統合失調症患者が夫婦関係で直面する危機とその克服方法

こんにちは。改めまして綿まるみと申します。
今回は『統合失調症患者が夫婦関係で直面する危機とその克服方法』というテーマを取り扱いたいと思います。私の場合ですと、「再発した時の離婚の危機をどのように回避したか」というお話になります。
また、今回タイトルを「統合失調症患者」と便宜上一括りにしましたが、あくまで私のケースであることをご了承下さい。

それに先立ち、簡単に統合失調症の説明をします。
統合失調症とは「脳の様々な働きをまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などの症状が起こる病気です。」一方で、日本での患者数は約80万人といわれており、生涯のうちに統合失調症を発症する率は100人に1人弱とされています。
>>参考:統合失調症|こころの情報サイト

私個人の経験としては、統合失調症の幻聴・妄想等を有する「陽性症状」により、周りを困惑させ仲を違えたこともありました。また再発した当時、何か歯車がずれていたら、夫もそうであっただろうと感じる出来事もたくさんあります。私にとって統合失調症とは、人間関係に波乱をもたらす大変厄介な病気です。自戒の意も込めて、今回のテーマを記述します。

自己紹介

私は20歳頃から統合失調症を患っていますが、夫の方は至って健康な人です。
夫は付き合っている頃から、私が統合失調症やてんかんなど、持病があることを受け入れてくれていました。本当にありがたいことです。

私と夫は、関西で学生をしている間に出会い、大学を出ると同時に結婚。それに伴い夫は、大学の卒業・就職の関係で東京への上京が決まっていました。私の方は持病も多くあるため、結婚して東京についていくかどうか半年ほど悩みましたが、最終的に夫についていくことに決めました。

しかし、東京に上京後1年ほどで私は統合失調症を再発します。
再発前後の状況はこちらに詳しく記しています。

統合失調症患者である私が就労で直面した課題とその解決策

2023.04.11

再発して、幻聴や妄想などのある「陽性症状」が出ていた時期は、夫をはじめ家族・義家族・友人知人と様々な方に迷惑をかけました。当時私は幻聴の言うことを聞いて、家を飛び出すことも頻繁にありました。
その時夫は離婚もよぎったでしょうが、おそらく自身の責任も感じて離婚という選択を取らなかったのかもしれません。

統合失調症患者の夫婦関係における危機

統合失調症患者を持つ夫婦関係における危機は、以下の順番の通りです。

    • 結婚後の環境(住居・仕事等)の変化により再発の可能性が高まる
    • 再発した場合、コミュニケーションの困難、行動の予測不可能性、感情の不安定性が予測される
    • その結果、配偶者が離婚を選択することも有り得る

今回のテーマにおいて特に重大なリスクは、夫婦関係の終焉を迎えるという意味で、やはり離婚の危機ではないでしょうか。

私のケースですが、結婚後の住居や仕事などの変化に重ねて服薬の中断もしていたので、2年足らずで統合失調症を再発しました。

そして再発した時、私の場合ですと、夫との意思疎通など測れる状況ではありません。言動全てが支離滅裂な上、たまにコミュニケーションが取れるかと思うと、大変怒りっぽくなっていました。私の頭の中では全てが正当性を保っている(ように感じられた)ので「誰も私のことを理解してくれない」と家に帰らないことも多々。

一方夫は、その間に不安や不信感が募り、離婚が頭をよぎったのは数回の話ではないと思います。「このような状況下において離婚する人も珍しくない」と精神科へ入院後、主治医にも言われました。治療を受けて理性を取り戻した後に、主治医の言葉の真意が心に突き刺さり涙したことを覚えています。

夫は仕事終わりに二日に一回、片道1時間ほどかけて見舞いに来てくれていました。おそらく夫は、主治医と面談を重ねることや、徐々に回復の兆しを見せる私を見ることで「きっと治るはずだ」と不安ながらも信頼してくれていたのかもしれません。

こうして結果的に、統合失調症の再発による離婚の危機を逃れることができました。今回、離婚の危機を回避できた要因と考えられるものを以下にまとめます。

統合失調症患者の夫婦関係における危機の克服方法

私の統合失調症再発にあたり離婚の危機をなんとか回避できた要因は、以下の通りと考えています。

    • 「陽性症状」が出てすぐに適切な医療治療を受けられた
    • 家族や友人恩人が夫と連携をとってくれていた

実際に夫に「なぜあの時離婚を回避できたと思うか」を聞いてみました。夫によると、私が「早期に適切な医療を受けられたことで、回復も早かったことが安心感をもたらした」とのことです。
実際に精神疾患、特に統合失調症において早期発見・早期治療で予後が良くなるとされています。
>>参考:精神疾患の早期発見・治療の重要性 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

