障がい者従業員に振り回される企業の特徴と対策[2/2]

障がい者従業員に振り回される企業の特徴と対策[1/2]

2017.12.26

前回は、障がい者従業員に振り回される企業の特徴についてお話ししました。

今回は、その対策についてお話ししてみようと思います。

障がい者従業員の雇用を上手く企業に根付かせるための対応として以下に挙げてみました。

『採用準備で80%が決まる』
『面接では漏らさない』
『従業員もしっかりと巻き込む』
『障害者雇用をしっかりとコントロールする』
『採用準備で80%が決まる』

一般的に健常者の新卒採用をするときをイメージしてください。新卒採用を行うときには、募集活動だけではなくインターンの受入れ、採用後には社内外の研修や配属先業務の習得など事前にスケジュールを決めて段取り通りの手順を踏むはずです。障がい者採用の場合も同じように、予め必要となる項目を準備しておいてください。

例えば、事前準備として考えられるのは、

「募集時の基準」

業務に必要なスキル・経験(もしくは未経験など)、支援体制を持っている、

「採用条件の設定」

雇用形態(正社員・契約社員、契約→正社員の有無)、給与体系(基本給、昇給、賞与)、退職金、有休、社会保険

「面接実施回数・試験」

一次面接・二次面接・最終面接、ビジネススキルテスト

「体験実習」

職場体験、適正業務の確認、本人の意思

「従業員への研修」

障がいの特性理解、障害者雇用の理由説明、企業の障害者雇用環境

可能であれば、「評価基準」

〇ヶ月ごとに目標と実績の比較、業務の貢献度合い

といったところです。企業個々で採用に向けて必要な準備が違いますので、もう少し細かい部分まで設定しておく企業もあるでしょう。

健常者の採用と違い、障がい者の採用時にこれらの準備をしている企業は少ないと言えます。逆に言えば、準備をしている企業は障害者雇用がしっかりと根付いている企業だと言えそうです。

最初はどこから手を付ければいいのか、どのように給与体系や業務の切出しを行えばいいのかといった疑問から、放置状態になってしまうことも考えられますが、最近であればハローワーク以外でもお近くの「就労移行支援事業所」などの福祉機関や障害者雇用関連のコンサルティング会社に相談してみてください。その中で自社に最適なサポートをしてもらえる先が見つかるはずです。

『面接での漏れを防ぐ』

面接では聞くことに重点を置いているだけでは、100点満点中50点です。面接時に、雇用後の条件や待遇面についてもお伝えするようにしておきましょう。上記『採用準備で80%が決まる』でも書きましたように、面接の時には雇用後のことまでお話しをして、求職者の心を掴むことも大事です。現在の障害者雇用の環境は売り手市場といわれています。優秀な人材でなくても複数の企業にエントリーしていることは十二分に考えられます。欲しい人材を繋ぎ留めておくためには、面接の時点である程度具体的な条件を提示できればいいでしょう。

但し、注意したい点もあります。面接のタイミングはお見合いと一緒だといわれます。お互いが好感触であれば、少しでも相手からいいように見られたいと思うのは当然の心理です。そんな気持ちですから、相手から嫌われたり、嫌がられるようなことは質問できにくい状態にあります。本来は大事な給与体系や昇給、雇用されてからの待遇について、企業の立場としては言い出しにくい。また障がい者の立場では聞きにくい話題なので、フワフワしたままスルーしてしまうことも多いのではないでしょうか。その結果として、雇用後に「私の昇給はどうなるんだろう」「いつになったら正社員になれるんだろう」「将来の生活設計はどうすればいいのか分からない」といった点から不満が生まれてきます。

また、健常者であっても仕事の成果を給与に反映するには多少の期間が必要なのにも関わらず、割り当てられた業務が上手くいった障がい者の中にはすぐに成果を給与や待遇に反映して欲しいなどの主張をする方もいらっしゃいます。もしかすると、そういった主張をするというのは待遇の差を感じたり、別の不満となる理由があるのかもしれません。それら対処も必要となりますが、面接や採用時にしっかりと待遇や評価基準を明示しておくことで不安や不満を抱かせない雇用となります。

『従業員もしっかりと巻き込む』

人事担当者のお声として、「障害者雇用で従業員に負担を掛けたくない」といったお話しをよく聞きます。お気持ちは分かりますが、障がい者の受入れに対して“負担0”というのは難しいお話しです。このセリフは、私からすれば、人事担当者が手を抜いているとしか考えられません。何かしらの制限を抱えている方と一緒に働くためには、関係する周囲には少なからず負担が掛かります。但し。10の負担を3や4にすることは可能です。その負担を軽減するための努力や工夫を人事担当者が疎かにしてはいけません。

障害者雇用を企業内に根付かせる。まして、これからは精神障がい者や発達障がい者の方たちの採用を目指すことが求められるわけです。ということは、従業員の方たちへの負担は避けることが難しいといえます。そのことを人事担当者がしっかりと把握した上で、従業員に理解と協力を求めていくことが必要です。非常に根気と時間が必要な取組みですので一日でも早くスタートさせてください。(私はずっと以前から口を酸っぱくしていっていましたが)

『障害者雇用をしっかりとコントロールする』

障がい者とのコミュニケーションというのは難しい点があります。障がいのことやプライベートなことに触れられると強く反発する方もいらっしゃいますし、必要以上に日々の出来事に対して執着する方もいます。

部署の管理者や従業員の皆さんの中には、その度に振り回されている方々もいらっしゃるはずです。どちらに非があるにしろ、会社には毅然とした態度でいて欲しいと思います。

障がい者であっても間違っていれば、注意や指摘ができる会社を目指しましょう。仮にその方が辞めてしまい、法定雇用率に影響が出たとしても間違いを指摘できない企業文化を選ぶべきではありません。人に配慮ができる企業文化を目指すことができれば、直ぐに人は集まってきます。障害者雇用に対するマイナスなイメージを会社内に生み出すような原因を放置するよりも、将来に期待できる障害者雇用を目指しましょう。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム