全国には「障がい者」×「雇用」で素晴らしい実績を残している会社がたくさんあります。私が普段仕事をしている大阪にも「障がい者」×「雇用」でいろいろな方々にご紹介したいと思える会社があります。
今回、職場見学シリーズとしてご紹介するのは『シャープ特選工業株式会社』さんです。
ご存知だと思いますが、『シャープ特選工業株式会社』は液晶テレビや空気清浄機などでよく知られている「シャープ株式会社」の特例子会社となります。
1950年に「シャープ株式会社」の創業者である早川徳次さんが「何かを施す慈善より、障がい者自身で仕事をし、自助自立出来る環境を作る事が福祉に繋がる」という信念のもと、合資会社として「特選金属工業」として設立されました。その後、「合資会社 早川特選金属工場」に改名、1977年に国内第一号の特例子会社として認定を受け、1982年に現在の社名となる『シャープ特選工業株式会社』と改名されました。
『シャープ特選工業』とのお付き合いは今から2011年でした。知識や経験の浅い中、「地元に国内第一号の特例子会社があるのなら一度職場を見たい!」という思いで連絡を取りました。それから7年が過ぎ、今でもこちらの取り組みにはいつも勉強させてもらっています。
それでは、早速ご紹介しましょう。
所在は、大阪市阿倍野区にあります。以前まで親会社の「シャープ株式会社」も歩いていける距離にありました。(現在親会社は大阪府堺市に移転)
玄関を入ったところのロビーにはシャープが過去に販売していた商品のほんの一部ですが展示されており、中には懐かしい商品も並んでいました。
この日、社内のご案内を担当していただきましたのは、管理部総務課 主任の玉谷謙次さんです。
先ずは、スライドを用いて『シャープ特選工業』のご説明をいただきました。現在、こちらには従業員が99名いらっしゃるのですが、そのうち障がい者は56名で半数の28名が重度の障がい者となります。
『シャープ特選工業』としてのポイント数は85(2018年1月現在)あり、オールシャープとしての法定雇用率は2.47%(2017年6月時点)となりますので、法律改正後の2.2%も十分にクリアされています。
『シャープ特選工業』では職場定着に向けた様々な取り組みをしているのですが、そのひとつとして「サポーター制度」のご紹介をしたいと思います。約3年前から導入したこの制度では全従業員を対象にしており、各グループにリーダーとしての役割を持つ17名の従業員を配置します。それぞれのグループ内の人員は業務上のミスや欠勤、就労態度などで改善がみられる場合はリーダーを中心にアイデアや工夫を出し合い、解決に向けた取り組みを実施するようにします。その中には個々の従業員が成長するための教育なども含まれているということです。
続いて、実際の職場をご案内いただきました。
最初はオフィス系のお仕事と作業系のお仕事を配置している事務所へ。
オフィス系のお仕事は、主に印刷業務を行っており、オールシャープの従業員が使用する名刺の作成や社内報などの印刷業務、またペーパーで保管管理されている書類の電子化処理などを担当されていました。障がい者が多く働く特例子会社でよく見られるのですが、ひとつひとつの業務では障がいの特性のために通常の作業工程では進められないことがあります。そういった際に職場では様々な工夫を凝らしています。こちらでは、手の不自由な方がPC操作の一部を補うための工夫として「フットペダルスイッチ」といわれるツールを導入していました。このツールは、USBでPCに接続し「Enter」や「Tab」キーの操作を足で行うというものです。
また、片手が不自由な方がA4書類を束ねるときを想像してみてください。両手であれば簡単な作業も、片手ですと時間も掛かりきれいに整えるとこが難しいと思います。そういった作業も段ボールによる手作りですが、工夫を加えることで他の方たちと同じような成果を上げることができます。こういった、ひとつひとつの工夫や協力を会社全体で取り組むことが職場定着には重要だと思っています。
次に作業系のお仕事のひとつである複合機の部品クリーニングをご紹介いただきました。複合機の部品にはインクなどの汚れによって印刷物に影響が出てしまうことがあります。それら部品に付着した汚れをひとつずつ手作業でクリーニングするお仕事をこちらで行っています。
写真では少しわかりにくいのですが、金具部品に付着したインク汚れを時間を掛けて作業することでキレイな金属部品に生まれ変わります。ひとつのプレート部品にかかる作業時間は数十分。また、「キレイになるまで」という【キレイ】という基準は人によって様々です。それを統一させるために基準を可視化させたシート(一般用ドットゲージ)を用意し、クリーニングの精度を高めることを職場で導入しました。
他にもこちらでは電化製品の製造に必要なマイクロチップの検品作業があります。これは、各種製品の心臓部ともいわれる重要な部品のひとつを扱う業務です。当初この仕事を受け入れる10数年前には、周囲から大丈夫なのかと心配されることが多かったようですが、今では本社からも見学に来られるぐらい『シャープ特選工業』の業務の中でも最も代表とされる仕事のひとつとなっています。(マル秘部分が多いため、お写真はありません)
最後に食堂のご紹介です。いまでも創業者の早川徳次さんが見守っていらっしゃいます。
こちらには、創業者である早川徳次さんが書かれた有名な書があります。
この「何糞」は、早川徳次さんが人生の中で何度もくじけそうになった時、負けない気持ちを表現されたのがこの言葉です。「何糞」が掲示されているのは『シャープ特選工業』だけのようで、本社にも残っていないということです。
『シャープ特選工業株式会社』は、創業者の早川徳次さんが幼少時代に大変お世話になった盲目の老女への感謝の思いから、太平洋戦争で失明した傷病軍人の方たちが自立してもらうため(自助自立)の会社としてできました。
実は、以前までこちらに何度もお邪魔していた時と業務の内容が変わっていました。おそらく、この1~2年でいろいろなことが影響したのではないかと推測します。しかし、障がい者を多く抱える特例子会社にもかかわらず、時代に合わせて変化し、多くの雇用を維持している点は、障害者雇用に課題を抱える企業にとっては手本となる部分が多くあると感じます。
是非、1社でも多くの企業に見学してもらいたいと思える会社のひとつです。