前回より障がい者法定雇用率の未達成企業に共通する4つの課題から拡大する障害者雇用の企業間格差を解消する為の糸口を探っています。前回分をお読み頂いた方には、障害者雇用を成功に導く為には担当者個人の努力と会社組織としての取り組みの両方が必要であることがご理解頂けたかと思います。
今回は、さらに視野を広げ会社の外の障害者雇用を取り巻く環境について触れたいと思います。
3.障がい者を集める手段が少ない
雇用義務のある企業の人事担当者になったつもりで、健常者の採用シーンを思い浮かべてください。
まず、最初に行うことは求人募集ですよね。募集をしなけば応募者が集まりませんので、まずは求人募集を行います。
人事活動において求人募集はとても重要です。もし、求人募集に対する応募者が1人しかいなかったら、人柄や職歴、業務スキルとは無関係にその1人を採用しなければいけなくなります。従って、良い人材を採用したいのであれば、出来る限り多くの応募者を集め、その中から選定する必要があります。一般的には募集に対して3倍以上の応募者が必要と言われています。
次に求人募集の方法です。多岐にわたりますが、大きく分けてネット媒体・紙媒体・その他の3つに分けることができます。
ネット媒体には、自社ホームページの採用情報に掲載する方法・リクナビなどの就職情報サイトやen転職などの転職情報サイトに掲載する方法・ハローワークのネット検索に掲載する方法などがあります。紙媒体には、自社やその周辺に求人募集の張り紙を掲示する方法・ハローワークで求人登録をする方法・街角で配られる求人情報フリーペーパーに掲載する方法などがあります。その他には、人材派遣会社や人材紹介会社を利用する方法・自社の従業員に知り合いを紹介して貰う方法などがあります。
以上のような手段の中から、それぞれメリット・デメリットや予算などを考慮し、複数をチョイスして募集するというのが一般的な健常者の求人募集です。
では、障がい者の求人募集も同じ様にすれば良いのでしょうか?
答えは、ノーです。もっと正確に言うと、健常者の求人募集と同じ様に障がい者の求人募集を行うこと自体が不可能です。というのも、先述した求人募集方法の多くが、障がい者の採用においては状況が変わります。
ネット媒体で言うと、大手の就職情報サイトや転職情報サイトでは障がい者採用情報の取扱いがまだまだ小さく、掲載されている障がい者求人情報も少ない為、利用者も少ないというのが現状です。また、紙媒体でも同様で、一般求人情報の中にごく少数の障がい者求人情報が掲載されているだけなので、障がい者の中でそれをチェックしている人も多いとは言えません。最近増えてきたとはいえ障がい者人材を取り扱う人材派遣会社や人材紹介会社もまだまだ少ない状況です。さらには、自社の従業員の紹介も身近に多数の障がい者がいる人も少なく期待できません。
つまり、健常者に比べて障がい者は求人募集の手段が限られているわけです。
でも、障がい者の求人募集の条件は、障害者雇用に成功している企業も成功していない企業も同じではないのかと考えがちですが、全く違います。
例えば、障害者雇用に成功している企業は、求人情報サイトのヘビーユーザーな事が多いのでサイトの目立つ場所にいつも掲載され、応募の獲得人数が格段に多いです。また、障がい者が働く企業として認知されている為、自社ホームページの採用情報に掲載するだけでも、そこそこの障がいを持った応募者が集まったりするケースもあります。さらには、障がい者が多く働く職場では、障がいを持った知り合いの紹介が発生する確率も上がります。
このように、障害者雇用がうまくいっていない企業は、障がい者を集める時点で大きく出遅れることになります。ただし、障害者雇用が1人、2人と少しずつ上手くまわりだすと、ある時期を機に求人募集状況が好転しますので、初めこそ厳しいですが諦めず頑張り続ける根気が大切です。頑張るだけのメリットはあります。
4.早期退職者が多い
早期退職者が多くなってしまう主な理由は、先述した1〜3にあります。
1.障害者雇用に手間が掛けられないから、採用から定着にかけての人事や同僚のフォローが不十分となり、辞めてしまいます。
2.障がいへの誤解が多いため、各人の特性や性格にあったサポートが欠如し、その結果退職に至ります。
3.障がい者を集める手段が少ない為、少ない応募者の中から無理矢理に採用した結果、職場や業務に合わず早期に退職してしまいます。
法律による雇用義務や助成金の条件を満たすため、障がい者を雇わなければいけないから集めるのに、その尻から退職者が出てしまい、いつまで経っても法定雇用率未達成のまま。必ずと言ってもいい程、障害者雇用が上手くいっていない企業には、このような悪循環が存在します。悪循環を脱する為には、1〜3を見直して、腰を据えて取り組む必要があります。
まとめ
「法定雇用率未達成企業に共通する4つの課題」と題して、障害者雇用の企業間格差を解消する糸口を探ってきましたが、ご担当者の方はいくつ当てはまりましたか。障がい者法定雇用率達成企業が半数未満であり、達成企業の多くが1000人以上の大企業ということを考慮すると、大抵の会社は4つの課題の全てに当てはまっているのではないでしょうか。
今後、確実に障害者雇用の企業間格差は広がり、努力だけではどうしようも無い時期が来ます。でも、今から真剣に取り組めば障害者雇用成功企業の仲間入りすることも出来ますので、1日も早く障害者雇用の好循環づくりに着手してみてください。