前回からの続き。
マッチングサービスを共同開発することになった翌日から、早速、事業計画を二人で練り始めました。
そして、始めるにあたって約束事を決めることにしたのです。
- 収支が合わなければ潔く撤退すること
- 利益分配をしっかり詰めて絶対にお互いの関係を壊さないこと
- 楽しいと思えることをやること
この3つは絶対にブレずにいきたいと林に伝えたところ、
「これだけは約束しますが、お金にせこくないので大丈夫ですよ!」
と言う林。
彼の人間性や誠実さを知っているからこそ、不安感はありませんでしたが、10年以上会社をやってきて、お金で人が変わったり本性を出してくる人間を見てきた僕が1番安心できる言葉を彼は投げてくれたのでした。
新事業の可能性
僕らは事業計画の段階からこのサービスのポテンシャルを強く感じていました。
通常、ヘルパーは事業所に所属して利用者を割り当てられます。
そして事業所はケアマネジャーや相談員、稀に直接本人からの問い合わせで、利用者を獲得します。
つまりヘルパー個人で利用者を獲得するというのはとてもハードルが高く、ほぼ不可能に近いのです。
しかし、実のところ介護資格を持ちつつも事業所に所属していないヘルパーは存在していて、このマッチングサービスであれば個人のヘルパーでも利用者を獲得できる可能性があるわけです。そうなれば、個人で利用者を獲得して、所属したい事業所に利用者ごと所属するなど、自薦ヘルパーの新しい利用方法が生まれることになります。
驚くべき提案
- 松元「マネタイズについてはどのように考えているの?」
事業を継続していくには収益を上げることが肝心です。最初の段階でもお互いの決め事として、収支が合わなければ潔く撤退すると約束しました。
すると、林はまたも僕を驚かせる提案をしたのです。
- 林「利用料は0円でいきます。」
- 松元「えっ!?」
- 林「利用率100%を目指したいと考えているので利用料は取りません。その代わり広告掲載でお金を頂きます。」
- 松元「いいね!面白い!それでいこう!」
とにかく全員が当たり前に使ってくれるようなサイトにしたい。高齢者になったら、障がい者になったらまずはこのサービスに登録する。その流れが自然になるようにするには、利用料は取らない。林はそう考えたのです。
しかし、これは決して理想論ではありません。
福祉関係者の利用率が100%になればユーザー数は数百万人を超えます。
それだけのポータルサイトにさえなれば、広告を掲載する価値のあるサイトになり、福祉関係の企業から広告掲載の申し込み等が出てくるはずです。
サービス名を決める
プロジェクトを進めるにあたりサービスの名称を決めることとなりました。
根幹となるテーマは、福祉の世界をハッピーにさせること。このサービスで、福祉で働く人を支え、幸せにすることを目標とする。テーマは具体的に決まっているのに、なかなかどうして、決まりません。そうして頭を抱えながらあれやこれやと案を出し合い、考えること数時間。
- 松元「これどうかな?」
- 林「いいですね!」
とても簡潔なネーミングではありましたが、人々が幸せになる希望と、温かみあふれる福祉の姿を心に宿した名前になったと思います。
福祉関係者全員がハッピーになるように。そんな想いが込められたプロジェクトは、『ふくはぴ』と名付けられました。
僕にできないこと、彼にできないこと
名称も決まり、プロジェクトは順調に進んでいきました。
恥ずかしながら僕はモノづくりはできるのですが、それを売ることが苦手です。
だから今回のふくはぴもサービスが完成したとしても、広めることは僕にはできなかったかもしれません。しかし、そこは林が遺憾なく営業能力を発揮してくれました。
認知度拡大のためにSNS戦略やメディアへの売り込み、行政や愛知の福祉関係者へ営業活動を徹底して行なったおかげで、サービス開始前の段階からすでに事前応募者もかなりの人数になっていったのです。
彼と二人でプロジェクトを進めていると、パズルのピースがカチッとハマるような感覚がありました。
僕にできないことを彼がしてくれて、彼にできないことを僕がする。
- 松元「林くんは俺の出来ないところをカバーしてくれるから心強いよ。」
- 林「松元さんのおかげですよ。自分だけでは到底できなかったことが松元さんとなら現実になる気がするんですよ。」
僕は、デファクトスタンダードとなるサービスを作りたいと昔から言っていました。
周りからは鼻で笑われることも、呆れられることもよくあります。
まともに聞いてくれる人なんてほとんどいません。
しかし、謙虚でいながら大きな目標を掲げる彼は、唯一真面目に、そして具体的な道のりを明示して僕と並走してくれています。
そして、2023年11月16日。
ついにふくはぴ愛知が正式リリースされることになりました。
福祉業界の変革を
ふくはぴ愛知を始めることをSNSで告知した頃、批判の声もありました。今でも懐疑的な目で見られることもあります。それでも、少しずつ少しずつ、共感してくれる人や応援してくれる人が増えています。
非効率でアナログで、何十年も停滞しているようなこのクローズドな福祉の世界に革命を起こすことを目標としているふくはぴ愛知。
嘲笑されることもあるでしょうが、僕と林は変わることなくずっと、ふざけ合いながら、楽しみながら、このふくはぴ愛知プロジェクトを進めていくことでしょう。
GoogleやAmazon、LINEのように、福祉の世界に身を置く人々の生活の一部になることを目指して。