兵庫県神戸市に本社がある株式会社フェリシモを通販事業でご存知の方も多いと思いますが、実は社会貢献活動にも精力的に取り組んでいる会社でもあります。
以前にミルマガジンの取材にもご協力をいただきました。
今回、同社にて取り組まれている様々な社会貢献活動の中から、障がい者に関連した取り組みについて取材をしてきましたのでご紹介いたします。当日は生活雑貨事業部 CCP推進グループ課長代理 永冨恭子氏、経営企画部 広報部 部長代理 中島健太郎氏にお話を聞かせていただきました。
フェリシモCCPのユニカラートが『ソーシャルプロダクツ・アワード2023』優秀賞を受賞
《話・永冨氏、中島氏》
当社のフェリシモCCP(チャレンジド・クリエイティブ・プロジェクト)の取り組みのひとつ、チャレンジド(障がいのある)のアーティストにより描かれた作品にアレンジを加えて、オリジナルのテキスタイルや雑貨をつくるプロジェクト「ユニカラート(unique・color・artを合わせた言葉)」がソーシャルプロダクツ・アワード2023で優秀賞をいただきました。
一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会が持続可能な社会の実現につながる優れた「ソーシャルプロダクツ」に光をあて、社会性と商品性の両面を評価する日本ではじめての表彰制度です。
URL:https://www.apsp.or.jp/
今回、CCPとしてソーシャルプロダクツ・アワードにエントリーしたのは初めてでしたが優秀賞をいただくことができたのは、我々の障がい者アートに関する活動が認められた証拠だと本当に嬉しく思います。
ユニカラートは現在、雑貨を中心とした商品構成となっていますが、今後は社内のアパレルチームなど他部署とも連携して新しい表現を取り入れ、障がい者が描くアートを更に多くの方が手にしやすい商品へと広げていこうと考えています。プランナーによって表現方法には違いがあります。
障がい者のアート素材をそれぞれのプランナーが個性を生かした表現方法によってどのような商品が生み出されるのか非常に楽しみにしています。
フェリシモとしては、普段手にすることが少ない障がい者のアートが日常生活に溶け込み、作者を評価するのではなく身近に感じる存在にするのが我々の役目だと思っています。
アートをデザインにすることで障がい者との間にある見えない壁がなくなるような商品開発を通して、ボーダー(境界線)をなくしていきたいと思います。
ユニカラート ソーシャルプロダクツ・アワード2023 優秀賞受賞ページ
URL:https://www.apsp.or.jp/product/spa2023_002/
授賞式動画
URL:https://www.youtube.com/watch?v=Oa9rLcnxgoE
「LITALICO発達ナビ」「ブルーナ・バリアフリー・プロジェクト」
当社ではコラボレーションによる障がい者関連商品の開発にも力を入れています。
株式会社LITALICO(リタリコ)が運営する発達が気になるお子さまの保護者や支援者向けポータルサイト「LITALICO発達ナビ」と共同で商品の開発を行い、発達障がいのあるお子さんの外出や日常生活をサポートする商品を展開しています。
商品開発では、発達障がいの特性による困りごとを理解するために「発達ナビ」ユーザーの方々からのご協力により、アンケートやサンプルモニターをしてもらった感想をもとに、細かい修正やデザインに反映させながら製作を進めます。アンケートやモニターに参加された方々の声からの気づきは多く、困りごとを解決する商品の開発には欠かせません。
URL:https://h-navi.jp/column/article/35029144
URL:https://h-navi.jp/column/article/35029334
「CCP x ディック・ブルーナ バリアフリープロジェクト」では、ディック・ブルーナのイラストを使って障がいのある方たちを応援する商品を企画しています。
ディック・ブルーナの絵本の中には、車いすに乗っているロッテや耳が垂れているダーンといった、他の子たちとは少し違うところがあるキャラクターがいるのですが、違うところがあってもお互いを認め合うという考え方がそこにはあります。
ディック・ブルーナのイラストがデザインされた手帳ケースやマスクなど、障がいのある方たちが楽しく外出できる工夫のある商品を販売しています。
「裏表のない世界」
フェリシモでは新たな活動のひとつとなる、「マイノリティデザイン」の著者である澤田智洋氏をゆる研究員として迎えた「オールライト研究所」を2022年にスタートしました。
よわさや苦手やコンプレックスに悩むのは、そろそろ終わりにしましょう。
足りないのは、あなたがそのままでたのしく暮らせるための、社会の工夫。
オールライト研究所は、「そのままでたのしい、そのままがたのしい暮らし」をみなさまと一緒に作り出すプロジェクトです。『マイノリティデザイン』の著者、澤田智洋さんをゆる研究員に迎え、さまざまなテーマで商品開発を行います。
HP:「フェリシモ オールライト研究所」より抜粋
障がい者に限らず誰もが感じる弱みやコンプレックスを強みや伸び代にしようという考えから設立されたオールライト研究所では「そのままでいい、そのままで楽しい」というコンセプトのもと、商品開発を始め、Tシャツ、パンツ、靴下の3アイテムを販売することになりました。
今回商品化されましたTシャツであれば、裏表、前後ろを気にせずに着ることができるように開発されました。商品の開発にあたりさまざまな方の声を聞いて情報収集をした際、全盲の方にとってはTシャツの裏表や前後を手で触りながら確認をすることがストレスと感じたり、肢体に麻痺のある方には裏返しになっている衣類を戻すことが大変であったりなど、健常な人にとってあたりまえのことが障がいのある人にとっては不便と感じることが日常的に存在することがわかりました。
ストレスを感じる課題をひとつひとつクリアにする商品開発は苦労を重ねました。縫い目が見えないようにするため折り伏せ縫いという技術を使ったり、裏表がないためタグをポケット内に取り付けたりなど、一般的な製造工程から切り離した考え方を用いたりしました。
また、今回開発された靴下についても、つま先の縫い目をなくし編み目も裏表の違いがないだけではなく、一般的な靴下にはある「かかと」部分がないデザインとなっています。実際に着用してみると、踵が合わないと気持ちが悪いといった感覚がなくなったことで、障がいの有無に関係なく誰もが履き心地が良いと感じる商品が生まれました。
※下記HP「オールライト研究所」では商品の開発秘話が詳しくご覧になれます。
URL:https://www.felissimo.co.jp/arl/arl_fsc.html
プロモーション動画
URL:https://feli.jp/s/pr230214/2/
2年前となる前回の取材時に比べて、多様性に関する取り組みがさらに進んでいると感じられました。同社の強みにひとつであるファッションをベースに障がい者を含めた誰もが暮らしやすい生活を実現させるためのエッセンスが様々な商品を通して表現されています。普段の生活で感じる不便や困りごとを解消するはずの工夫が、実は使う人を選ばず全ての人にとって快適な生活に結びつくというのは、会社などの組織で障がい者が働く際に提供する合理的配慮の考え方と似た部分があると思います。
フェリシモが提供する商品が多様性理解につながる取り組みのひとつとして多くの方々に伝わってほしいと強く感じました。
取材へのご協力、ありがとうございました。
本社:神戸市中央区新港町7番1号
URL:https://www.felissimo.co.jp/company/ (フェリシモ)
https://www.felissimo.co.jp/ccp (『CCP(チャレンジド・クリエイティブ・プロジェクト)