新しい実習の形「遠隔職場実習」

障害があっても働きたいと考える多くの人に一番必要なものは、働くという経験だと考えています。「うまくできた」「失敗した」「褒められた」そういう経験が社会に出たときモチベーションにつながっていきます。では、その経験はどうやって積んでいけば良いのでしょうか?

障害がある私は社会経験が圧倒的に不足していました。分かっていても病院からなかなか出られない。このままでは働くイメージもつかめないと思っていた頃、学校で遠隔職場実習が行われました。遠隔職場実習とは、メールやweb会議システム、電話等を活用して実際の職場に行かずに職場実習を行うことです。

「働く=空間を共有」ではない

何もかもが初めてで、メールの文面を考えるだけでも多くの時間を使っていたことを今でも覚えています。それもすべてが経験なのです。働く前に自分がどのくらいできるのかイメージを持つことができました。ですが、このような遠隔職場実習を受けてくれる企業はすごく少ないのが現実なのです。

これから働きたいと思う人のために行われる職場実習。しかし実際に場に足を運ぶことができなければ、経験を積むことができません。もちろん実際に同じ空間を共有することも大切ではありますが、どうしても解決できない問題を抱えている人は諦めるしかないのでしょうか?

私は空間を共有することを前提に働くことは非常に不安定なものだと感じます。

今働いている多くの人は朝会社へと通勤していることでしょう。でもそれができなくなった自分を想像したことはありますか?

けがや病気、親の介護などなど、考えていくと多くの問題が待っています。問題を抱えたときに初めて不安定だったと気がつくのです。「空間が共有できる」前提が崩壊したときに働くことを継続するのが難しく感じるでしょう。起こりうるライフイベントは数多くあり、一個も問題が起きない人はいない。他人事ではなくしっかり対策を考えておく必要があります。その一つの対策が場所に影響を受けない働き方を選択できること。それを可能にするのが「テレワーク」です

遠隔就労を支えるツールを活用した実習

遠隔職場実習が多くの企業で行われてくれればより多くの人が経験を積み、自信を持って社会に出て行けると感じます。

遠隔職場実習を企業に勧めるためにはまず自分たちで受け入れようということで、昨年12月に弊社テレワークマネジメントで3名の障害を抱えている人を受け入れることにしました。実習は多くのことを学ぶ機会になりました。今回はその学びを紹介します。

3名の実習生は以下の方々です。

  • 北海道の養護学校 3年生生徒 男性(筋ジストロフィー)
  • 北海道の病院入院中の19歳男性(脊髄性筋萎縮症)
  • 障害者就労支援総合センター利用の36歳男性(精神障害)

全員が違う場所にいます

サポートする弊社社員も3人でしたが、同じように、全員が違う場所にいます

実習では、実際に行ったセミナーのアンケート集計や名刺入力を行ってもらいました。

初日は、自己紹介や弊社代表田澤によるテレワークについての講義の後、業務説明へと移りました。

バーチャルオフィス

全員が違う場所にいるので、しっかりコミュニケーションを取るのは難しいと思われる人もいると思いますが、弊社では全社員がテレワークできるように環境を整備しています。そのひとつがバーチャルオフィスというツールで、いつでもチャットやWeb会議でコミュニケーションを取ることができます。バーチャルオフィスにいることでその人が出社していることを確認することもできるのです。今回の実習中は常にバーチャルオフィスで実施しました。

チャット・Webカメラ

このツールがあることで、困ったことがあればいつでもチャットで質問ができますし、自己紹介はカメラをつけて顔を合わせて行いました。こうすることで実際の場を共有していなくても円滑にコミュニケーションを取ることができます

一週間の実習なので、実習生の体調にもしっかりと気にかけなくてはいけません。朝礼と終礼を設定して、その時間はカメラをつけて、顔を見てその日の体調や業務の進行具合を報告してもらいました。最後に3名の実習生にそれぞれの良いところをお互いに言い合う機会を設けることにしました。3名が自分だけではなく、一緒に働く相手を気にかけていることも確認でき、他者から褒められるというのは大きなモチベーションにつながったと思います。

お互いに気に掛け合えば孤独ではない

障害の関係上定期的に休憩を取りたい人もいました。実習中はチャットで一声かけてくれればいつでも休憩を取って良いと伝えてはいたのですが、業務を進めることを意識しすぎて言い出せない人がいたのです。朝礼や終礼でしっかりと休憩を取ることを意識するように伝えました。

この出来事から3名の実習生に良い変化がおきはじめました。それは「コミュニケーションの活性化」です。最初の2日ほどのチャット欄は「質問良いですか」というフレーズばかりで寂しい感じでしたが、徐々に「○○さん休憩大丈夫ですか?」「休憩行ってきます」「戻りました」「おかえりなさい」と会話が増えてきました。こちらから休憩を取るよう声をかけようか悩んでいたときに実習生から変化が見られたので私はとてもうれしい気持ちになりました。

今回の実習は何もかも初めてで、実習生にしっかり理解してもらえるか少し心配していました。ですが実習を終了する頃には一人一人が一週間という短い時間で大きく成長してくれました。予定した業務もすべて終わらせてくれて、しっかり結果も残してくれました。

テレワークをしたことがない人から、「孤独感を感じるのでは」とよくいわれるのですが、今回の実習中に私も改めて気がついたことがあります。それは「相手を気にかけることの大切さ」です。

納期が近い業務があるときに「業務の調子はどう?」と声をかけてみる。この一言でも会話がスタートします。終わらない部分があれば手伝えますし、悩みがあれば聞いてあげれば良いのです。自分から話しかけることができれば、コミュニケーションの問題も解決できるのです。

初めての遠隔職場実習は、私たちも多くのことを学ぶ機会になり、良い経験を積むことができました。この経験を活かして、働くことを目指す人の力になれるように注力していきます。

ABOUTこの記事をかいた人

吉成 健太朗(株式会社テレワークマネジメント)

生まれつき脊髄性筋萎縮症を患っており、進行性の病気で年々落ちていく筋力を感じながら歩む日々。 高校卒業と同時にテレワークという働き方で仕事をしています。今は多くの方にテレワークの働き方を知ってもらうために情報発信等を行っています。障害者雇用を考えている方やこれから働きたい思いのある障害のある方の力になるお話しを私の経験を含めてお届けします。