取材レポート:株式会社ディンプル「テレワークオフィス」(前編)

障害者雇用促進法により雇用義務のある企業(特に従業員数1,000人以上規模)が中心となり、毎年前年を上回る数の障がい者が企業に雇用されています。厚生労働省が公表した直近の統計データ(令和6年障がい者雇用状況の集計結果)では、67万人を超える障がい者が社会で活躍しています。

【参考】

「令和6年障害者雇用状況の集計結果」について(前編)

2025.01.07

「令和6年障害者雇用状況の集計結果」について(後編)

2025.01.14

一方で、雇用義務のある企業の障がい者雇用状況を見ると企業規模によって実績に格差が見られ、中小規模の企業では法定雇用率の達成割合が著しく低下しています。中小規模の企業で障がい者雇用が進んでいない原因としては様々なものが挙げられますが、ひとつには大企業に比べると、要員体制的なこともあり「障がい者雇用に関する取り組み」の優先順位が低いと感じています。

これまで大企業は法定雇用率の達成に加えて「社会的な課題解決の役割を担う」という視点から、障がい者雇用を積極的に取り組んできました。
その結果、障がい者の求人や雇用定着に関する取り組みを通じて「理解」「知識」「経験」を身につけたことにより、障がい者を取り巻く ”環境の変化” ”状況の変化” にも対応できているのだと感じます。
しかしながら、重い腰を上げこれから障がい者雇用に取り組む企業(主には中小企業)にとって、障がい者雇用の「今」を知らないケースが多く、どこから取り掛かればいいのか分からない、応募者が全く集まらない、と頭を抱える人事担当者・経営者が多い印象です。
これから障がい者雇用に取り組むのであれば「最初に超えるべきハードルは出来るだけ低くする」ことが良いと考えています。
また、近年は雇用する障がい者の特性も多様化していますため、先ほどの「理解」「知識」「経験」は将来にわたって重要になってきます。

今回ミルマガジンでは従来からある「サテライトオフィスによる障がい者のリモートワーク」とは違った『テレワークオフィス事業』を提供する株式会社ディンプルを取材しました。
同社が提供するこの事業では障がい者雇用の経験値が少ない企業にとって「導入時に感じるハードル」を下げる効果が見られます。
一方の障がい者にとっても高いと感じる「企業への就職」というハードルを超えるために、テレワークオフィスでの勤務から始め、実績を重ねることで社会人としての「自信と経験」を身につけるなどの人材育成を実践しています。

この『テレワークオフィス事業』について、同社の障害者雇用支援グループ グループ長の才川貴大氏とリーダーの田山亮氏のお二人にお話をうかがいました。

◯『テレワークオフィス事業』を始めたきっかけ・背景

《話・才川氏、田山氏》

当社は「障がいのある方の活躍の場を広げたい」という強い想いがある中、障がいのある方に特化した人材紹介サービスを立ち上げ、このサービスを通じて多くの障がい者の就職・転職支援を行ってまいりました。
しかしながら、人材紹介サービスを提供するなかで、多くの企業担当者様から以下のような課題やお悩みの声を耳にしました。

  • 障がい者雇用を検討しているが、具体的な進め方が分からない。
  • 障がいのある方の能力を活かせる業務を見つけることができない。
  • 現場の受け入れ準備に手が回らず、また現場の従業員の協力も得られにくい。

このような課題を解決することが、「障がいのある方の更なる活躍の場を広げる」ことに繋がると考え、「採用する前の受け入れ準備から、採用した後の定着支援まで」をワンストップでサポートできる『テレワークオフィス事業』を開始しました。

『テレワークオフィス事業』では、サテライトオフィスに見られるような複数名が勤務できる部屋の貸し出しではなく、広い執務スペースにひとつずつ間仕切りで区切られたデスクを設置し、そのデスクにてお仕事に従事するスタイルとなっています。

間仕切りのあるデスクは、企業が雇用する障がい者の「リモートワーク場所」という位置付けです。
テレワークオフィスで障がい者が従事する仕事は、雇用先企業で準備していただきますが、中には障がい者に任せる業務に困っている企業も存在します。
そのような企業に対して、当社は「採用する前の受け入れ準備」のひとつとして、業務内容の設計と人物要件の設定などのご支援をしております。

障がい者の中には「毎日、会社に通勤する」「会社の人と、上司と、会話をする」といったことに対してハードルが高いと感じている方も存在します。
テレワークオフィスは雇用先企業の仕事に従事しながら、業務経験を蓄積しながら、自分自身の「障がい特性」に関する自己理解やセルフマネジメントを身につけることができます。
仕事内容や自分自身の役割に対して少しずつ理解を深め、少しずつ実務をこなし、企業や組織に貢献していると実感してもらうことが、職場定着の実現に繋がっていくと考えています。

次回に続く

株式会社ディンプル
本社:大阪市北区梅田1-11-4 大阪駅前第4ビル22階
URL:https://www.dimples.co.jp/
https://www.dimples.co.jp/client/service/challenge/(障害者の雇用/定着支援サービス)

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム