前回に引き続き、今回もこれから障害者雇用を進める上で、無視できない2つの問題について言及したいと思います。
前回は、障害者雇用率こそ改善しているが雇用率達成企業率は低調であると指摘し、これは未達成企業にだけ責任を押し付けるべき問題ではないと説明しました。
今回は、障害者雇用を促進させようと考える政策側のお話をしたいと思います。
2.ますます深まる政策と企業の溝
障がい者法定雇用率は数年ごとに引き上げられ、1976年には1.5%でしたが、1988年に1.6%、1997年に1.8%、そして2013年に2.0%と推移してきました。
それに伴い、助成金の拡充、罰金制度の拡大、精神障がい者の雇用義務化、除外率の撤廃など、政策による障害者雇用の要請は確実に強まってきました。
しかし、雇用義務のある企業に対する直接的な環境整備はあまり進むことはなく、相談窓口など多少のサポートが増えた程度です。私は、これは政策が障がい者を雇えるのに雇う気がない企業と決めつけ進んでしまっているせいだと考えています。
確かに、雇えるのに雇わないだけなら、リスク拡大手法(罰金拡大や社名公開などの雇わないデメリットを大きくするもの)などで脅すのも悪くないかも知れません。しかし、雇う気はあるが上手く雇えない企業をさらに追い詰めたところで、状況が良くなることは考えづらいのではないでしょうか。
「北風と太陽」のお話のように、寒風を吹き付けて強引に一時的に障がい者を雇わせても、長期的に見ると改善どころか悪化する可能性の方が高いでしょう。失敗を経験した企業が、すすんで罰金を払う方を選ぶようになっても不思議ではありません。
そうならない為には、「障がい者を雇えるのに雇う気がない企業」という前提を「障がい者をうまく雇えない企業」に変え、企業を追い詰めるのではなく、背中を押すような政策にしていかなければいけません。
もちろん、目の前にまで問題が来なければ動かない企業もあり、リスク拡大手法が有効であることは否定しませんが、それ一辺倒ではなく、もう少し障害者雇用に取り組む企業に対して開かれたサポートを民間にだけ頼るのではなく、政策としても提供する必要があると強く感じています。
まとめ
今回、これからの障害者雇用が上手くいかない理由というネガティブなタイトルの元、お話をさせて頂きましたが、全体としては日本の障害者雇用は良くなってきていることは間違いありません。補助金を上手く利用し、障がい者を雇用するメリットを大きく、デメリットを小さくしようと頑張る企業も増えてきています。
ただ、今までの成功体験をベースにした政策(企業を追い詰める)だけでは、同様の成長は望めないのも確かです。
綺麗事に聞こえてしまうかもしれませんが、障がい者と共生できる社会という基本に戻って、障がい者が働ける企業づくりを周囲からもサポートするようにしなければならないと考えています。
時流に敏感な民間企業では、ここ数年でいくつも障害者雇用企業をサポートする企業が出てきています。これに負けず政策としても、「義務だから」という姿勢だけでなく障害者雇用企業のサポートを拡充して欲しいところです。