行政機関・自治体が組み合わさった障がい者就労支援の仕組み・前編

法律により国や地方公共団体は障がい者法定雇用率が設けられており、一般企業よりも少し高い雇用率となっています。その理由のひとつは、国や地方公共団体での障がい者雇用は「一般企業にとって手本となる取り組みである」ということが挙げられます。
しかしながら、2018年に中央省庁における障がい者雇用の水増し問題が発覚。ふたを開けてみると、地方公共団体でも同じような水増しがおこなわれており、これまでの障がい者の雇用体制や管理方法の実態が浮き彫りになり、多くの問題があったことがわかりました。(このニュースで国や地方公共団体が未達成だった時に罰金の支払い義務がないことや六一報告がないことを初めて知った方も多かったと思います)それぞれ、国や地方公共団体では信頼回復と障がい者の働く場所を設けるための求人活動は実施し、多くの人材を採用しました。しかし、新たな障がい者雇用についての課題(全国の自治体の41%が知的・精神障がい者の雇用を実施していないという調査結果)が浮上していることを前回のコラムで取り上げました。

自治体アンケートから見た障がい者雇用の課題と解決について

2020.07.14

冒頭でも触れましたように、杜撰な管理のもとで実施されてきた障がい者雇用の現場に対して、急遽「義務である法定雇用率を満たすための雇用を実施せよ」と命じても十分な準備も進めないままの取り組みでは付け焼き刃となってしまい、返って周囲からの反発が考えられます。
そうなってしまっては、障がい者雇用を進めるはずなのが、雇用定着の実現を邪魔してしまいます。障がい者雇用で素晴らしい実績を出している企業というのは、助成金などの制度や外部の専門機関を活用しながら、ひとつずつ積み上げてきた「貴重な経験」があるからに他なりません。

国や地方公共団体での障がい者雇用の特徴として、働く障がい者のほとんどが雇用期間に限りのある契約になっていると思います。これは、国や地方公共団体で働く公務員以外の職員は契約職員として雇用されており、障がい者も例外ではありません。つまり、有期の雇用働ける期間は最長5年と決まっているため、それを越える場合は次の就職先を探さないといけないことになります。

それであれば、国や地方公共団体の雇用状況を踏まえた障がい者雇用の新たな役割として、支援機関と企業の3者が連携した雇用支援の仕組みを考えてみました。
今回と次回の2回にわたって、3者が連携した雇用支援の仕組みの【役割】【メリット】【課題】をお話したいと思います。そして、この仕組みのような今後の障がい者雇用の取り組みにとってプラスとなる仕組みや制度ができてほしいと思います。

【役割】

  • 有期契約である最長5年間を半訓練期間として

国による無期労働契約の推進や労働契約法の制度上、有期の雇用契約の場合、最長5年という期間しか働いてもらうことができません。それならば、有期契約として勤務する期間は一般企業への転職を前提とした雇用とし、実践となる仕事を通じて不足していた社会経験を積み重ねていきます。仕事の経験以外にも、周囲とのコミュニケーションや職場で必要な配慮や工夫の習得など、実際の仕事を通じて学ぶこと知ることがたくさんあります。
また、短時間による勤務を希望する障がい者など、本人の状態や希望に合わせた就労からスタートし、経験や慣れと共に勤務時間を延ばすなどにも適した働き方を実現させることが可能です。

  • 蓄積されたノウハウで企業支援

雇用期間内に勤務される障がい者は様々な特性の方になると想像します。おそらく業務も多岐にわたると思いますので、それぞれの仕事内容に適した人材に関する、職場での「コミュニケ―ション」「仕事の指示」「支援」などのノウハウは、その方が転職した先となる企業の人事へ引き継がれることになります。情報の共有は本人が適正な配慮を受けられるだけではなく、周囲で一緒に働く従業員を安心させるための情報にもなります。
また、障がい者雇用の経験が蓄積されたノウハウは、障がい者の求人や雇用定着に困っている人事担当者にとっては助成金よりもメリットのある重要な支援ツールとなります。

  • 地域の就労系支援機関や特別支援学校との連携

障がい者本人の希望を優先として、個々の状態に合わせた支援を提供し、理解と経験を積みながら自立や就職を目指すことが就労系福祉事業所の役割だと思います。そのため、福祉事業と一括りにされますが、利用される障がい者ひとり一人の希望を叶えるための支援というのは本当に大変な一方で素晴らしい仕事です。
知的や精神・発達障がい者の採用には地域の就労系支援機関(就労継続支援A・B型、就労移行支援事業所)との連携が重要かつ必要不可欠であると考えています。国や地方公共団体の職場では、各支援機関からの職場見学や実習の受入れを常態化し、年間を通じて自立を目指す多くの障がい者にとっての社会経験の場という役割を担ってほしいと思います。
また、特別支援学校に通っている生徒たちは未成年ですから、本格的な社会経験は卒業してからになります。
毎年、地域にある各支援機関や特別支援学校からの実習を受け入れる取り組みを実施している特例子会社や一般企業も少なくありません。こういった社会貢献活動は、一般企業だけではなく国や地方公共団体も実施してみても良いと思います。

後編に続く。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム