現在、国内は2020年から広がり始めた新型コロナウイルスにより、2年が経過しても経済・社会生活は制限のある行動を求められ、情勢が沈静化する兆しが今ひとつ感じられない状況が続いています。
その一方で、新型コロナウイルスと共存するための新しい生活スタイルに変化・順応していく姿は、間違いなく我々が前進していることを表しています。
2021年末に厚生労働省から公表されました「令和3年障害者雇用状況の集計結果」では、経済活動が厳しいコロナ禍にもかかわらず企業における障がい者の雇用実数が前年よりも約20,000人増の597,786.0人となり、18年連続で過去最高の実績となりました。
企業にとって障がい者雇用とは、国が定めた法律に基づいて課せられた義務(障がい者法定雇用率)を達成する法令遵守が大前提ではあるものの、社会的役割・D&Iという考え方・ESGなど、企業評価に直結する側面としての捉え方もあります。
しかし、それらに加えて、企業にとって障がい者雇用に対する考え方が、「昔に比べて特別なことではなくなりつつある」ように感じられます。理由は、各企業から出される障がい者求人は数を大幅に減らすことなく、ハローワークや人材会社に存在し、このような状況だからこそ積極的な採用を進めている企業が少なくないからです。
また、在職者の転職を含め求職を希望する障がい者も少なくありませんので、障がい者を採用したい企業の人事担当者にとっては業務に適性な人材を確保するチャンスとも言えます。
18年連続で障がい者の雇用実数が過去最高を更新できたのは企業努力による成果だと感じます。「障害者雇用状況の集計結果」では、障がい者の雇用実数だけではなく、各障がい特性ごとの雇用数や割合、産業別の雇用実績なども毎年公表されていますので、過去の公表データを遡って数値の変化などを見ることもできます。
公表データの中にある「企業規模ごとの法定雇用率の達成割合(法定雇用率2.3%を達成している企業の割合)」に目を通すと、50%を超えているのは従業員数1,000人以上の企業が最も高くて55.9%、次いで従業員数100〜300人未満の企業が50.6%となり、他の企業規模は50%に満たない達成割合となっています。
- 43.5~45.5人未満(2,657社中929社が達成) : 35.1%
- 45.5~100人未満(52,219社中23,855社が達成) : 45.7%(前年45.9%)
- 100~300人未満(36,803社中18,614社が達成) : 50.6%(前年52.4%)
- 300~500人未満(6,983社中2,911社が達成) : 41.7%(前年44.1%)
- 500~1,000人未満(4,810社中2,063社が達成) : 42.9%(前年46.7%)
- 1,000人以上(3,452社中1,931社が達成) : 55.9%(前年60.6%)
ちなみに、法定雇用率未達成企業56,618社のうち、障がい者を1人も雇用していない企業(0人雇用企業)は32,644社であり、未達成企業に占める割合は57.7%となっている状況です。
上記が直近の雇用状況になりますが、平成20年の障害者雇用状況のデータを見てみると、この頃に最も高い達成割合だったのは従業員数100〜299人以下の企業規模の45.7%でした。令和3年で最も高かった従業員数1,000人以上の企業の法定雇用率の達成割合は43.5%で、決して高い値ではありません。
※当時の法定雇用率は1.8%
- 56~99人以下(27,519社中12,350社が達成) : 44.9%(前年44.8%)
- 100~299人以下(32,634社中14,902社が達成) : 45.7%(前年44.4%)
- 300〜499人以下(5,957社中2,594社が達成) : 43.5%(前年40.8%)
- 500〜900人以下(4,106社中1,718社が達成) : 41.8%(前年40.4%)
- 1,000人以上(2,826社中1,239社が達成) : 43.5%(前年40.1%)
平成20年の雇用状況と比較してみると、従業員数1,000人以上の各企業はこの期間に障がい者の雇用を大幅に進めてきたことが分かります。
それら大企業が障がい者の雇用に取り組むことで、障がい者の労働力としての活躍が様々な形で取り上げられることも増えたため、障がい者雇用が広く知られる活動になったのだと考えられます。そういう意味では大企業が障がい者雇用に取り組むことでこれまでの成果につながる役割であったと思います。
それでは、中小企業が取り組む障がい者雇用にはどのような役割が求められているのでしょうか。
「中小企業が取り組む障がい者雇用の役割について②」に続く