Q&A:障害者雇用を進めるには何からすればいいの?[3/3]

Q&A:障害者雇用を進めるには何からすればいいの?[1/3]

2017.12.15

Q&A:障害者雇用を進めるには何からすればいいの?[2/3]

2017.12.19

前々回と前回で、障害者雇用を始める上で注意する点を含めた「障がい者の雇用定着」までのステップ、6つのステージ①~④までをお話ししました。今回は残りの⑤と⑥についてお話ししましょう。

⑤ 情報共有

障害者雇用の失敗談でよく聞かれる理由のひとつとして、配属される障がい者の情報共有がされておらず、本来受けることができるはずの配慮がなかったために止む無く退職してしまったというものがあります。

障がい者枠としての雇用を希望する障がい者は、基本的には自分の情報が職場に共有されていると思っています。これは、職場での配慮を必要としており、周囲の認知があるところでの雇用を望んでいるからなのですが、正式採用後に出社してみたら、自分が必要とする配慮を周囲の誰も知らなかった。周囲も驚くが、それ以上に自分のことを事前に職場へ周知してもらっていなかったことへのショックで、会社への信頼度は初日から急降下となってしまいます。

この「情報共有」を実施する場合のポイントをいくつかお話しします。

「情報共有」には2つの配慮があります。まずひとつは「本人への配慮」という考え方。職場で一緒に働く従業員の方たちが自分の障がいについての「情報共有」がされていることで、“仕事で成果を上げる”“安心感が生まれる”“困った時に「困りました」と言える環境”ができる事で障がい者が長く働き続ける土壌となります。

もうひとつは「周囲への配慮」という考え方。配属される予定の障がい者に関する「情報共有」が周囲の従業員にとって、“しっかりとした情報が安心感となる”“一緒に働くことへの心の準備となる”“過剰なストレスを抱えない”という働きとなります。

障害者雇用の場合、障がい者本人への気配りについての議論が多いのですが、一緒に働く従業員についてもしっかりとした気配りを考えることが重要です。

また、「情報共有」には注意点があります。

「情報共有」はプライバシーな内容となりますから、事前に本人からの承諾を得ておく必要があります。

・部署のどの範囲の従業員まで共有するのか。

・障がいの特性や特徴をどの程度つたえるのか。

といった点は確認してください。

ここで障がいの「特性」と「特徴」という言い方をしているのですが、これは私が区別するために使用しています。

「特性」とは、障がいの種別のことを指しています。例えば、「身体障がい → 上肢、聴覚、内臓疾患など」「精神障がい → 双極性障がい、発達障がいなど」

「特徴」とは、障がい者個々に見られる症状や状態のことを指しています。例えば、「下肢障がい → 自力歩行が困難。階段の昇降が可能。」「発達障がい → 優先順位が立てられない。情報伝達は視覚優位。」

⑥ 雇用後のケア

最後は『雇用後のケア』になります。

障がい者の雇用は採用が目的ではなく、職場定着させることに重点を置きます。

障がい者の雇用を職場定着まで考えると、配属後のフォローにも気を配る取組みが必要となります。

こちらも前項「⑤『情報共有』」と同様の考えとしてあります、「障がい者本人」と「一緒に働く周囲の従業員」両者にとって、安心できる職場環境作りにつながる働きかけです。

ここで実施していただくのは「面談」です。採用したばかりの障がい者をケアするために定期的な面談の実施というのはよく聞くお話しです。これはとても大事な働きかけで、下記のような点で有効です。

・本人が希望する配慮が実施できているかの確認

・会社側が気に掛けているということを感じてもらう(ほったらかしにしない)

・入社当初はコミュニケーションを図る意味合いも

雇用が始まり、特に目立った問題なども発生しなければ、障がい者のことを気に掛けなくなってくるものです。他の方法で本人のフォローが図れているのであればいいのですが、気付かぬうちに問題が蓄積されていては大変です。特に最初はその方の特徴を理解する意味でも、こまめにコミュニケーションを取っていただきたいと思います。

もうひとつ、周囲の従業員に対しても面談を実施してください。これは、障がい者の方のように1ヶ月に1回のペースで実施しなくても構いません。目的は、周囲から見て問題なく働いてもらっているかの確認と周囲へのフォローです。具体的には下記のような点が挙げられます。

・障がい者の受入れによって想定以上の負荷が掛かっていないか

・本人の状態と周囲の感覚にズレが見られないか

・継続した協力体制の実施(他人事として捉えないで)

障がい者を受け入れるに際して、職場には事前の準備を実施します。本人の持つ特徴をベースとした配慮の方法やコミュニケーションなどを従業員間で共有するのですが、想定していた以上に周囲に負荷が掛かってしまっては大変です。その場合、早い段階で見直しを掛けることも必要でしょう。障がい者を受け入れて、周囲が疲弊してしまっては元も子もなくなってしまいます。

また、周囲との面談で得られる情報もあります。例えば、本人との面談では「問題がない。」という返事であっても、周囲との面談で「辛そうにしている。」「お昼の休憩時、ふさぎ込んでいる。」といった状態が見られるなどの報告があれば、早急に確認と対処を取る必要が出てきます。

あと、周囲の従業員の中には「自分には関係がない。」といった他人事のような振る舞いをする人たちが出てくることも考えられます。会社側から無理強いをする必要はありませんが、一緒に働く仲間ですから、困った時に知らん顔をしないように職場のマネジメントを図っていただきたいと思います。

いかがでしたでしょうか。3回に渡って障がい者の受入れ準備から雇用定着までをお話ししました。もっと詳細な点もありますが、先ずは今回のコラムでイメージを掴んでもらってから、進めてもらえると前進すると思います。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム