おすすめ書籍「発達障害グレーゾーン」

最近、耳にする機会が多くなってきた発達障がいということば。医療機関での診断についてどの程度ご存知でしょうか。
仮に「自分が発達障がいではないか?」と疑ったとき、皆さんはどういった行動をとるでしょうか。おそらく「親や友人に相談」「インターネットで検索」「関連書籍を読む」といったところが考えられます。

その後、大きく二つの選択、
A. 医療機関を受診してみる
B. 悩みながら放置してしまう
のどちらかを選ぶのではないでしょうか。

もし私がその立場だったとしたら、勇気のいる判断になると思いますが、「A」を選択します。
その理由は、自分をクルマに例えて説明してみたいと思います。
自分という名のクルマを上手く操縦するためには、個々のクルマが持つ微妙な違いである特徴や癖(「ハンドルやブレーキの遊び」「アクセルを踏む感覚」など)を把握しておく方が運転を楽しむことができます。同様に、自分に発達障がいという特徴があるのであれば、専門的な見地から自分の得意や不得意を把握し、特に強みを活かした仕事や生活を目指したいと考えるからです。
発達障がいというのは、現代の枠組みに対して順応することができなかったり苦手だったりした結果、生きづらさを感じてしまった人たちを指している障がいではないかと考えることがあります。
少しでもその生きづらさを把握し工夫して乗りこなしていくためには、早い時期に自分の特徴を知っておくことが必要になってくるのではないでしょうか。

ところが、発達障がいの診断を出す医療機関の数が不足している現状があります。私の住んでいる大阪市のお話ですが、発達障がいかどうかの診断を出してくれる医療機関での受診を希望する場合、初診に2~3ヶ月、診断結果が出るまでに更に数ヶ月かかると聞きます。地方の場合であれば医療機関そのものの数が限られているために、受診したくても通える距離にお医者さんがいないといったケースが多いと思います。

他にも、発達障がいの診断について起こる問題というのもあります。仮に普段の生活で生きづらさや不便を感じている人が、発達障がいに関する知識のないまま受診した専門ではない精神科で「発達障がいではないです」と診断された場合、その診断結果を信じてしまい、根本的な治療がされないまま生きづらさを抱えて生活を続けている人たちが存在します。
また、専門の医療機関で受診した人の中には、「発達の傾向はあるが障がいとまでは認定できない」と診断された方もいます。このように、明確な発達障がいと診断を受けられなかったが、発達障がいの傾向が見られる方たちのことを「グレーゾーン」といいます

書籍『発達障害グレーゾーン』

今回ご紹介するのはこのグレーゾーンについて当事者の声を中心に解説された『発達障害グレーゾーン』という書籍になります。こちらの書籍は新書サイズとなり、読書が早い方であれば1~2日で読了できると思います。

対象にしている読者は「自分が発達障がいではないかと疑っている人」「グレーゾーンの診断を受け日常生活で困っている人」になりますが、企業の人事担当者やご家族の方など、身近な存在として該当する方々にも読んでいただきたいと思います。

発達障がいについてよくご存じの方であれば、「グレーゾーン」の存在を耳にされたことがあるのではないでしょうか。
この「グレーゾーン」ということば自体は、以前から使われており、発達障がいという診断を受け障がい者として生活をしている人たちの抱える悩みや問題について徐々に取り上げられてきている分、認識においても少しずつ広がってきているように思います。(但し、偏った思い込みが障がい者採用を邪魔することによる弊害も一方では指摘されています)今、発達障がいがクローズアップされていますが、見えにくい部分である「グレーゾーン」という層にも彼ら彼女らが苦しみながら生活を送っている事実があります。おそらくその数字は少なくない数字だと感じています。

「グレーゾーン」の方たちの苦悩

書籍の中身ですが、「グレーゾーン」に関する簡単な情報から始まり、実際に「グレーゾーン」の状態のまま生活をしている方たちの生の声を筆者の取材を通して語られています。私もこの書籍を読んで、改めて「グレーゾーン」の方たちの悩みや不安、焦りを感じることができました。それは、「グレーゾーン」の診断を受けた状態で企業に就職している人のほとんどがクローズ(障がいを隠して)で働いています。その人たちは、「周囲に気付かれないか」と常に不安を抱きながら、他の従業員の働きについていくことに必死で、精神的にもかなりキツイ状態なはずです。何とか気付かれずに働いている人もいれば、仕事上のミスや人間関係で転職を繰り返している人もいます。
こういった事例を当事者からのインタビューで紹介されています。

「グレーゾーン」の方たちの工夫

また、興味を引いた内容として、最後の章に「グレーゾーン」の方たちが普段の生活で役立てている工夫が紹介されています。例えば、「仕事でのケアレスミスを少なくする方法」や「メモや電話苦手なときの対処法」など、仕事や日常生活で発生する困難をそれぞれの当事者が自分たちで発見した方法や対処法について説明されています。
「グレーゾーン」の方であれば、この中から自分に合った方法を見つけることができるのではないでしょうか。

実際、発達障がいと診断されていないが、専門の医療機関に掛かったときに発達障がいもしくは「グレーゾーン」と診断を受ける可能性のある方が、既に企業で働いているケースというのは少なくありません。
ご自身が発達障がいであるという疑いを持っていない人は除いても、自覚している人がクローズで働くことを選択する理由は、「理解されない」「不当な扱いを受ける」など発達障がいに対する正しい知識と理解が進んでいない社会に大きな原因があると考えます。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム