日本では「障がい者基本法」という法律によって障がいを持つ人たちの人権や社会生活に関する様々なことが定義されています。
「障がい者基本法」
第一条
この法律は、全ての国民が、障がいの有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり、全ての国民が、障がいの有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障がい者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障がい者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障がい者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。
上記「総則」では、人が障がいの有無が原因で自立や社会参加を邪魔されないよう、国や各地域では施策に基づいてより良い生活を送るための支援を提供します。というようなことが記載されており、障がいを持っていても不自由なく暮らせる世の中を構築するということを法律で定めています。
障がいを持つ方たちが抱える日常の「不便」というものを考えた時、個人差も重なり周囲からするとその「不便」さを理解するというのはとても難しく感じてしまいます。しかし、その「不便」を解消するツールやサービスというのは、障がい者にとっては豊かな生活を送るための大事な存在となります。
私たちが普段何気なく活用しているスマートフォン。携帯電話が普及した当時から比べると大きく進歩したお陰で、「コレがない生活なんて考えられない」くらい必需品としての地位を獲得したツールのひとつではないでしょうか。(携帯電話のない時代の待ち合わせって、今考えてみると凄かったなぁと感じます)スマートフォンは障がいを持つ方たちにとっても日常生活を便利にしてくれるツールです。しかし、障がいの特性によっては使用方法に制限が出てしまい、最大限の効果が得られなくなってしまいます。
そのような状況を少しでも解消するため、携帯電話会社であるNTTドコモさんでは、「すべてのひとにとって使いやすい製品やサービスを追求」することを活動目的とする『ハーティスタイル』の取り組みを進めています。この『ハーティスタイル』とは、ユニバーサルデザインの考え方に基づき、「製品・サービス開発」「お客様窓口」「使い方の普及」の3つの視点から、すべてのひとに今まで以上にスマートフォン・携帯電話を使って快適な生活を送ってもらおうという活動です。
こちらの活動の中で、障がいの特性が原因でスマートフォンの操作に制限がある方を対象にしたアプリやサービスを提供されています。
今回は、NTTドコモさんのご協力のもと、障がいを持つ方たちにもより一層スマートフォンを便利に活用いただくためのサービスをご紹介いたします。
便利なスマホの文字入力アプリ『Move&Flick』
対象:視覚障がい者
視力に問題を抱えている方にとってスマートフォンでの文字入力には不便な時があります。例えば、ガラケーでの文字入力の場合、真ん中の「5」のキーには指で触れた時に分かるようにポッチが付いていましたが、スマートフォンでは凹凸のないガラス面しかありません。そのため、入力したい文字の位置を把握することが困難となってしまいます。
しかし、この「Move&Flick」があれば、文字の配列を気にせず入力をすることができます。画面をタップした位置を中心に文字入力サークルが表示され、画面に触れたままの状態から指を動かすと文字の入力が完了します。その際、音声での読み上げてくれますので、どの文字が入力されようとしているのかもわかるようになっています。
「聞き取れない」不安をなくして、あんしん通話『みえる電話』
対象:聴覚障がい者
当然ですが、電話での通話はお互いの言葉の伝達によって成立します。仮にひとりが聴覚障がい者で、その相手が健常者だった場合、この『みえる電話』を使うことで両者がコミュニケーションを取ることができます。このアプリでは、通話相手となる健常者の音声をリアルタイムで文字に変換しスマートフォンの画面を通して聴覚障がい者へ伝えることができます。また、通話相手には聴覚障がい者が文字入力した言葉を音声に変換して伝えてくれます。
実際に操作していただきましたが、言葉が文字に変換される動作がとてもスムーズで、誤変換もほとんどなく想像していた以上に聴覚障がいを持つ方とのコミュニケーションに対応したサービスです。
このサービスは、「お店の予約や変更」「宅配便の受け取り」「カスタマーセンターへの問合せ」などの利用シーンを想定して開発されていますので、聴覚障がい者がこれまで不便に感じていた場面でも安心してご利用いただけます。
※『みえる電話』は2018年10月現在トライアルサービスのため、機能に一部制限がございます。詳しくはホームページをご確認ください。
すっきり画面で正しく操作『シンプルフリック』
対象:上肢障がい者
上肢や指に障がいがある方にとってはスマートフォンの画面操作に不便を感じることがあります。そんなときにこの『シンプルフリック』を使うことで簡単に電話やメールを操作することができます。
基本的な操作方法は3つのモード(「2フリックモード」「フリック&ダブルタップモード」「音声操作」)から選んでいただくのですが、どれも簡単な操作方法になりますので障がいを持っていない方々にとっても大変便利なアプリになっています。
障がい者の立場を理解できるからこそ生まれたサービス
今回の取材ではこれらの製品・サービスの企画に携わってこられましたNTTドコモ スマートライフ推進部 コミュニケーションサービス担当の青木さんからお話を聞かせていただきました。
実は青木さんご自身も生まれつき聴覚に障がいを持っており、日常生活においての不便さを強く感じているおひとりでした。例えば、学生時代にアルバイトの応募にも自分では電話することができないので母親が代わりに電話をしたり、入社後も自分あてに掛かってくる電話に出ることができずもどかしいと感じる経験がありました。そのような中、入社3年目に言葉を文字に変換する技術があることを知り興味を持った青木さんはサービス提供の部署への異動希望を出し、これら製品・サービスに関わってこられました。
青木さんがサービスの企画で気を付けている点は、同じ障がいを持つ方でもそれぞれの特徴が違うため多くの意見を参考にしているということでした。その一方で「多くの意見を反映させていく難しさ」「障がい者の立場になって製品化する難しさ」といった苦労もあるのですが、強いやりがいを持って仕事に励んでいらっしゃいます。
最後に青木さんから「今回ご紹介したサービスは、障がい者はもちろんのこと障がいを持っていない皆さんにも広く知っていただき、活用してもらいたいと思っています。」というメッセージをいただきました。確かに、それぞれのサービスは特定の障がい者の不便を解消するために企画・開発されたものですが、利用シーンや使用する方の特徴によっては、想定している障がい者でなくても不便を解消できるのではないかと感じます。
これからも、新たな製品やサービスを開発し、提供することで多くのみなさんの生活を便利なものにしていただけるということです。
障がい者を応援する私にとって楽しくさせてくれる取材でした。
NTTドコモのみなさん、ご協力ありがとうございました。