うつ病は「心の病」と言われていますが、実際は身体にも痛みとして現れます。例えば、体が重くなる、痛みを感じるなどの症状です。うつ病患者さんの中には、その感覚を「両腕に鉛が入っているようだ」と表現する人もいます。筆者の場合は、両腕と両ももに現れました。
しかし、健康な人からすると「それって一体どういう状態なの?」と疑問に思うかもしれません。
そこで今回は、うつ病患者さんが感じる「体に鉛が入ったような重さとはどんな感覚か」、そして「その症状が日常生活にどのような影響を及ぼすのか」について、筆者自身の経験をもとに詳しく解説します。
手足に重りがついている感覚
うつ病になると、手足に目に見えない重りが常に付いているような感覚になることがあります。
筆者の場合は、まるでアンクルウェイトを装着したまま日常生活を送っているような重だるさが続きました。アンクルウェイトとは、足首や手首に巻き付け、トレーニング時に負荷を加えるための重りのことです。
本来は筋力アップのために使用しますが、その重さが常に体にまとわりついているようで、身動きが取りづらくなります。「それくらい大したことないのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、体にうまく力が入らず、ちょっとした動作でさえ通常より多くの時間と体力を使うことになります。
例えば、階段を登るときは足が思うように上がらず、たった10段を登るのに1分近くかかりました。
歩行速度も遅くなり、物を取る、立ち上がるなどの些細な動作でさえ、息が上がってしまうほどの疲労感がありました。
私生活でも問題が起こる!
手足に重りがついている感覚は、私生活でも多くの問題が起こります。筆者が体験したのは以下の3つです。
- 買い物をするだけで時間がかかる
- すぐに疲れてしまう
- ベッドから動けない
買い物するだけで時間がかかる
自宅から300メートルほど先のドラッグストアに歩いて行くだけなのに、30分以上かかったことがあります。
普段なら5分ほどで到着できる距離ですが、足が前に出ず、一歩踏み出すたびに脚が重りを付けているかのように感じました。
歩きながら肩や首がじわじわと痛み、胸のあたりがざわついて呼吸も浅くなり、途中の脇道やガードレールに手を添えて何度も立ち止まりました。
「まだ半分も来ていないのか」と思う、引き返す体力も残っておらず、ようやくお店に到着した頃には汗ばむほど疲れていました。
帰り道も同様に何度も休憩し、帰宅した時には買い物より歩くことで消耗していることに気付きました。
すぐに疲れてしまう
健康な人は、物を取るときに何も意識せずとも自然に体が動きます。しかし、うつ病になると、体がうまく動きません。
例えば、近くにリモコンがあっても、「リモコンを取る」と強く意識して、ようやく体が動きます。
リモコンを取って渡し終えた後は、まるでひと仕事を終えたような感覚になります。思わず「ふぅー」とため息をつくと、周囲の人から「何もしていないのに疲れたふりをしないで」と言われてしまうこともありました。
ベッドから動けない

「ベッドから動けない」というのは、うつ病患者さんからよく聞く言葉ですが、筆者もその状態を経験しました。
体が鉛のように重く、起き上がろうとしても上半身だけが少し持ち上がるだけで力が抜け、結局ゆっくり倒れ込んでしまう。その動作を何度も繰り返し、気付けば天井をぼんやりと見ながら時間だけが過ぎていました。
食事の支度はおろか、洗面所へ行くことさえ遠く感じ、お風呂にも2日間入れないまま。「怠けているだけなのでは?」と自分を責める気持ちが大きくなる一方で、体はまったく言うことを聞きませんでした。
「気のせい」とは言わないで
うつ病による身体の痛みは、本当に辛いものです。筆者の場合、「買い物に時間がかかる」「すぐに疲れる」「ベッドから動けない」といった症状が、わずか1ヶ月という短期間のうちに次々と現れました。
筆者の周りにはいませんでしたが、SNSなどでは「それは気のせいだ」という声も見かけます。しかし、うつ病の症状は本人が望んでそうなっているわけではなく、病気によってそうせざるを得ない状態になってしまっているのです。
筆者の体験を例にするなら、毎日お風呂に入りたかったです。しかし、体が思うように動かず、ベッドで過ごすしかない日もあります。また、もし元気だったら友達と遊んだり、ゲームをしたりして、自分の時間を楽しむことができるのに、と感じています。
うつ病の人と接するときは、自分の考えを押し付けるのではなく、まずは「そうなんだね」と共感する姿勢を持ちましょう。
相手の話をじっくり聞くことが大切です。
小さい気遣いでも、うつ病患者さんにとっては嬉しい配慮です。



