「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」について③100人以下の納付金対象について

今回も『今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会』に関するコラムになります。
今回取り上げたのは中小企業の経営者にとって関心ごととなる「障がい者雇用納付金の納付義務の適用範囲を常用労働者数が100人以下の事業主へ拡大すること」です。

「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」について①障がい者雇用の質(前編)

2026.02.24

「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」について①障がい者雇用の質(後編)

2026.03.03

「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」について②難病・精神障がい者の雇用(前編)

2026.03.10

「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」について②難病・精神障がい者の雇用(後編)

2026.03.17

【要約】障がい者雇用納付金制度の適用範囲拡大について

現在、常用労働者数101人以上の企業に課されている「障がい者雇用納付金」の納付義務を、100人以下の事業主へも段階的に拡大することが検討されています。報告書では、中小企業における雇用機会の創出と、企業間の経済的負担の公平性を図ることを目的としています。

具体的には、100人以下の企業であっても法定雇用率に未達の場合、不足人数に応じた納付金が徴収される一方、達成企業には調整金や報奨金が支給される仕組みです。拡大にあたっては、中小企業の事務負担や経営への影響を考慮し、十分な準備期間の確保や、相談支援体制の強化をセットで進めるべきだと提言されています。

変わる中小企業の障がい者雇用〜100人以下への納付金拡大をどう見るか〜


厚生労働省が発表する「障がい者雇用状況の集計結果」を俯瞰すると、障がい者の雇用者数は毎年前年を上回るペースで伸び続けています。しかし、その一方で法定雇用率の達成割合は、全企業の半数を下回る状況が依然として続いています。この「法定雇用率未達成」の傾向は、企業規模が小さいグループほど顕著に現われます。特に今回対象となる常用雇用労働者数100人以下の層は、障がい者雇用の義務がある企業の中で最も数(37,525社)が多く、かつ達成割合も芳しくありません。また、この層では障がい者の雇用が「0.5名」あるいは「1名」もできていない企業が30,000社以上にのぼります。
裏を返せば、この層の半数の企業が、わずか「1名」の障がい者を雇用するだけで日本全体の達成割合は劇的に改善されるということです。この膨大な「未着手の領域」にメスを入れるのが、今回の納付金拡大の真の狙いと言えるでしょう。

ポイント1:少子高齢化時代における「視点の転換」と社会的責任

報告書案では、納付金制度の目的を次のように記しています。
「障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図るとともに、全体としての障害者の雇用水準を高くすることを目的としている」

現在の労働市場は、少子高齢化に伴う働き手の確保が極めて困難な状況にあります。人材を募集しても集まらないと嘆きながら時間を浪費するよりも、雇用のスタイルを見直し、新たな分野に目を向ける視点を持つことこそが、組織を継続させる鍵となります。
従来通りの雇用条件や働き方に固執せず、見直す工夫さえあれば、障がいのある人材の活躍の場は必ず増えます。ICTを導入し、障がいゆえに「できない部分」を補完することもそのひとつです。また、私は「納付金を払えば済む」という考えや行為が、周囲から見たときに「恥ずべき行為である」という感覚が社会に醸成されてほしいと切に願っています。仮に納付金を支払えばいいという考えを良しとしているならば、それは決して免罪符ではなく、多様な人材を活かす努力を放棄している証明であると感じていただきたい。

ポイント2:単なる「数合わせ」ではない、戦力としての活用

障がい者雇用により「負担が大きい」「お願いする仕事がない」という反対意見は常套句ですが、今の時代であればデジタルツールの活用や業務の見直しによって、障がい者の戦力化は十分可能です。真の問題はそこではありません。

企業規模に関係なく重要なのは、雇用を単なる「数合わせ」にしないことです。障がいのある人材が、企業にとって不可欠な「戦力」となり得ることを認識しなければなりません。事業を進める上で困っている課題の改善策として、障がい者の労働力を活用する。仕事で活躍し、必要とされる存在になることで、彼らは自身の存在価値を証明できるのです。事業主としてはその点を認識するところから始めてほしいと感じます。

ポイント3:「投資」としての障がい者雇用と、伴走型サポート

障がい者雇用が進まない原因の多くは「知らないこと」による不安です。そのため、最初は自社だけで完結させようとせず、外部の専門家に伴走してもらい、自社に適した雇用の方法に気づかせてもらうサポート役が必要だと考えます。
確かに、活用の初期段階は時間や労力が削られる「投資の期間」となります。しかし、障がい者の戦力化を身につけた企業は、人材確保が困難なこの時代において、労働力に困らない強固な組織を構築できます。従来の固定観念を捨て、柔軟な視点を持つことができれば、人材難の荒波を乗り越える大きな力となるはずです。

最後に。研究会の報告書が100人以下の企業にまで納付金を拡大しようとしている今、私がひとつ気になることがあります。それは、経営基盤の弱い中小企業から徴収された納付金が、そのまま大企業の雇用調整金(達成企業への報酬)の原資として充当されてしまうという構図です。徴収された資金は、中小企業自身の雇用環境整備や、ICT導入支援の充実に優先的な形で使ってもらいたいと考えます。
100人以下の企業の経営者や担当者には、仮に納付金の対象企業となったとしても「取られるお金」と嘆くのではなく、自社を「多様な人材が輝く組織」へアップデートするための投資だと捉え直してほしいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム