「来月から、障がい者雇用を担当してください」
突然そう言われたら、何から始めればよいのでしょうか。
- 法定雇用率について調べる。
- 障がいについて勉強する。
- ハローワークに相談する。
- 求人を出す。
- 社内で仕事を探す。
やることがたくさんあるように見えて、「結局、最初に何をすればいいの?」と戸惑う方も少なくないと思います。
就労支援の仕事をしていると、企業の方からこうした相談をいただくことがあります。
特に、これまで障がい者雇用にあまり取り組んでこなかった企業では、担当者自身も障がいについて詳しくなく、社内にも相談できる人がいないことがあります。
でも、最初の1か月ですべてを決める必要はありませんし、むしろ、いきなり求人を出すよりも、まずは自社の状況を知り、社内の仕事を見て、相談できる人をつくることから始めてみるのがよいと思います。
最初の1か月の目標は、「採用すること」ではなく、これから障がい者雇用を進めるための土台をつくること。
今回は、そのためにやっておきたいことを4つに分けて考えてみます。
1週目 まずは「自社の現在地」を知る

最初に確認したいのは、自社の障がい者雇用の状況です。
- 現在、障がいのある社員が何人働いているか
- 実雇用率はどのくらいか
- 今後、何人程度の雇用が必要になりそうか
- どの部署で、どんな仕事をしているか
- これまでの採用や退職にはどのような経緯があったか
2026年7月1日から、民間企業の法定雇用率は2.7%に引き上げられ、対象となる事業主の範囲も常用労働者37.5人以上へ広がっています。
担当者になると、どうしても最初に、「あと何人採用すればいいのか」という数字が気になると思います。
もちろん、それを確認することは大切です。
ただ、人数だけを見て採用を急ぐのではなく、すでに働いている社員がいるなら、「うまくいっていることは何か」「現場で困っていることはないか」「どんな工夫をしているのか」まで聞いてみてもらえたらと思います。
障がい者雇用の最初の一歩は、求人を出すことではなく、まず自社を知ることです。
2週目 「障がい者にできる仕事」ではなく、社内の困りごとを見る
次に、社内の仕事を見てみます。
企業の方からよく聞くのが、「障がい者に任せられる仕事がありません」という悩み。
でも、最初から「障がい者にできる仕事」を探そうとすると、なかなか見つからないことがあります。
それよりも、以下の視点で見てみます。
「社員が本来業務の合間にやっている仕事はないか」
「誰かが気づいたときにやっている仕事はないか」
「毎日、毎週繰り返している仕事はないか」
「人手が足りず、後回しになっている仕事はないか」
実際の企業支援でも、成長して忙しくなっている部署、残業が多い部署、複数の人が少しずつ行っている定型業務などから仕事が見つかることがあります。
書類のスキャン、データ入力、郵便物の仕分け、備品補充、会議室の整理、在庫チェックなど、一つひとつは短時間の業務でも、組み合わせると一人分の役割になることがあります。管理部門だけでも、書類管理、郵便、備品管理、環境整備、会議準備、IT補助など、多くの業務候補があります。
この段階では、まだ仕事内容を決めきらなくても大丈夫です。
まずは、社内の「仕事」と「困りごと」を見えるようにすることから始めます。
3週目 仕事だけでなく、「働く環境」も見る
障がい者雇用を考えるとき、仕事内容ばかりに目が向きやすいのですが、実際の職場では環境も大切です。
- 誰が仕事を教えるのか
- 指示を出す人は誰か
- 質問しやすい人がいるか
- 職場の音や温度はどうか
- 作業場所や動線はどうか
- 休憩できる場所はあるか
- 職場の雰囲気はどうか
同じ仕事でも、職場環境によって働きやすさは変わります。
そして、この確認は人事だけではできないように思います。
候補となる部署の管理職や社員に、「最近、忙しくて後回しになっている仕事はありませんか」「誰かに任せられたら助かる仕事はありませんか」と聞いてみるのもよいと思います。
ここで大切なのは、いきなり、「障がい者を受け入れてください」とお願いしないこと。
現場には現場の不安があります。
「これから会社として障がい者雇用を進めたいので、一緒に仕事を考えてほしい」というところから始めても十分です。
4週目 社外に「一緒に考えてくれる人」をつくる

最初の1か月でもう一つやっておきたいのが、社外の相談先をつくることです。
ハローワーク、就労移行支援事業所、障がい者就業·生活支援センター、地域障がい者職業センターなど、企業が相談できる機関があります。
2024年度からは、障がい者雇用の経験やノウハウを持つ認定事業者から、一連の雇用管理について相談援助を受けられる「障がい者雇用相談援助事業」も始まっています。
私の法人も、大阪労働局からこの認定を受け、事業を実施しています。実際に、障がい者雇用サポートの流れでは、採用計画を一緒に考え、業務を洗い出し、受け入れ部署を整え、その後に求人票の作成や募集へと進めるサポートをしています。
つまり、障がい者雇用というと「まず求人を出す」と考えがちですが、その前にも大切な準備があります。
求人をまだ出していなくても、「何も進んでいない」わけではなく、準備そのものが、障がい者雇用の一部でもあります。
最初の1か月で、採用まで進まなくてもいい
担当者になると、「早く求人を出さなければ」「早く雇用率を上げなければ」と焦ることがあると思います。でも、仕事内容も受け入れ部署も曖昧なまま採用を急ぐと、入社後に本人と現場の双方が困ることがあります。
最初の1か月は、以下の4点ぐらいを進めることでよいかと思います。
- 自社の状況を知る
- 社内の仕事と困りごとを見る
- 受け入れ部署の人と話す
- 社外に相談できる人をつくる。
まずは、これくらいからで大丈夫かと思います。
障がい者雇用の担当者だからといって、最初から障がいについて何でも知っている必要はないですし、全部知ってから始めなくてもいいですし、分からないことは調べ、困ったときは誰かに聞くぐらいでよいかと思います。
そして、少しずつ、自社に合った方法を見つけていく。
障がい者雇用は、最初から完成形をつくるものではなく、試しながら整えていくものだと思います。
それと、もう一つ大切なのは、これを担当者一人の仕事にしないことです。
障がい者雇用は、みんなで取り組んでいくことに意味があると思います。
次回は、人事·現場·支援機関がどのように役割を分けながら障がい者雇用を進めていけばよいのか。
「一人で抱えない障がい者雇用」について考えてみたいと思います。





