取材レポート:特例子会社『大東コーポレートサービス株式会社』

今回ミルマガジンでは、大東建託株式会社の100%出資による特例子会社である『大東コーポレートサービス株式会社』を取材してきました。
特例子会社と言えば、国からの認可のもと自社における障がい者雇用数が親会社の法定雇用率にも算定することができ、様々な特性の障がい者に対して特別な配慮を実施することができる「障がい者雇用を目的」とした法人となります。しかしながら、特例子会社が実践する取り組みや課題解決は、一般企業の障がい者雇用にとっても大いに参考となる実例があります。それは、今回の取材でも例外ではありませんでした。

取材にあたりまして、お話を聞かせていただきましたのは取締役の伊藤直樹氏、品川サービス部(兼)雇用推進室 次長の辻庸介氏、品川サービス部シェアードサービス課 課長の西岡幸智氏です。

企業の紹介

《話・伊藤氏、辻氏、西岡氏》
設立は2005年、他の特例子会社の設立目的と同様に親会社である大東建託株式会社の障がい者法定雇用率を補う点が第一の目的で、設立当初は知的障がい者を中心に求人活動を実施し、当時は障がい者5名でスタートしました。現在は、拠点が本社のある天王洲・品川・浦安・北九州に展開し、従業員数391名中障がい者が94名(知的障がい者35名、身体障がい者13名、精神障がい者46名)となり、グループ全体の法定雇用率は2.98%となります。(2020年3月1日現在)

親会社の当社に対する姿勢は厳しくて、法定雇用率を遵守するための障がい者雇用を実施する会社というだけではなく、一会社として「収益を得る企業作り」を目指すことも課されていました。当社は親会社を中心にグループ各社から請負う業務を主軸として事業に取り組んでいます。
例えば、新たな業務を受ける際、他社を含めた3社による相見積もりが前提となっています。ですから、グループ会社だから必ず受注をもらえるという確約があるわけではなく、特例子会社であっても企業努力のもと競合他社から受注を勝ち取らないといけません。これは、親会社に頼る姿勢ではなく、自立するための企業の成長において健全な状態だと思っています。

業務内容、独自の特徴

現在、親会社を中心としたグループ各社から請負う業務は500種類を超えており、それぞれの業務を「事務サービス」「印刷」「ものづくり」といった大きく「3つの業務」に分けて担当しています。各業務には障がい者の特性と強みを十分に理解し、それらを活かした配置になっています。

「3つの業務」

  • 事務サービス業務:グループ各社の事務業務のサポート。

「シェアードサービス業務」「書類の封入・封緘・発送業務」「データ入力・スキャニング」「メール室運営」

  • 印刷業務:チラシやパンフレットから看板印刷まで広範囲の印刷を担当。

「入居者募集看板(シルクスクリーン)」「名刺作製」「封筒(オフセット2色機)」「建物定期報告書(オンデマンド印刷機)」

  • ものづくり業務:個々の特性を活かした高い品質の製品作りを実現。

「置き型看板の組み立て」「ペーパークラフト」「社員証・ネームプレート」「図面製本」「看板カッティングシート貼り」

また、当社では設立からこれまでの多くの経験から社員が活躍できる職場環境づくりとして「8つの工夫」というものを掲げています。

「8つの工夫」

  1. 障がい特性にあてはめない
  2. 個別指導とマニュアル化
  3. 指示の一本化
  4. 見える化
  5. 日常のアドバイスと目標設定
  6. ほめてのばす指導
  7. やる気を引き出す
  8. ミスをださない仕組みづくり

これらを実践することで、それぞれの職場が配置されている障がい者の特性を理解し、個々が持つ強みを活かし、担当業務で成果を上げることができるようになっています。

現在の取り組み

設立当初から職域が広がったことに伴って人員や業務内容も大きく変化してきました。また、採用する障がい者も当初多かった知的障がい者から現在は精神・発達障がい者が最も多く雇用しています。
そのため、仕事をそれぞれの障がい者に教えるために先ずは健常者が業務内容を習得するところから始まるのですが、雇用する障がい者特性が増えたことにより、伝え方やコミュニケーションの取り方も個々に合わせるようにかみ砕いて、説明するのも工夫が必要です。今では、受け入れ先がマニュアル化や業務の細分化などの準備を進めてくれるようになりました。
これは、社内に障がい者を受け入れるという環境づくりが浸透していることの表れだと感じています。職場では業務遂行に障がい者抜きでは考えられなくなっています

その一方で、担当業務や範囲の広がりにより各種調整役が大変になっています。
新しい業務が増えると先にお話しましたような準備を進めるのですが、想定以上に増えた場合であっても納期を守れないということではいけません。当社は特例子会社ですが、発注元である本社並びにグループ会社は企業として当然のように納期や質の高い製品づくりを求めてきます。当社は障がい者が働いている会社だからという言い訳ができないですから。

また、当社では障がい者の自立に向けた取り組みにも力を入れています。例えば、ご家族の方々も交えた勉強会を実施し、障がい者が自立する際に活用できる社会資源(グループホーム、地域定着支援など)についての知識や情報の共有を図る場を定期的に設けています。

新たな取り組み「RPA」

当社では障がい者の新たな職域開拓として『RPA(Robotic Process Automation)』の開発業務をスタートさせました。きっかけは親会社でのRPAの導入でした。
親会社では「働き方改革」などの一環によりRPA導入の検討が始まり、各業務部門での開発が進むことになりました。ところが、導入当初から様々な課題が発生したため、それらの課題解決が必要な状況が生まれました。その頃、当社ではシェアードサービスを運営するグループ会社との合併により特例子会社要件(従業員の20%以上が障がい者)に抵触する可能性が出てきたため、対応が急務な状態にありました。他にも受託する業務の変化により従来型の仕事(印刷・製本等)が減少傾向にありました。

そこで「障がい者雇用拡大に合わせた業務の創出・職域拡大」を解消するための新たなチャレンジとして「RPAエンジニア」の雇用を始めることになりました。
障がい者のRPAエンジニアの育成をしている就労移行支援事業所との提携により希望する能力・技術を習得している人材を雇用。現在は5名の障がい者RPAエンジニアが活躍しており、昨年度は年3本のプログラム開発だったのが今年度は目標である年100本の開発をクリアできるようになりました。
来年度は年200本弱の開発を目標にし、更にはRPAによる業務削減にどれほどの効果があったかの評価や在宅勤務の導入、RPA周辺業務(サポート、メンテナンス等)への拡大も進めていく予定です。

今回の取材を通じて、特例子会社という立場でありながら、企業として障がい者雇用を言い訳にせず精度の高い製品づくりを目指す姿勢にはこれから障がい者雇用に取り組む企業、または課題を感じている企業にとってたくさんのヒントがあると感じました。
特にRPAの開発業務の導入は、「ITは障がい者の雇用を阻む」という考えを変えるものだと思います。これまでの「特例子会社は障がい者雇用率を満たすための存在」から「特例子会社は障がい者の能力を活かし利益を追求する存在」へと変化していることを実感しました。

大東コーポレートサービス株式会社の皆さんご協力ありがとうございました。


『大東コーポレートサービス株式会社』
東京都品川区東品川二丁目2番8号
URL:https://www.daito-copo.com/

『大東建託株式会社』
東京都港区港南二丁目16番1号 品川イーストワンタワー
URL:https://www.kentaku.co.jp/

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム