障害者雇用とは、民間企業や国・地方公共団体が障がい者を従業員として雇用することです。そして、障害者雇用の進捗具合は、障害者雇用率によって測られます。
障害者雇用という概念が出来たのは、第二次世界大戦終戦頃で、戦争により負傷した軍人が仕事に就くのが困難だったことが背景にあったと言われています。
このように国のために戦った軍人達の生活を守る目的で障がい者の雇用を義務づける法律を作ることになりましたが、整備までには長い時間がかかりました。障害者雇用に関する初めての法律である「身体障害者雇用促進法」が出来たのは、終戦から15年後のことでした。
当初、障害者雇用の対象が身体障がい者のみだったこともあり、1990年頃まで身体障がい者以外の障がい者に関する実態調査結果があまり存在しません。その後知的障がい者や精神障がい者も含まれるようになり、現在では主に身体障がい・知的障がい・精神障がいの3区分に分けて考えられるようになりました。
内閣府による障がい者白書には、”障がい者数は身体障がい者366.3万人(人口千人当たり29人)、知的障がい者54.7万人(同4人)、精神障がい者320.1万人(同25人)であり、およそ国民の6%が何らかの障がいを有していることになる。”と記されており、障がいに関する研究が進む現在は、障がい者数はさらに増加しています。
障害者雇用に関する法律
身体障害者雇用促進法
昭和 35年法律 123号。正式名称は 1987年以降「障がい者の雇用の促進等に関する法律」となった。障がい者 (身体または精神に障がいがあるため,長期にわたり,職業生活に相当の制限を受け,または職業生活を営むことが著しく困難な者) が,その能力に適合する職業につくことなどを通じて,その職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ,もって障がい者の職業の安定をはかることを目的とする法律。 1987年改正までは,身体障がい者のみの職業安定措置を講じていたが,改正後は精神に障がいのある者も含めた障がい者全般に拡大された。公共職業安定所による障がい者のための求人の開拓,障がい者職業センターによる障がい者の職業評価,職業指導,職業準備訓練および職業講習を行なうこと,事業主に対し障がい者を一定の雇用率で雇用する義務の認定,障害者雇用納付金の徴収,障害者雇用調整金の支給などを内容とする。
出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
障がい者の雇用の促進等に関する法律
障がい者の雇用の促進等に関する法律が改正され、2006年4月に施行された。この法律は、法定雇用率として、常用労働者数56人以上の企業で1.8%、国・地方公共団体で2.1%など障害者雇用率達成を定めており、未達成の場合雇用納付金が徴収され、公的機関・自治体・企業名が公表される。改正により、身体・知的障がい者に加え精神障がい者が法定雇用率の対象となった。長時間働けない人の場合でも、週20時間以上30時間未満の短時間労働で0.5人分としてカウントされる。法定雇用率については、未達成企業の割合が、05年6月1日現在で42.1%と低迷しており、厚生労働省は06年4月、川崎二郎大臣名で、障害者雇用の一層の推進に関する要請書を出した。 改正のもう1つのポイントは、職場適応援助者=ジョブコーチ(障がい者本人と企業双方への適応支援を行う)の助成金制度の創設である。福祉施設や事業所がジョブコーチを置いて支援を行うことに助成するほか、民間機関を活用してジョブコーチ養成を進める。 これまでも一般企業での就労が難しい障がい者を対象に、福祉工場や授産施設、作業所といった場で福祉的就労と呼ばれる就労訓練や就業の場が提供されているが、低賃金という限界があった。障がい者が働く職場に出かけ、職場に円滑に適応するためのきめ細かな支援を行うジョブコーチは有効な援助システムの1つといえる。一定期間ではなく継続的な支援を提供する体制整備と同時に、就労が難しい障がい者もゆとりある生活が保障される自立支援システムが求められている。
出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」