第2回「大学に見る発達障害を持つ学生への支援について」

前回では、発達障害を持つ大学生と大学側の現状をお伝えしました。

今回はより具体的な問題点と大学に求める支援のこれからをお話ししたいと思います。

大学が発達障害を持つ学生への支援として挙げられる問題点のひとつが、「専門性のある支援体制の不足」があります。例えば、数年前から大学の学部ごとに設置されていることがある事務室には「授業のある教室の場所が覚えられない」「掲示板やモニターから発信される情報が認知できない」などの相談に来る学生への対応が増えたという声を聞きます。初めて聞いたときにはピンと来なかったのですが、発達障害の特徴を持つ人であれば、考えられるような相談だと思いました。

こういった相談に対しては、比較的軽い内容なので事務室が個々の対応で処理できているようなのですが、成績や進路につながってくる相談については各大学で対応策が違っているのが現状のようです。

学生生活の過ごし方や就職活動に準備するべきことなどはある程度のところまで導いておけば、学生たち自身で自然に進むことができたので、これまで大学としては求められてこなかった部分の支援(上記のような)を現在では必要とされています。

発達障害を持つ学生は、一般の学生と比べて社会経験を積む機会が少ないといわれています。例えば、学生時代の社会経験といえばアルバイトが思い浮かびます。その中でも多いのは接客などのサービス業ではないでしょうか。将来、接客関係の業界に進まなくてもサービス業の経験というのは、コミュニケーション力や場の空気を読む力など、社会人になった時に役立つ能力を育てるいい機会となります。

ただ、発達障害の特徴からすると、コミュニケーション力も場の空気を読む力も苦手とする部分なために、トライするが長続きせず学生の間はほとんどアルバイトをしたことがないという学生が多いのです。

現在の大学は、発達障害を持つ学生の存在を認知するようになってきたのですが、入学後の具体的な支援体制を敷いているところがまだまだ少ないという状況です。そのため、卒業後の進路となる就職につなげられないといった点も見られます。一般の学生とは違い、上記のようにアルバイト経験もほとんどないために挨拶ができなかったり、履歴書の準備もサポートしてあげないといけない学生もいます。

大学が本来求められている範囲から逸脱していることなのかもしれませんが、入学した生徒が求めている支援なのであれば、提供していくことを考えていかないといけないのかもしれません。

それでは、大学に求められるこれからの支援のかたちはどのようなモノでしょうか。

「学生の希望」と「企業のニーズ」がマッチすれば、障害の有無に関わらず進路は見つけられると思っています。

「企業のニーズ」としては、発達障害を持っていても働くために必要なマナーやスキルを身に付けていることが採用する条件のひとつになってきます。現状と比べると、大学では働くために必要なマナーやスキルの習得は概ね学生本人に任せている状態です。これでは、発達障害を持つ学生にとっては放置されているのと同じ状況です。

非常に厳しい言い方になりますが、生徒たちは大学が設けた試験をクリアしてきた人たちです。彼ら彼女たちが学生生活やその先の進路のことを考えた時に何らかの支援を必要としているのであれば、サポートすることが大学の役目ではないかと考えます。

これまで大学とは、義務教育や高等学校と違って“自分のことは自分で”という自主性の部分が強く、より社会に近い形で教育を受ける場でした。しかし、現在は少子化問題や大学生き残りの時代といわれ、多様な人たちも学生として受け入れるようになってきました。

受入れた責任というのは、最後まで面倒を見るということではないでしょうか。

障害者の就労系福祉事業所は、利用者の就職先となる企業のことを知る努力をしています。少しでも企業の文化やニーズを捉えることで利用者の職業訓練につなげるようにしています。大学は学生たちの進路となる企業のことを知る努力をどこまでしているのでしょうか。障害者の就職を考えた時に企業との連携を強くすることはこれから求められる形だと考えます。

また大学というのは、一般の企業と違い色々な制約があると聞いていますから、簡単に学外の専門機関連携を取るのは難しいのでしょう。しかし、今ある事実を見ても制約だからといえるのでしょうか。外部には優秀な専門機関がたくさんできており、就職先となる企業のことをよく知っているので、適切なアドバイスをしてもらえます。そういった専門機関とパイプを作り、大学独自の支援体制を構築すれば本人やご家族が安心して受験されるのではないでしょうか。

付け加えるなら、社会生活に必要なスキルやマナーを教えるためのカリキュラムが必要だと感じます。

昔から大学というのは、社会から見て閉鎖的な世界という風に見えます。それも、時代に合わせて変化を求められるのではないでしょうか。

ある特徴を持った学生が助けを求めています。自主性だけを重んじるのではなくて、手を差し伸べることも教えるべきではないでしょうか。

この大学に関することはまだまだお話ししたいことがありますので、また別の機会にコラムとしてお伝えします。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (イルネス障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・採用コーディネート、また障害者人材を活用した事業に関するアドバイスを実施。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。講演のご依頼や雇用に関する相談は、当サイトお問い合わせからお願いします。