助成金を知る『発達障がい者・難治性疾患患者雇用開発コース(特定求職者雇用開発助成金)』

当コラムをご覧いただいている人事担当者や障害者雇用に携わっている皆さんは、「障がい者の採用や雇用定着の後押しとなる助成金制度」のひとつに、「障がいの診断しかもらってない方の雇い入れでも受給できる助成金」があるのをご存知でしょうか。

ちょっとややこしいですね。法律で定められている一般的な障害者雇用関連で受給できる助成金というのは、「雇用の対象となる方が障がい者手帳を取得した人」でなければ対象とはなりません。

ところが、今回ご紹介する助成制度は、障がい者手帳を持っていなくても、医療機関で「障がい者としての診断」を証明されている方であれば、雇用時に助成金支給の対象となるというものです。

それは、『発達障がい者・難治性疾患患者雇用開発コース』というものです。 名称の通り、この助成金は「発達障がい者(「発達障がい」としての診断を受けたが、様々な理由で障がい者手帳を取得していない方。もしくは、手帳取得を予定している方)」と「難治性疾患患者(難病)」の指定を受けた方たちの雇い入れが対象となります。

補足として、この「難治性疾患患者」の指定を受けた方たちですが、現在の日本の法律では「難治性疾患患者」の指定を受けただけでは、障がい者として認知されたことにはなりません。「難病」になってしまったことで、日常生活をおくる上で不自由な部分があると認識をされた時に初めて障がい者としての認知をされることになります。例えば、「〇〇」という難病になってしまった結果、両手の機能が失われてしまったので「両上肢機能障がい」として障がい者認定を受けることになる。ということです。

発達障がい者・難治性疾患患者雇用開発コースとは

『特定求職者雇用開発助成金 発達障がい者・難治性疾患患者雇用開発コース』

【概要】この制度は、障がい者手帳の取得に関係なく、日常生活の不便や不自由が原因で就職が困難であったり、周囲の方たちと同じように働き続けることができなかったりする人たちがたくさんいます。一方で雇い入れの検討をしている企業が、そういう人たちを採用の対象とするために活用してもらう助成制度です。

【詳細】

管轄:各地域の労働局

条件:① ハローワークからの雇い入れ ② 雇用保険適用事業所の事業主 ③ 過去に不正受給などをしていない事業主

支給額:
《短時間労働者以外(週の労働時間が30時間以上)の雇い入れ》
・大企業は「50万円(1年間・第一期25万円 第二期25万円)」
・中小企業は「135万円(1年6ヶ月・第一期45万円 第二期45万円 第三期45万円)」
《短時間労働者(週の労働時間が20時間以上30時間未満)の雇い入れ》
・大企業は「30万円(1年間・第一期15万円 第二期15万円)」
・中小企業は「90万円(1年6ヶ月・第一期30万円 第二期30万円 第三期30万円)」

注意点:下記に該当する場合は支給を受けることができません。

  1.  起算日を挟んで前後6ヶ月の間で会社都合による退職者がいる場合
  2.  過去3年間に自社で働いた経験のある人材の場合
  3.  代表者などの3親等以内の障がい者を雇用する場合  など

また、受給を検討される際は所管の労働局へ問合せしてください。

厚生労働省HP  「特定求職者雇用開発助成金 発達障がい者・難治性疾患患者雇用開発コース」のご案内

発達障がい者・難治性疾患患者雇用開発コースを活用すべき企業とは

① 法定雇用率を達成している

今回ご紹介している助成金制度は「障がい者だが手帳を持っていない人材」の雇い入れをしたときに受給できるものです。その特徴を考えると、現時点で法定雇用率を満たしている企業が、ハンディキャップが原因で就職ができない人材の求人を検討した際に使用する際にメリットがあるのではないかと考えます。

と言っても、法定雇用率を満たしていない企業であっても活用するメリットは十分にあるのですが、人事担当者としては不足分を納付金(罰金)として支払っている状態なため、カウントに含まれる方の採用を進めたいと考えるはずですから。

② 発達障がい者・難治性疾患患者の雇い入れ経験がない

障がい者の求人活動を続けていくと、採用の階段を上がっていくことが求められてくると思います。例えば、初めは「身体障がい者」の雇用からスタートし、次に「知的障がい者」や「精神障がい者」。または、「軽度の障がい」から「中度の障がい」・「重度の障がい」へと雇用対象者が変化していきます。

特に、「多くの従業員を抱える大企業」や「企業が集中する都心部」では、利点がある一方で、その利点が求人の邪魔をしてしまうこともあります。その場合、これまで雇い入れの対象としてこなかった「発達障がい者」や「難治性疾患患者」の雇用も視野に入れている時期が必ずやってきます。まして、今後は法定雇用率の引き上げが更に続き義務感も煽られてきます。雇用環境が満たされてくると障がい者の職場定着につながるので、求職活動をする人材の数も限られてくることが予想されます。 そのような時にこの助成金制度の活用が有効となります。

発達障がい者・難治性疾患患者雇用開発コースのポイント

この『発達障がい者・難治性疾患患者雇用開発コース』は、対象となる「発達障がい者」や「難治性疾患患者」の社会進出や企業理解が十分でない今だから活用できる助成制度ではないかと考えます。

もし今後、これら人材の雇用が思うように進まない場合、雇用義務化といったことも考えられます。

当ミルマガジンでは、なるべく分かりやすく解説をするつもりですが、受給を検討される際は必ず管轄の労働局や各種助成制度の窓口に問合せしてください。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム