ひとり言です。
前回の続きです。
■「できないこと」ではなく「できる可能性」にフォーカスを
ここで、私たちは視点をガラリと変える必要があります。
障がい者が仕事を探すのが難しいのは、本人に能力がないからだけではなく、もしかすると単に「体験の場が不足していたから」ではないか、という視点です。
もし、企業や地域社会が、障がい者に対して多様な体験の場を意識的に提供することができたらどうなるでしょうか。当事者が「実際にやってみる」機会が増えれば、それまで誰にも気づかれずに眠っていた「できること」や、新たな可能性との出会いが見られるかもしれません。
私たちが企業の採用や育成において最も戒めなければならないのは、相手の「できないこと」ばかりにフォーカスを当ててしまう姿勢です。身体的な制限や、特定の苦手分野があることは事実かもしれません。しかし、そこにばかり目を向けて「だから無理だ」「これしかできないだろう」と決めつけてしまっては、その先にあるかもしれない可能性の芽をすべて摘み取ることになってしまいます。
大切なのは、「どうすればできるだろうか」「どのような環境を整えれば、この人の強みが活きるだろうか」と、できる可能性を徹底的に探っていく姿勢の先に多様な人材を活用する成長した組織があります。
当事者にとっても、この「体験を通じて『自分にはこれができるのだ!』と実感するプロセス」は何物にも代えがたい価値を持ちます。それまでは周りから支援を受けるばかりだった存在が、体験を通じて自分の手で成果を生み出し、他者に貢献できたとき、そこには成長につながる「自尊心」が芽生えます。
「自分は社会の役に立っている」「自分にはこれをやり遂げる力がある」という自己効力感と自尊心こそが、人を内面から大きく成長させる原動力となります。体験が自信を生み、自信がさらなる意欲を呼び起こすという、素晴らしい成長の好循環が回り始めるのです。
■障がい者の成長がもたらす、組織の地殻変動と未来

少子高齢化がこれからも大きく進み、あらゆる業界で「労働力の確保が困難な時代」に突入した現代において、障がいのある人材を単なる「法定雇用率として義務雇用の枠を埋める存在」としてではなく、企業の持続的な「戦力」として捉え直すことは、非常に大きなチャンスとなります。
障がいのある人の中に眠っている可能性を信じ、それを体験の場によって顕在化させることができる組織は、これからの時代において、労働力確保という面で他社に対して圧倒的なアドバンテージを獲得することになります。
それに加えて、この取り組みがもたらす恩恵は、単に「人手不足が解消された」という目先の話だけに留まりません 。障がいのある社員が、体験を通じて成長し、自尊心を持って生き生きと働く姿は、周囲の社員や組織全体に大きな地殻変動を起こします。
「できないこと」を補い合い、「できること」を最大限に活かすためのコミュニケーションが社内で活発になれば、マネジメント層の育成スキルは飛躍的に向上します。業務のプロセスを誰にでも分かりやすく切り出し、可視化する工夫は、結果として組織全体の業務効率化やDXの推進にも直結するでしょう。
何よりも、障がい者の可能性を引き出せる組織へと変革することは、育児や介護を抱える社員、高齢の社員、あるいは外国人労働者など、「多様な背景や制約を持つ人材を柔軟に活かすことができる組織」へと脱皮することを意味します。これこそが、これからの激動の時代において、企業を持続可能な組織として成長させるための確固たる基盤となるのです。
■おわりに:まずは「体験の場」を創り出す一歩から

人の可能性は、目に見えない引き出しの中に眠っています。その引き出しを開けるための鍵こそが「体験」だと思います。
障がいがあるからといって、その引き出しに鍵をかけ気づかないままにしておく社会は、あまりにもったいないと言わざるを得ません。私たちはまず、彼らが「やってみる」ことができる体験の場を、意識して創り出していく必要があります。それには可能性を「信じる」という気持ちが大切です。
できない言い訳を探すのではなく、できる可能性を共に探る。その温かくも挑戦的な眼差しが社会や企業の中に広がったとき、障がい者自身の自尊心に満ちた成長が始まり、ひいてはそれを受け入れる組織をも劇的に成長させていくのです。
そのような社会であれば、障がい者も積極的にチャレンジすることができます。
まずは身近な仕事の一部を「体験してもらう」ことから始めてみませんか。その小さな一歩が、企業の未来を大きく変える大いなるチャンスへと繋がっていくと感じます。





