【Q&A】雇用している障がい者に自信をつけさせるには

【Q】

いつもお世話になります。

現在5名の障がい者を雇用しています。5名ともこの2年ほどの間に採用した方ばかりで、事務系の仕事をメインに各自の特性に合わせた業務を担当してもらっています。

個人差はあるものの、担当している仕事を通じて成長してもらっていると思います。中には自分ができないことや苦手な部分を他の障がい者の方達と比較して、自信が持てず悩みばかりを口にしている障がい者もいます。定期的な面談を実施したときに励ましたり、元気付けるような言葉を投げかけるのですが、より具体的な対処法があればお聞きしたいと思います。
よろしくお願いします。

《建築設計会社、従業員数約200名、人事担当》

【A】

厚生労働省『令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」に概況』を見ると、個人が仕事や職業生活において強い不安や悩み、ストレスを感じる理由として「仕事の量」「仕事の質」「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」「役割・地位の変化(昇進・昇格、配置転換等)」が主な理由となっています。

【参考】厚生労働省:『令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」に概況』
URL:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_gaikyo.pdf

上記にある職場で抱える従業員の不安や悩みは障がいの有無に関係なく、働く上で誰もが感じたり、抱える悩みであることが分かる結果だと思います。
一方で働く障がい者の中には自分に自信が持てず、「正しい業務の進め方ができているのか」「自分は仕事で役に立てているのか」「成長できているのか」といった悩みを抱えている人が少なくないという印象です。(実のところはこれらも障がいの有無に関係なく働く上で誰もが遭遇する悩みだと思います)多くの障がいのある方たちと1on1をしてきた経験から、これまで送ってきた生活を通して自信を感じるような経験やできたことを評価してもらえるような体験をすることが少なかったことが理由のひとつだと考えられます。これまで日本における教育の場面では「良い面を評価する」「褒めて育てる」という文化があまり見られなかったため、自信を身につけにくい社会であると思います。
最近では、少しずつ「褒めて伸ばす」文化が浸透してきていると感じますが、教える立場の人間が評価される経験に乏しいため、もう少し時間が必要ではないかと思われます。

自信を身につけてもらうための方法として提案したいのは、自分が仕事を通じて出した成果を具体的に示し認識させるやり方です。
「自分は誰かの役に立てているのだろうか」「この仕事は自分でなくてもいいのではないか」と考える人がいたときに、日々の目の前にある業務を黙々とこなしていることに疑問や不安を感じることがあります。本来は、従業員それぞれが日々こなしている業務によって社内の様々な部署が円滑に動いていることを改めて伝える。また、業務により積み重ねた月日によって個人差はあるものの自身が成長していることを認識してもらうような働きかけを実施してみてはどうでしょうか。

下記に簡単な例を挙げてみました。

◯業務を通じた会社への役割・仕事による成果を説明

企業規模が小さな組織ではひとりの従業員が一連の業務を担当することもありますが、細分化された業務について各自が任された分野をこなしていく場合、「業務の全体像はどのようになっているのか」「その全体像のどの部分を自分は担当しているのか」「業務はどのようなゴールを迎えるのか」といったことが明確になることで、自分の働きや役割、成果が見えてきます。

「自分がこの業務で与えられた成果を上げることで取引先社に●社に貢献することができた」を認識することで仕事への意識・モチベーションを上げることができます。

◯年間の目標を一緒に立てる


担当する業務において目標を設定し、それをクリアしていくことは業務を通じて会社へ貢献する気持ちを醸成させます。目標を設定する際には上司との1on1の場が効果的です。
会社・職場があなたに期待していることをベースに自分が目指したいと思う目標を一緒に決めていくことが理想です。一緒に決めた目標はクリアすることで会社から認められた・評価されたことを表します。

◯設定した目標の進捗確認

設定された目標は定期的な時期に上司と一緒に進捗の確認を行うことが重要です。
目標設定で本人とのコミュニケーションが途絶えてしまうと、クリアへの意識が下がり、目標自体が希薄な存在となってしまいます。一度、目標への意識が希薄になってしまうとその後のリカバリーが大変になりますので、しっかりと伴走しながら定期的な進捗の確認を行なってください。

その際、目標をクリアする上での困りごとや相談を受けることもあります。それらを解決する案を一緒に考え、一人ではないこと、目標達成を応援している環境であることを認識してもらうことで、業務に対する意欲が高くなります。

◯目標達成と過去の自分との比較(成長の認識)


同じ業務を担当している同僚がいる場合、自分と比較してしまい「▲▲さんよりも自分は劣っている」となったり、逆に「★★さんは自分よりも仕事が遅いのに同じ給料に納得がいかない」というように他者に意識が向いてしまうことがあります。
自分が決めた目標に対してしっかりとフォーカスを当てることで他者ではなく、「自分に与えられたミッションをクリアするためには」を常に考えるようになります。
また、過去の自分と比較することで成長したことを認識します。例えば、「一年前は◯件/時間だった業務量が今は◯◯件/時間に増やすことができたね」といった形で成長度合いを数値などで提示することで認識が進みます。

前提としては本人との普段からのコミュニケーションと関係構築が重要だと考えます。しかし、これらが実行でき、本人の仕事に対して自信を持つことで主体的な考え方と行動が取れる人材へ成長してもらうことができます。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム