こんにちは、Kaienの大野です。“本業に貢献する障がい者雇用の実現”に向けたコンサルティングや人材紹介などの企業向けサービス事業を担当しています。
本コラムでは、障がい者雇用に関する企業支援の現場経験で得られた気付きを、企業担当者や支援機関の皆様にシェアしていく、というテーマで執筆しています。
昨今は精神・発達障がいの方を積極的に雇用し、上手に活用する企業様が徐々に増えてきました。
働く一人ひとりが戦力となって活躍する、好事例の企業にはいくつかの共通点があるように感じています。
本日は、その中から「実効的な1on1面談の運用」という共通点について記載していきたいと思います。
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その1on1面談、本当に意味がありますか?
障がい者雇用のご相談をお受けする際には、1on1面談の実施状況をお伺いしますが、半数以上の企業様が「1on1面談を実施しています」とお答えになります。
障がい者雇用のみならず、一般的なマネジメント・雇用管理における1on1面談の有効性が浸透しているものと想像され、たいへん結構なことだと感じています。
しかし、その中身・内容を詳しく聞いてみると、「その1on1面談、本当に意味があるの?」と疑問に感じられるケースが多くあります。例えば、実施頻度を聞いてみると「半年に1回」など、ほぼ目標設定面談と同じような頻度でしか行っていないケースが見られます。あるいは、面談の内容を確認すると「特にテーマはなく、雑談することが多い」というケースも少なくないようです。
背景には、多少なりとも面談を実施する側の不慣れが影響しているのではないでしょうか。急にかしこまって「なにか相談事ある?困ったことがあれば相談してね?」と言われても、具体的に相談することも思いつかず、お互いに気まずい雰囲気になってしまい、結果的に頻度が少なくなっていくのかもしれません。
■「いまいちな1on1面談」あるある
相談しやすい関係性を作れていない |
1on1面談の場で相手から相談があるかどうかは、普段の関係構築次第です。こまめに声をかけたり、ねぎらいの言葉を掛けている上司には相談したくなりますが、日頃、自分には特に関心がないように感じられたり、プレッシャーをかけてくることが多い相手には、相談したいとは思えないでしょう。 |
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「困っていることない?」と聞きすぎいている |
面談を実施する上司としては、せっかく面談をするのだから何かしら相談してほしいという心理が働きます。一方で、「困っていることない?」と聞かれる側はせっかく面談してくれているので、何かしら相談しないと、という心理が働きます。その結果、あまり本質的ではない表面的なお悩み相談の場になってしまうことがしばしばあります。 |
目的が曖昧なままで面談している |
特に準備や考えもなく、行き当たりばったりで1on1面談をすると、結果的に雑談の場となってしまい、お互い忙しいなかで「なんのためにやっているんだろう」という疑問を感じ、徐々に実施頻度が少なくなる。 |
このように、制度や仕組みだけが形骸化しているとまでは言いませんが、少なからず実効性の部分では改善の余地を感じている企業様もいらっしゃるものと思います。では、どのようにすれば実効的に1on1を運用することができるのでしょうか?
1on1面談のねらい・目的は相手によって異なる
実効的な1o1面談をするためのカギは、「個別化」だと感じています。
一口に精神障がい・発達障がいといっても、その障がい特性や状況は千差万別です。1on1面談が、雇用の定着や、戦力となって活躍をするための配慮・サポートの場だとするならば、相手によって必要なサポート内容は一人ひとり異なるのは当然のことです。
実効的な1on1面談を実施している企業は、このような「個別化」が上手に行えており、質が高く実効性のある1on1面談を運用できているのだと思います。
■相手のタイプに応じた「1on1面談の目的」の例
相手のタイプ | 面談の目的 |
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体調のセルフモニタリングが苦手 |
体調や気分の「定期健診」をする |
自信が持てない、自己肯定感が低い |
業務の貢献度を可視化したり、感謝を伝える |
不安が強い |
不安の内容を傾聴し、心配事を解消する |
情報の整理が苦手 |
混乱している情報の棚卸して整理してあげる |
人間関係でつまづきがち |
ゆがんでしまった認知を修正する |
コツコツとした成長促進が必要 |
小さな目標を設定して振り返りをする(PDCA) |
成長意欲が高い |
本人の意欲の方向を確認し、業務のやりがいを創出する |
慣れないうちは、相手によってどのような目的の設定をすべきか、分からない場合も多いかもしれません。まさに1o1面談はそこから始めればよいのだと思います。
つまり、相手がどのようなタイプか知ろうとすること、1on1面談ではどのようなサポートを行えばよいのか相手に直接聞いて、お互いによりよい面談をするためにはどのようなテーマを立てればよいか、対話することが継続的な1on1面談のスタート地点となります。
マネジメントのユニバーサルデザイン
勘の良い方はお気づきかと思いますが、上記のような「実効性の高い1on1面談」の有効性は、障がい者雇用に限ったことではありませんよね。
一般枠雇用であっても、人にはそれぞれ個別の事情や個性があります。それぞれの違いやニーズに寄り添ったコミュニケーションの機会は誰にとってもうれしいものです。Kaienでは以前から「精神・発達障がい者の支援スキームは、マネジメントのユニバーサルデザインだ」ということを提唱しています。
一人ひとりに寄り添った1on1面談の運用は、雇用の定着や、やる気を創出し、ひいては組織の生産性の向上に繋がります。ぜひ障がい者雇用の質の向上をきっかけとして、実効的な1on1面談が会社全体に広がっていけばよいな、と思いながら、企業様のサポートをいつも行っています。
皆様の会社でも、改善の余地がありそうでしたら、ぜひ「実効的な1on1の運用」にチャレンジいただけますと幸いです。