入院した時にお世話になった主治医も、様々な条件から私がある程度は回復するだろうという見込みがあったようです。今となっては夫と主治医が何を話していたのか知る由もありませんが、きっと夫に安心感を与える対応をなさっていたのではないかと思います。今でも感謝にたえません。

また、家族・義家族をはじめ友人恩人が、私の病気を理解してくれたことも大きかったように思います。これも退院後に知ったのですが、夫を介して様々な人が連絡を取り合ってくれていたようです。
そのような状況下の中、夫が孤独の渦に巻き込まれなかったのは、様々な人々が連携を取り合ってくれていたおかげでした。

今思えば退院後も気にかけてくださる方が大勢いました。周りの人々に理解があり協力的であったことは、私の予後にも影響しているように思います。

以上2点が、離婚の危機を克服できた要因ではないかと考えています。

統合失調症患者とその家族のサポート窓口

私自身が、「再発前に統合失調症患者とその家族のサポート窓口を知っていたら安心できたかも」という経験から、以下にサポート窓口の一部を記載します。

    • 精神保健福祉センター
    • 保健センター・保健所
    • 相談支援事業所
    • ピアグループ・家族会

精神保健福祉センターと保健センター・保健所は、病気を持つ患者の行動にご家族や周りが困っている場合の相談窓口です。その場合、専門の医師や看護師、保健師さんが対応してくれるようです。

また実際私は、精神科に入院していた時の保健師さんからの勧めもあり、退院後保健センターの保健師さんへお世話になることがありました。例えば、「この地域で地元の人がよくかかっている内科医院はどこですか」や「〇〇について知りたいのですがどこへ聞けばよいですか」等、幅広く相談にのって頂きました。

地元に知り合いがおらず相談する人が少ない場合は、保健師さんのもとへ足を運ぶのも選択肢のうちの一つかと思います。

相談支援事業所は、障害福祉サービスを利用したい場合の相談窓口です。生活支援・就労支援、どちらの相談もまずは相談事業所への相談が必要のようです。

ピアグループ・家族会は、精神疾患を持つご本人やそのご家族が、お互いの悩みや体験を共有し支え合う場所です。特に家族会は、見過ごされがちな患者のご家族の心のサポートとして有用かと思います。

>>参考:統合失調症 情報提供 ガイド

参考にさせて頂いた資料の発行元は国立精神・神経医療研究センターです。上記の資料から一部抜粋しました。こちらに様々な相談のできる社会資源が記載されていますので、ぜひご覧下さい。相談先が分からない場合のフローチャートも記載されており、大変分かりやすい資料かと思います。

現在の夫婦関係〜まとめの代わりに〜

今回私が結婚を機に上京後、2年足らずで統合失調症を再発しました。しかし、早期の医療介入で、今のところ穏やかに生活をおくれています。精神疾患、特に統合失調症において、早期発見早期治療をすることで、予後がよくなるとされています。

適切な入院治療の結果、「陽性症状」が改善していく私の様子を見て、夫は離婚という選択を取らなかったのかもしれません。また、家族や友人の理解ある行動も、夫に安心感を与えたのだろうと思います。

近しい人がこのような状況になった場合の相談窓口も、一部ですが記載しました。ご自身もご家族も、一人で抱え込まずにいろんな人々と手を取り合い、困難を乗り越えられる環境を整えられたら、という思いで今回記させて頂きました。

そして、現在私と夫は猫とともに、みんなで仲良く穏やかな生活を送ることができています。統合失調症による夫婦関係の危機を乗り越え、そのような生活を取り戻せたのは、医療関係者を始め家族や友人、様々な人々のおかげでした。私は多くの人々の手を借りつつも、この平凡ながらも穏やかな日常を守り続けたいと願ってやみません。

この場をお借りして、お世話をかけた皆様にお礼申し上げます。おかげさまで穏やかな生活を取り戻しつつあります。本当にありがとうございました。

参考文献

統合失調症 情報提供 ガイド
統合失調症 情報提供 ガイド
精神保健福祉法
統合失調症|こころの情報サイト
精神疾患の早期発見・治療の重要性 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

ABOUTこの記事をかいた人

▼プロフィール:
京都女子大学文学部卒業後に教員免許を取得し、教育保育関連を経てwebライターへ。
小学生の頃よりてんかん、大学在学中に統合失調症、甲状腺機能低下症を発症。「普通に生きることが難しい」と感じた経験から、様々な病気と共存しつつも平凡に生きることを目標にしている。