前回は対話をクセにしよう!という話をしました。
今日はそのためのコツについて話します。
し慣れてないことを「クセ」にまで押し上げるのは、とってもムズカシイこと。
生活習慣をがらりと変えれば歪がおきやすいし、少し無理して背伸びすると長続きしない。毎日ちょこっと意識するくらいのほうが続けやすいですね。
そこでオススメなのが、「オープンダイアローグ」
精神疾患の領域に関わる人なら耳にしたことがあるかもしれないこの言葉、みなさんはご存知だろうか?
オープンダイアローグは、精神疾患の患者を対象にした対話式治療法。薬を用いるのではなく、患者本人、家族や友人、医師、看護師などが集まり、対話をすることで症状の改善を目指していく。たとえ服薬をするとしても、その決定は必ずこの対話の中で行う。この治療法発祥の国フィンランドでは、公的医療のひとつとして保険適用され、統合失調症などの精神疾患に有効な治療法として用いられている。
日本ではこの手法の広めるためオープン・ダイアローグ・ネットワーク・ジャパンが積極的に普及活動を行っている。
オープンダイアローグには7つの原則と対話実践のための12の基本要素がある。(興味のある方は上記のホームページからダウンロードできるのでぜひチェックしてみて欲しい。)
原則や基本要素には治療のルールみたいなものも含まれるが、実生活にとても有用な対話の理念も書かれている。下記は、7つの原則のうちの2つ。
- Tolerance of uncertainly
=答えのない不確かな状況に耐える
- Dialogism
=対話を続けることを目的として、多様な声に耳を傾け続ける
これらのことは治療法に限らず、先の見えづらい現状でビジネスプロジェクトを進めていく中でも、とても大切な考え方である。ただ、だからと言ってこれを日々のちょっとした意識づけにするには、スケールが大き過ぎて、なかなか実践するという実感も湧きづらいのも事実。
毎日のクセにするためには……
毎日のクセにするためには、もっと簡単で気軽なヒントのようなものがいい。
そこで私がオススメしたいのが、オープンダイアローグをベースにした対話のヒント集が描かれているこれ。絵本のように読み進められる本でもあり、立ち止まってじっくり考えることもできる一冊だ。
慶應義塾大学・井庭教授らがパターン・ランゲージを用いて対話の方法論を展開している。
ここでは対話に関するヒントが30個、簡単な「ことば」と「挿し絵」で表現されている。
毎日ひとつずつ実践してみるだけでも、1か月後には、対話の秘訣が体感できて、かなり身近になってくるはずだ。ヒント毎にオープンダイアローグの専門的な記述も書かれているが、あまり細かいことは気にせず、ひと言ふた言書かれている簡単なことばをキーワードに1日を過ごしてみることがオススメ。その日の気分や現在置かれている立場・状況によって解釈してもOK!
もし、オープンダイアローグの具体的な考え方が知りたいときには、ヒント毎の専門的な記述を読み込めばいいだけ。
別売りカードもあるので、タロットカードのように1日1枚ひいて偶然出会ったカードを持ち歩き、そこに書いてあることを時々振り返るくらいでも大丈夫。少し意識をするだけで何かしらの変化は始まっていて、自分の考え方のクセに気づいたり、相手の話を聞く自分の姿勢を知るきっかけにもなる。
もしも、朝ミーティングやチーム会議で時間に余裕ができたら、このカードをトランプのように配り、手持ちのカードにあるような体験談や、自分なりの解釈を共有していくとさらに周りを巻き込んで対話の意識が根付いてくる。
この簡単なことばの良いところは、その余白に自分なりの解釈や、周りの人の解釈を盛り込んで膨らますことができるところ。それをきっかけに知らなかった相手の歴史・考え方を知ることや、ことばの追体験ができる。書籍の出版記念イベントでも、このカードを使用して参加者同士で経験を共有した。
「輪になる」というカードの解釈では、ネイティブアメリカンの輪になって話すという伝統を実践している職場の話が聞けた。上下の差をなくし、ひとりひとりの声を聴くことでさまざまな学びを得ているという実体験が語られた。
毎日の暮らしにちょこっと添える
毎日の暮らしに気が向いたことばを意識することくらいでも、気づいたら自然と対話がクセになっているはず。わざわざ本を買わなくても…という人は、オープンダイアローグの原則や基本要素から、簡単なキーワードを拾って意識してみてもいいかもしれないですよ!
※次回は対話に必要な心構え「自分と向き合うこと」について話します。