企業ができる障がい者支援は雇用だけではありません(雇用義務がなくてもできる障がい者支援)

2018年の中央省庁での障がい者雇用水増し問題をきっかけに障がい者雇用をテーマにしたニュースや特集を目にする機会が多くなったように感じます。
これまでは、企業よりも高い法定雇用率(行政機関2.5%、一般企業2.2% 2019年3月現在)を守り、障がい者雇用において手本となる立場である中央省庁などの行政機関が、調査の結果は半数以下となる1.2%程度の雇用しか満たしていませんでした。これには、日々努力を重ねている人事担当者にしてみると開いた口が塞がらない気持ちにさせられたでしょう。
実は、一般企業の方が障がい者雇用に対して真摯に向き合っているということになりました。

この問題は、「行政機関のチェック機能が働いていない」「公務員や職員たちの理解不足」だけで片付けられないと感じています。日本は他の先進国と比較した場合、「多様性」に対する捉え方や考え方が非常に遅れている国となっています。おそらく、日本人よりも他の国の人の方がそれを強く認識していると思います。近年、外国からの観光客が増加し、今後「2019年ラグビーワールドカップ」「2020年東京オリンピック・パラリンピック」「2025年万博博覧会」と国際的なイベントが多く開催されます。これからの日本は、経済だけではなく「多様性」においても国際的な水準をクリアしていくことが必要ではないかと考えます。

日本で障がい者雇用を義務化されているのは、「常用雇用労働者が45.5人以上」の企業です。更に法定雇用率が達成できていないときの納付金(いわゆる罰金)の対象となるのは「常用雇用労働者が100人を超える」企業となっています。当然のことながら、障がい者雇用に取り組んでいる企業は法定雇用率により義務を課せられている「常用雇用労働者が45.5人以上」「常用雇用労働者が100人を超える」となります。
ところが、世の中には法律上は障がい者雇用の義務のない企業でも、助成金が目当てということでもなく、積極的に採用に関わっている会社がたくさん存在します
以前、当ミルマガジンのインタビューにもご協力いただきました「株式会社エムツープレスト」さんもそんな素晴らしい企業のひとつです。

雇用企業インタビュー:株式会社エムツープレスト

2018.07.10

障がい者雇用のきっかけというのは、概ね「法定雇用率の達成を目指すため」といったところではないでしょうか。ハローワークや障がい者専門の人材会社に求人相談をし、候補者の中から書類選考と面接の後に採用決定するというのが流れだと思います。助成金の活用として「トライアル雇用」を経て採用にいたるケースもあります。

企業はもっと障がい者の社会参加に協力・貢献してほしいと常々感じています。
それは、障がいのある人材の採用もひとつですが、『企業実習』を受け入れるだけでも大きな貢献活動になりますし、企業が得られるメリットもあると考えています。

『企業実習』のメリット

神奈川県にある「日本理化学工業株式会社」という企業は、色々なメディアにも取り上げられているのでご存知の方も多いと思います。
法政大学大学院教授である坂本光司氏の著書「日本でいちばん大切にしたい会社」にも掲載され、毎年多くの見学者が訪れる日本で障がい者雇用の代表とされる企業です。こちらの会社が障がい者雇用を始めたきっかけというのが、支援学校から相談を受けた『企業実習』でした。

皆さんの会社の近くにも特別支援学校や就労系支援機関があると思います。それらに通う障がいのある児童や障がい者というのは、企業への就職を目指して日々職業訓練を積んでいます。職業訓練というのは、内職に近い作業もあればPCを使用したもの、技術職や清掃など通う先によっても様々です。
その訓練の一環として、実際の企業で社会経験を積む『企業実習』というものがあるのですが、その『企業実習』を受け入れてもらえる会社が少なく、特別支援学校や就労系支援機関の担当の方々はいつも協力先を探しておられます
『企業実習』を受け入れてもらえる会社が多ければ、たくさんの実習を経験することができます。たくさんの実習を経験することができるということは、より自分に適した職種や業界を発見することができます。障がいのある人たちは健常者に比べて、色々な場面で選択肢が少なく、本来自分が就きたい最適な仕事に出会えないケースがほとんどです。

勘違いしていただかないために念を押しますが、「『企業実習』=採用」ではありません。
あくまでも、就職を目指す障がい者のための協力活動のひとつです。そして、これは企業規模に限らず、障がい者の雇用義務がない企業であっても協力をすることができます

障がい者雇用の第一歩として

もし、「労働力が足りない」「求人を出しても人が集まらない」と悩んでおられる人事担当者の皆さんは、近くの特別支援学校や就労系支援機関にご連絡してみてください。
障がい者の理解が進んでいないのであれば、是非『企業実習』を試してみてください。

真剣な眼差しで働く障がい者の方たちを見ると、これまで採用の邪魔となる間違った思い込みを変えてくれます。障がい者雇用の取り組みを始める企業に対して、お伝えすることばがあります。それは「百聞は一見に如かず」です。
皆さんの障がい者イメージを壊してくれます。
デメリットよりもメリットがあることも分かってもらえると思います。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム