【Q&A】障がい者採用で初めての就労移行支援事業所の活用メリット

【Q】
企業の人事で採用担当をしています。
障がい者の就労移行支援事業所のことでご質問です。
これまで、障がい者の求人募集では人材会社を使用してきました。今後は求人先の幅を広げたいと考え、調べてみたところ就労移行支援事業所を知りました。
でも詳しいことが分からず、初めて就労移行支援事業所を活用する上で人材会社との違いやメリットが知りたいと思っています。
よろしくお願いします。
《食品会社、従業員数約600名、人事担当者》

【A】

ご相談ありがとうございます。
現在の障がい者雇用は新型コロナウイルスにより採用までのプロセスが見直され、企業内実習が減少するなど、全体的には停滞傾向にあります。しかし、コロナがまん延し始めた2020年ごろに想定していた障がい者雇用への影響よりも幾分か持ちこたえたように感じられ、令和3年の障がい者雇用実数は前年を上回る結果となりました。
おそらくですが、企業の障がい者求人や採用活動も徐々に回復してくることが考えられます。そのため、今回のご相談者のように今のうちから障がい者の求人先を広げる活動は重要になってきます

普段、私が支援している企業が障がい者の求人活動を進める際、就労移行支援事業所などの障がい者就労支援福祉サービスを活用した人材採用を導入していただいています。もちろん就労移行支援事業所を活用するメリットがいくつかありますので、人材会社と比較しながらご紹介したいと思います。

人材を何人採用しても無料!


最近は障がい者の人材紹介に特化した人材会社も増えてきました。私のまわりでも人材会社から紹介された障がい者を採用する企業が増えてきています。もちろん人材会社は人材を紹介して採用してもらうことが目的ですので、企業は採用が決定した場合には一定の紹介手数料を支払う義務があります。

一方で就労移行支援事業所ですが、紹介された人材の採用が決まっても紹介手数料などの費用は掛かりません。複数名の障がい者採用が必要な場合、人材会社からの採用であれば採用人数ごとに紹介手数料が発生しますので、採用コストもばかになりません。
その点からみてもメリットは大きいですし、障がい特性に関する知識や経験をもとにした人材提案がありますので経験値の高くない企業であっても安心して採用を進めることができます。

専門的な立場で企業をサポート

就労移行支援事業所のような障がい者就労支援福祉サービスは地域の行政機関(厚生労働省管轄)からの許認可をもとに事業所を開設する障がい者就労の専門機関になります。
主な目的は自立や社会参加を目指す障がい者が通所しながら職業訓練や自立に向けた生活に必要な知識や経験を身に着ける場となっています。また、障がい者が就職するためのサポートの一環として企業と関係を構築し、社会経験のひとつである企業実習の受け入れや求人の相談にも対応しています。

地域により事業所数に変動がありますが、先ずは近隣にある就労移行支援事業所を探してみましょう。
複数の事業所がある場合は、それぞれに強みや特徴がありますので話を聞かせてもらったり、事業所の見学に行ってください。また、就労移行支援事業所がない地域であれば就労継続支援B型事業所でも企業の求人相談に対応してくれるところがありますので、最初は話しを聞くところから始めてみましょう
求人相談と同時に「障がい者雇用状況」「これまでの採用ルート」「障がい者雇用で解消したい課題」などもお話しすることで、採用プロセスや企業実習の提案、活用できる助成金など、これからの採用活動に必要なアドバイスとサポートを実施してもらえます。

特に企業実習は従業員の障がい特性への理解促進や業務の切り出しに大きな効果があり、何より雇用のミスマッチを低減させてくれるところが最大のメリットです。

採用後もしっかりと職場をフォロー


人材会社からの採用では、雇用がスタートすると職場や本人への定着に関するサポートというものはほとんどありません。障がい者雇用の経験が少ない企業であれば、受け入れた職場の担当者はもちろんはたらく障がい者にとっても不安に感じることが少なくありません。

こういった時、就労移行支援事業所からの採用であれば就職後6ヶ月間は「定着支援」として、職場と本人の両方に対して定着サポートを実施してくれます。
仮に企業実習を経てからの採用であっても、経験値の高くない企業であれば「体調を崩さずにはたらけるだろうか」「どのようにしてコミュニケーションを取ればいいだろう」「特性を活かせる仕事は何だろう」といった職場で発生する疑問や問題にもこれまでの支援を通して把握している本人の特性をもとにした答えを提示してくれます。また、障がい者本人に対しても不安に感じていることがあれば、具体的なアドバイスのもと成長につながるような導き方を実施してくれますので、心強い存在ではないでしょうか。
また、6ヶ月の定着支援機関が終了しても、「定着支援事業」というサービスの許認可を受けている事業所であれば継続して支援に入ってもらうことが可能です。

これから障がい者の採用を進める予定の企業は、就労移行支援事業所の活用もご検討ください。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム