取材レポート:YORISOU社会保険労務士法人【後編】

前回の続き。

右から代表の松山氏、柏原氏

◯自社の障がい者雇用を通して

《話・松山氏、柏原氏》

二人と一緒にはたらき始めてから「安心」をもらっていると感じます。それは、組織の中で優しい気持ちを感じられるようになったからです。
仕事をしていると、時にはイラッとしてしまうことは誰しもあると思うのですが、そうした時に職場ではたらく二人のことを考えるとスーッと落ち着くことができます。何かあった時にも二人の顔を思い浮かべることで安らぐ気持ちが出てきます。二人の様子を見ていると職場で一緒にはたらく我々の「手を離さない」気持ちでいてくれていると感じます。それは、職場での生活を通じて我々のことを信頼し、自分たちはこの会社に居て良いんだという気持ちがこちらにも伝わってくるからです。

障がい者雇用を通して学びもありました。

  1. 仕事については考え過ぎずたくさん用意しておく。
      →想定していた仕事が合わなくても別の仕事が適正な時があるため。
  2. 職場では心理的安全性の有無が重要。
      →業務でミスをしても「大丈夫」という雰囲気。ミスによって切り離されてしまうわけではない
      と本人が信じられるまで伝え続ける。手を離されることへの怖さをなくす。
  3. 信頼する。
      →「できない」ことも「できる」と思うところから入る。「できない」には2種類あることを雇用してから気づいた。「できない」はできるのに何かが原因となりできないのか、本当にできないのかを見極めることが大切。
      本人の能力ではなく環境が要因の場合、「できない」ことでなく環境にフォーカスを当てると改善策(配慮)が見つかる。
  4. 感謝を伝える。
      →仕事で「ありがとう」を伝える。人と人とのつながりを大切に感じてもらう。
  5. マイナスの当事者意識からプラスの当事者意識へ。
      →当事者として、自身は障がいがあるから「仕方なくやる」「これしか選択肢がないからやる」といったマイナスの当事者意識を「やりたいからやる」「誰かの役に立っている喜び」、そんなプラスの当事者意識を感じることが出来るように時に私たちが同僚でありながら、第三者としての視点を持って意識して捉え方を伝えていけると、時として自分を縛っていたこだわりなどをすっと手放せるときがある。
  6. 仕事の背景を伝える。
      →担当する業務がどのような成果につながるのか、役割のイメージを持たせることで結果が変わ
      ります。例えば仕事の全体像を見せる、仕事に対する不安を取り除いてあげるなど。

以前に実習生を受け入れた際の出来事ですが、その実習生には事務周りの仕事をお願いしていました。ある時、コピー機への用紙の補充業務について「自分は障がい者だから雑用しか任されない。やりたくない。」という言葉が実習生から出ました。私は仕事の楽しさを知ってほしい、自分の役割が大切なことであると感じられるような仕事を与えたいと思い、実習生とお話をする機会を設けました。

コピー機の前で従業員が出力をした用紙を指差し「大切なことが書かれたこの書類がないと仕事ができなくなります。◯◯さん(実習生の名前)がコピー機に用紙がなくなる前に補充してくれるから大切な書類を準備することができたんだよ。ありがとう。」と伝えました。それ以降、実習生は不満を口にすることなく一生懸命自分に与えられた業務に取り組んでもらうことができました。

《話・柏原氏》

障がいのあるお二人と一緒にはたらくことになって改めて仕事の意味づけを大切にするようになったと感じます。例えば、お二人に仕事をお願いする時に「やっておいて」と頼むだけではなく、この仕事はどのようなところに役立つことになるのかを明確に伝えることが二人にとっては大事なことだと私たちが理解するようにしています。そうすることで、今取り組んでいる仕事がどのような成果につながるのかを認識し、こちらが望む結果を出してくれるようになります。

また環境の大切さとして、障がいのある方の中にはできるにも関わらず環境によって影響を受けてしまう人がいると感じます。ある時、事前に準備したマニュアルに沿って任せたい業務の説明を行ったのですが全然見てもらえないことがありました。代表の松山に相談したところ「マニュアルを見ない理由があるはずだよ。」と指摘を受けた時に、相手に原因があるのではなく自分のマニュアルに理由があるのではという「環境側の問題」を考える視点を持つきっかけとなりました。

YORISOU社会保険労務士法人で活躍するS氏とN氏にもお話をお聞きしました。

右からN氏、S氏

◯YORISOU社会保険労務士法人で勤務してみた感想

《話・S氏》

就職してはたらき始めてから感じたことは今までの職場と違うということでした。
仕事をするところで「暖かい職場だ」と初めて感じました。これまでにバイトも含めて7〜8社で仕事をしてきましたが、人生の中で一番褒められた職場がYORISOU社会保険労務士法人でした。ひとつの仕事を終えると感謝を伝えられるのですが、感謝の言葉を聞くことで仕事に対してやりがい感じます。

現在、障がい年金チームに所属しています。チームでは請求書の発行・年金事務所の提出書類作成・イベントチラシの制作・名刺作成・広報関係の業務を担当しています。将来は会社のパンフレットを作成したいと思っています。入社して8月で一年となり、とても濃い時間だったと感じます。職場での周囲の雰囲気から見ると、一年よりもずっと前から一緒に働いていた感じがします。

《話・N氏》

Sさんと同じような感想になりますが、YORISOU社会保険労務士法人に入社して感じたことは、疾患にかかる前に自分が憧れていた職場に出会えたような気持ちになりました。
業務量に関係なく、日常的に感謝が飛び交う職場です。入社前に就労移行支援事業所に通所していた時に企業実習で初めてこちらにきました。実習当初の緊張している中、従業員の方が代表に質問に行った時に「ありがとう」と従業員に対して発する言葉にとても驚いたことが印象的でした。実習の半年後に入社。これまでの職場では話しかけることに躊躇してしまうことがある中でここではそういったことがありませんでした。

現在、経理業務を担当し税理士の先生とやりとりも行っています。もう少しで一通りの経理業務ができるようになれそうです。所属が総務なので総務関連業務も担当しています。今は任されている担当業務の精度を上げたいと思っています。時にはSさんと一緒に動画を制作したり、Sさんからイラストレーター業務を教えてもらっているのでそれを活用した業務にも将来的には関わりたいと思います。
9/19で入社から一年が経ち時間の経過が早いと感じました。この一年の間にプライベートのライフイベントが重なる中、気持ちがしんどくなることもありましたが、周囲の皆さんに支えられながら辿り着いた一年でした。

◯仕事を通じて気づいた事があれば教えてください

《話・S氏》

YORISOU社会保険労務士法人ではたらくようになってから体調が良好になりました。また、今までの職場では自分の力を発揮する機会に出会えていなかったと感じることがあります。
例えば、入社してからイラストレーターを使用する業務を任せられたのですが、資料等をデザインする際に限られたスペースに情報を要約することを求められたときに自分がそういった業務が得意だったと気づくことができました。新しいことにチャレンジさせてもらったから気づくことができたと思います。
おそらく障がい者雇用だからここまでと制限されていたら気づくことができなかったのではと思います。

《話・N氏》

入社してから、元々の性格だった恥ずかしい・気後れしていたところがなくなってきたと感じます。また、自分は「ここにいて良いんだ」と感じます
ある時、私が伝えた言葉を褒めてもらう場面がありました。当法人では日常的にお花屋さんにお祝いのお花のオーダーをする時があります。お店からお送りするお花の見本を送ってもらい、その感想を綴ったところ代表の松山に褒められたことがありました。普段から使う言葉で褒められた時に、言葉の使い方を磨きたいと思っていた自分としては良い評価をされたり、フィードバックをもらうことで改めて言葉の大切さに気づいたことと、自信にもつながる経験になりました。

取材を通して、同社の取り組みは障がい者の雇用を「法律による義務としての枠」を大きく飛び越え、個人を尊重し人のつながりから生まれる信頼関係による組織の成長を実践していることが非常によく分かりました。同社の取り組みは組織が大きくなるにつれ実践が難しくなる点かもしれませんが、組織も細分化することで小単位にできるのであれば、同社の考え方は十分に浸透させることができると感じます。

また、この取材では代表の松山氏と従業員の柏原氏、障がいのあるS氏とN氏といったそれぞれの立場の方々からお話をお聞きしましたが、共通して感じたことは「人としての温もり」のある組織だということでした。

ご協力ありがとうございました。



『YORISOU社会保険労務士法人』
所在:東京都中野区東中野1-53-11 パークハウス東中野2F
URL:https://www.yorisou.jp/

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム