今回は本コラムの著者である上前が、代表を務めている一般社団法人日本障害者雇用担当者協議会が2024年10月24日に東京で開催しました『障がい者雇用セミナー』について当日の様子をご紹介いたします。
今回のセミナーはコロナ禍の2022年に大阪で開催しましたセミナー以来2年ぶりの実施となりました。
今回のセミナーは、初めて東京での開催でもあり集客に苦戦したところもありました。蓋を開ければ目標の100名を少し割りましたが会場の座席は多くの方々で埋まる状態となりました。
今年度は法定雇用率の引き上げを含めた法律改正がありましたので、企業の経営者や人事担当者にとっては関心ごとのひとつとなるテーマを取り上げた内容のセミナーは集客に大きく関連することを感じました。
当日のプログラムです。
【プログラム】
- ①「基調講演」
厚生労働省 職業安定局 障がい者雇用対策課 課長 西澤栄晃氏
- ②「特別講演1」
「多様なメンバーが、共にはたらき、共に成長して実現するYour Smile,Our Smile(YOurS)の現在地~ 障がい者雇用が描くダイバーシティ&インクルージョン ~」
株式会社LIXIL Advanced Showroom
エンプロイーオペレーション部 八重樫祐子氏
- ③「特別講演2」
「テレワークによる戦力化とは? 〜会話による心理的安全性の構築〜」
阪和ビジネスパートナーズ株式会社
業務開拓推進部長 辻敏彦氏
- ④「パネルディスカッション」
〈パネリスト〉
厚生労働省 職業安定局 障がい者雇用対策課 課長 西澤栄晃氏
株式会社LIXIL Advanced Showroom エンプロイーオペレーション部 八重樫祐子氏
阪和ビジネスパートナーズ株式会社 業務開拓推進部長 辻敏彦氏
OSPハートフル株式会社 代表取締役 那須元樹氏
ヤンマーシンビオシス株式会社 大阪事業部 事業部長 平野智久氏
〈ファシリテーター〉
株式会社日本障害者雇用総合研究所 代表取締役 上前忠司氏
セミナーの冒頭では開会の挨拶として代表の私から協議会の設立経緯と目的についてお話をいたしました。当協議会は企業で障がい者雇用の最前線で活躍する『担当者』を応援することで、障がい者の採用と雇用が素晴らしい取り組みとして実現されるという考えのもと設立をしました。
企業で活躍する担当者の多くは組織内で様々な業務に取り掛かりながら、障がい者雇用に関連した情報収集や外部の専門機関とのパイプづくりなど、様々なリソースをもとに社内への理解促進のためのはたらきかけ、必要な人材獲得を目指した求人活動、採用後の定着に向けたサポートなど、多岐にわたる役割をこなしていきます。
しかしながら、中には組織からの支えがないまま孤軍奮闘する担当者も少なくなく、孤立したり役割そのもに対してネガティブな感情を抱いてしまった結果、障がい者に対するイメージが悪くなってしまったままの企業も存在します。そういったことを払拭することもこの協議会の役割であることをお伝えしました。
●「基調講演」
厚生労働省 職業安定局 障がい者雇用対策課 課長 西澤栄晃氏
- 六一報告による集計から障がい者雇用の現状をご紹介。
- 全国のハローワークを通じた企業への就職状況では、障がい特性のうち精神障がい者の採用数が最多。
- 今後の法定雇用率の見直しを含めた法律改正について、現状のような数値達成が主となる取り組みの是否。
- 「週の労働時間20時間未満もカウント」「障がい者雇用における“量”と“質”の追求」など。
●「特別講演1」
「多様なメンバーが、共にはたらき、共に成長して実現するYour Smile,Our Smile(YOurS)の現在地~ 障がい者雇用が描くダイバーシティ&インクルージョン ~」
株式会社LIXIL Advanced Showroom
エンプロイーオペレーション部 八重樫祐子氏
- 目指す姿「社員みんなが笑顔ではたらく会社にしたい」の実現。
- “Your Smile,Our Smile”の頭文字を組み合わせたYOurS(ユアーズ)活動について。
- 採用のポイント「求める人財を包み隠さず伝える」「会社の魅力を併せて伝える」
- 障がい者採用は最初から上手くいったわけではない(事例を交えて)
「特別講演2」
「テレワークによる戦力化とは? 〜会話による心理的安全性の構築〜」
阪和ビジネスパートナーズ業株式会社 業務開拓推進部長 辻敏彦氏
- 2024年10月1日より阪和興業株式会社の特例子会社として設立。
- 2018年からテレワークによる障がい者雇用を開始、コロナ禍により本格的なテレワーク採用を実施。
- サスティナブルな障がい者テレワークを目指して。孤独感の払拭、不安感を軽減するための取り組み。
- 同社の障がい者雇用全体の2/3がテレワーク勤務。一方でテレワークだからこそ起こる課題への対策。
※当日は、各地で勤務する4名の障がい者がリモートで参加し、各人がテレワーク勤務の感想を来場者に伝える場面も。
●「パネルディスカッション」
協議会代表の上前がファシリテーターとなり、登壇者を含めた5名のパネリストによる障がい者雇用に関する疑問やテーマをもとに意見交換を行いました。形式としては、企業担当者4名から障がい者雇用に関連した質問を投げかけ、厚生労働省西澤課長からお答えいただきました。
質問のいくつかを抜粋しました。
【Q1】
企業の障がい者担当者は通常専門職ではないケースが多く、「希死念慮」が本人から発信された場合、心の負担が非常に大きく、場合によってはカサンドラ症候群になるケースもあります。
「希死念慮」のような”キーワード”が発せられた場合の対応についての研修や、サポートする側の心のケア、専門職の配置等、検討されていらっしゃることがあれば教えて頂きたいです。
【Q2】
現在、精神保健福祉手帳は3等級です。精神病の診断、気分障がいとしての診断、発達障がいの診断など、かなり特性も異なり、幅も範囲も異なります。また、精神と発達では、定着率などの統計も異なっています。そこで質問ですが、精神保健福祉手帳の区分を細分することは検討されていますでしょうか。
→良いか悪いかは別として、カウントに差をつけることも出来るのではないかと考えたところからの質問です。
また、パネルディスカッションと並行して来場者の方々からの質疑応答も複数いただきました。
それら質問・相談についてパネリストの皆さんからはこれまでの経験をもとに様々な回答をお伝えする時間は、登壇者と会場が一体となった臨場感のある場面でした。セミナー終了後、参加者からは「これまでに無いセミナーだったので大変興味深かった」「会場の雰囲気が良く、登壇者の方々も楽しそうにお話をされているのが印象的でした」といった声をお聞きすることができました。
セミナーの閉会では、普段より協議会の活動にご理解とご支援をいただいております阪和ビジネスパートナーズ株式会社の代表取締役社長 鶴田秀行氏よりご挨拶を賜りました。
今回、初めて東京にてセミナーを開催しました。協議会の加盟企業、後援をいただきました関係各所など、皆さんサポートのお陰で大盛況なセミナーにすることができました。本当に感謝です。
引き続き日本障がい者雇用担当者協議会は、企業で活躍する担当者が集まり交流を深めることで、自社の障がい者並びに誰もが活躍できる社会を目指していきたいと思います。よろしくお願いします。