【上前のひとり言】まわりが障がい者を生む社会

ひとり言です。

もし、私の意思とは関係なく周囲が物事を決めていたとしたらどうでしょう。
経験がなければ、想像しにくいかもしれませんね。
例えば、
「他の人は5種類の飲み物から好きなものを選んでいるのに“自分”だけ水しか選ばせてもらえなかった。」
とか、
「選挙権があるにも関わらず“自分”のところにだけ投票案内状が送られてこなかった。」
とか。
上記は誇張した例になりますけど、仮に自分だけがこんな経験をしたならば(※話のネタになると勘違いする一部の関西人を除いて)非常に大きなショックを受けると思います。

まさか、そのようなことがあるわけがないと感じる人も少なくないかもしれませんが、マイノリティな存在の人たちにとっては、普段の生活を送る中で多少なりともこういった経験で傷つけられる場面があります。

もし、自分(またはお子さん)が障がい者だったら。
「あなたは障がい者だから試験を受けても仕方がないでしょう。」
「あなたは障がい者だから訓練を積んでも成長しないでしょう。」
「あなたは障がい者だから担当する仕事はこれだけで良いでしょう。」
このように、周囲から一方的に決められて、権利を奪われたとしたらどのように感じるでしょう。教育、支援、職場などでこのようなことが行われている社会に暮らしているとしたら、私は残念で仕方ないです。

「障がいの社会モデル」という考え方が社会に浸透しつつあります。
「障がいの社会モデル」とは、「障がい者が直面する困りごとや不便さは社会や周囲の環境に起因するもの」という考え方を指しています。その逆が、「障がいの医学モデル」であり、「障がい者が直面する困りごとや不便さはその人の心身機能が原因である」とする考え方です。

これまでの医学モデルをベースにした考え方では、個人にある障がいの特性に向けたアプローチとなってしまうことで偏りが見られたために、どうしても「障がいを抑え込む」「個人の努力」を求めてしまうところがありました。一方、社会モデルでは、社会の側に困りごとの原因があるという考え方をベースにしますので、物理的環境の改善、制度の変更、差別や偏見の解消など、社会全体に向けたアプローチとなります。本人が感じる困りごとや不便の解消には、自身の努力だけではどうしようもないことも、社会や環境が変わることでゼロに近づけることができます。

「バリアフリー」とはバリアがないこと、あるいは取り除くことです。バリアフリーが行き届かないと感じる場面もまだまだありますが、考え方は社会に広まっていると感じます。バリアフリーの「バリア」とは、障壁(しょうへき)や壁という意味です。障がい者が社会で遭遇するバリアには「物理的なバリア」「制度的なバリア」「文化情報面のバリア」「意識上のバリア」の4つのバリアがあると言われています。こちらに「政府広報オンライン」に記載されています4つのバリアを参考に抜粋しました。

(1)物理的なバリア

公共交通機関、道路、建物などにおいて、利用者に移動面で困難をもたらす物理的なバリアのこと。
例えば、路上の放置自転車、狭い通路、急こう配の通路、ホームと電車の隙間や段差、建物までの段差、滑りやすい床、座ったままでは届かない位置にあるものなど。
「スペースの狭い駐車場だと、車いすを使用している人にとっては車の乗降が困難に感じられます。」

(2)制度的なバリア

社会のルール、制度によって、障がいのある人が能力以前の段階で機会の均等を奪われているバリアのこと。
例えば、学校の入試、就職や資格試験などで、障がいがあることを理由に受験や免許などの付与を制限するなど。
「補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)に対する理解が不十分なため、補助犬を連れての入店を断られることがあります。」

(3)文化・情報面でのバリア

情報の伝え方が不十分であるために、必要な情報が平等に得られないバリアのこと。
例えば、視覚に頼ったタッチパネル式のみの操作盤、音声のみによるアナウンス。点字・手話通訳のない講演会。分かりにくい案内や難しい言葉。
「車内アナウンスだけでお知らせしても、聴覚に障がいのある人には情報が伝わらず、緊急時にどうしたらいいのか困ってしまいます。」

(4)意識上のバリア

周囲からの心ない言葉、偏見や差別、無関心など、障がいのある人を受け入れないバリアのこと。
例えば、精神障がいのある人は何をするか分からないから怖いといった偏見。障がいがある人に対する無理解、奇異な目で見たりかわいそうな存在だと決めつけたりすることなど。
「点状ブロックがあることに無関心で、その上に無意識に立ったり物を置いたりすることで、視覚障がいのある人の通行を邪魔しています。」
※【政府広報オンライン】「知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」」より

どのバリアも当事者にとっては良好な生活を営む上で遭遇する嫌な経験になります。全てのバリアが社会から取り除くことを考えつつ、特に気をつけておきたいのは「意識上のバリア」だなと感じます。
文面にある「周囲からの心ない言葉、偏見や差別、無関心」を受けた本人は周囲が想像する以上に心を痛め、傷つきます。傷を負った心はなかなか回復しません。それならば、誰も傷つかなくていい社会を作りたいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム