【Q&A】離職が減る!障がい者雇用で職場定着につながる面談3つのポイント

【Q】
お世話になります。
今回、障がい者雇用枠としての求人により初めて障がい者(精神障がい者手帳取得者)を採用することになりました。

会社としては、今後も障がい者雇用を継続して進めていく上でも定着につなげたいと考えています。
定着するための取り組みのひとつとして面談を実施しようと思います。質問ですが、初めて採用した障がい者との面談について大切なポイントがあれば教えてください。
当方では障がい者の特性に関する知識や経験はまだまだ少ないため、これから蓄積していくことになります。その点も踏まえてアドバイスをお願いします。

《食品加工会社、従業員数約100名、人事担当者》

【A】

ご質問ありがとうございます。
障がい者の職場定着につながる取り組みとして面談は有効な手段のひとつです。私自身、クライアント先ではたらく障がい者の定着支援として毎月数十名の面談を実施しています。

今回お伝えする面談では障がいのある方が職場定着できるためのポイントを3つ「①定期的且つ継続した面談の実施」「②相談、要望、悩み解決などテーマは自由」「③面談時間は最低でも30分」についてお話しします。

①定期的且つ継続した面談の実施


職場定着のための面談は定期的で継続性を持って行うことがポイントです。
経営者や管理者が考えている以上に従業員は自分達の声を聞いてほしいという希望を持っています。日々、仕事をこなす中で感じる不便や困りごとを求める現場の声は会社にとってマイナスをプラスに転換させる有益な意見です。

障がい者の場合、特性を要因として感じる不便や困りごとを伝えるには、周囲の理解に多くの時間が掛かることもあると認識しておく必要があります。
1ヶ月に1回などの定期的な実施は、職場で感じた不便や困りごとに関する改善に対する満足度の確認であったり、仕事・個人目標等の進捗確認にもなり、本人との関係性を形成するコミュニケーションの時間になります。

また面談を一過性ではなく継続性のある取り組みにすることで会社側が労働者の声に耳を傾ける姿勢を強く示すことにもなります。

②お互いを認識するための面談

障がい者の職場定着に課題のある企業の人事担当者から「当社では定期的な面談を実施しています」と聞くことがあります。細かくお話を聞いてみると、1ヶ月に1回程度のペースで実施する面談では、雑談などを交えることもなく、淡々と困っていないか、仕事はできているかの確認をするだけの内容でした。

定期的な面談の注意点として、形骸化した面談では意味を成しません
『面談=十分なコミュニケーション』ではないということです。

面談では、障がいのある従業員から上がる「仕事に関連した要望」「職場に求める支援」「実感する心身の状態」など、本人が悩んでいるかもしれない部分に耳を傾ける姿勢が大切です。満足度の高い会社こそ更なる改善点が浮かび上がってくるのであって、会社や職場に対する要望や不満、悩みなどを聞かない組織は大丈夫なのか不安になります。
普段のコミュニケーションが不十分だとどちらかが感じている面談では、伝えたいことや聞きたいことが話題に上がることも少なくなります。普段の職場での何気ない場面で声を掛け合ったり、雑談ができる関係性があることで、面談時に相談や要望が本人の口から発せられると思います。

以前にある企業の人事担当者から聞いた話です。
その会社には身体障がい者のAさんが勤務していました。周囲からはAさんが機嫌良く働いてもらっているように写っていました。ある日、Aさんは人事担当者との面談で会社に対する不満を口にし、退職したいと申し出ました。
よく話を聞いてみると、下肢に障がいのあるAさんは、自分にコピー用紙の交換や階段を上り下りする仕事を任せて、具合は大丈夫かと声も掛けられることもない。季節や起床した朝の状態によっては足に痛みがあったりなど、仕事にも影響することがあるため話を聞いてもらいたいこともあったのにそのような機会も設けられなかった会社に対して日ごとに不満を募らせていました。
それを聞いた職場の管理者や同僚は大きなショックを受けたと共に、Aさんの声を聞く姿勢が足りなかったこれまでの対応を反省しました。

周囲からは問題がないように見えていても、本人にとっては分かってもらいにくい障がいの特性に理解を示し、対応できる方法を一緒に考えてくれる職場を求めます。

③面談時間は最低でも30分


面談はコミュニケーションや本人からの要望・相談などに耳を傾けるだけではなく、お話をする本人の様子・心身の具合を確認することができます。

障がい者の中にはコミュニケーションが得意でなかったり、表現・伝達が苦手な方もいたりなど多様です。話題が見つからなかったりすると会話も続きません。こちらも挫けそうになります。
そのような中でも本人の普段の仕事ぶりや様子をきっかけに話題を投げかけ続けることで少しずつ反応が見られるようになります。

形式的なことだけを聞くだけでは話も膨らみません。週末の過ごし方や最近興味を持ったことなど、雑談を通して相手の状態を確認するためには最低でも30分程度の時間を準備してください。
一見して話をするのが嫌なのかとこちらが感じるような方でも実は話が好きで、自分の興味のある内容ならスラスラと話をしてくれます。こういった関係づくりが長い目で見た時に職場定着につながってきます。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム