、全世界に大きなインパクトを与えたいと考えています。
また、我々が関わる多くの会社にも伝えていることがあります。障がい者雇用を躊躇するのは「環境が整っていないから」「障がい者が何を必要としているかを理解してから」といった理由を企業から聞くのですが、「まず雇用しましょう。必要なことはその人から聞けばいい。受け入れ準備が100%整ってからでなく、雇用した人が希望する配慮から取り組めばいい。」と。
人口の17%が障がい者だと聞きます。その中には企業にとって優秀な人材もいるはずですが多くの企業が獲得をしようとしていません。
もしかするとホーキング博士のような人を逃しているかもしれないのに。
障がいがあるというだけで同じ人間ですから雇用する理由も同じはずです。求められている環境が違うだけでそれ自体は大袈裟なことではありません。Wixでもやるべきことはあります。もっと障がい者雇用を増やしたいとも考えています。我々の組織もまだまだ完璧ではないですから、より良い環境作りを目指していきたいと感じています。
取材を行った私自身もWEBアクセシビリティについては、視覚障がい者のスクリーンリーダー程度の理解しかなく、今回のHoresh氏のお話をきっかけにインターネットの世界でのアクセシビリティについて学ぶことができました。
今回の取材を通して「誰もが等しく望む社会を実現できる世の中」について、改めて考えてみたいと思います。ご協力ありがとうございました。
https://ja.wix.com/
【Wix『アクセシビリティウィザード』】
https://ja.wix.com/accessibility
【Wix『WEBアクセシビリティ 啓発動画 / Twitter』】
https://twitter.com/WixJp/status/1467750227201470464