就労支援の現場で働いていると、「障がいのある社員にどんな仕事を任せればよいか分からない」「他の会社はどんな仕事を任せているのか」など、企業の方からのご質問をよくお聞きします。
たしかに、適する仕事を創り出すのはそんなに簡単なことではないように思います。
でも、コツはあります。
今回は、「仕事の創り方」について書いてみたいと思います。
仕事の創り方(理想のイメージ)
障がいのある人の仕事は、周囲の従業員にとって「助かる」「役に立つ」「ありがとうと言いたくなる」など、周囲がメリットを感じれることが最も重要です。
周囲の従業員が障がいのある人に「業務を与えている」といった上からのような感覚になってしまうことは望ましくなく、障がいのある人にとっても「疎外感」を感じやすくなってしまいます。
障害者雇用が職場の雰囲気を良くしたり、生産性や業績の向上といった職場における好循環を目指すためにも、「助かる仕事」をキーワードに適材適所で配置したいものです。
それでは、具体的な仕事の創り方について、見ていきましょう。
手順としては以下の方法で順に進めていきます。
- 業務のリストアップ
- 業務の仕分け(メインとサブ)
- 予定表の作成
- 職務記述書の作成
- インターンシップ
業務のリストアップ
リストアップは、障害者雇用の担当者一人で取り組むのはさすがに無理があります。
各部署や一人ひとりの従業員にも手伝ってもらい、多方面から業務をリストアップしてもらうことがよいと思います。
リストアップの際、以下の項目をエクセルのシートなどで作成し、メールや紙面で関係部署に協力要請すると多くの業務が出てくると思います。
<リストアップの項目>
- 具体的な業務内容(なぜ、どの様に、誰もしくは何のために何を行う仕事なのか)
- 貢献度(周囲にとって助かるor役に立つ視点で)
- 難易度(平均的な従業員の視点で)
- 求められるスキルの内容(エクセル操作とか器用さ、丁寧さなど)
- 場所(どこで業務を行うか)
- 頻度(一ヶ月で何時間行うか)
業務の仕分け(メインとサブ)
次に、業務の仕分けです。
ここでは、メインとサブに仕分けることでリストアップされた業務を整理していきます。
仕分けにおいても、障害者雇用の担当者のみで実施することも可能かと思いますが、できれば複数人で意見交換しながら業務の仕分けをしていくほうがリストアップされた多くの情報を整理しやすいかと思います。
仕分ける際は、以下のポイントを参考にメインとサブに分けていきます。
- メイン
- 頻度の高い業務
- 貢献度の高い業務
- サブ
- 手が空いた時やスキマ時間にできる業務
- 難易度の低い業務
予定表の作成
メインとサブに仕分けができたら、予定表を作成して業務を組み立てていきます。
一日、週間、月間とそれぞれで予定表を作成し、リストアップされた業務で通年雇用が可能かどうかを判断します。
作成にあたっては、以下のようにメイン→サブの順で組み立てていき、業務が足りない場合は追加のリストアップを各部署に再度協力要請することが必要となります。
- まずはメインの仕事を予定表に入れる
- スキマ時間にサブの仕事を入れる
- 追加リストアップの必要性を検討する
職務記述書(job description)の作成
最後は、職務記述書(job description)についてです。
こちらは、欧米的な考え方になってしまいますが、職務をある程度明確にするために活用するものです。
日本では、各個人に仕事を割り振る文化ですが、欧米では必要な職員を設定してそれに必要な人材を探す文化です。
企業側も職務記述書を作ることで求める人物像を明確にするため、必要な人材確保の成功率は上がるようです。
前置きが長くなりましたが、今回は「障害者雇用としての職務記述書」としての作成でよいかと思います。
作成の理由としては、日本は仕事を割り振る文化であるため、自分の業務内容を明確にされていない傾向にあり、そこには暗黙のルールが存在します。
発達障がいや精神障がい、知的障がいのある人たちは、そもそも暗黙のルールを空気を読んで理解し、業務を遂行することに難しさがあります。
一日の予定(流れ)、業務の手順(マニュアル)などは、視覚的な工夫で分かりやすく伝える必要があります。
以前のコラム「分かりやすく教える技術」でも書いたように創った仕事は分かりやすく教えたほうがよく、そのコツは「視覚的に伝える」ということです。
<記載する項目>
- 職位名
- 業務概要
- 業務内容
- 必要とされる能力とスキル
- 必要とされる資格と経験
- その他の有れば望ましい能力
インターンシップ
最後は、インターンシップです。
創り出した仕事が障がいのある人にうまくマッチングできるかどうかについては、インターンシップで見極めます。
と言っても、インターンシップに協力してくれる障がいのある人を自社で見つけるのは難しいため、地域の就労支援機関(就労移行支援事業所、就業生活支援センターなど)を活用してインターンシップを実施するとよいかと思います。
ひとまず、流れは以上です。
いかがでしたでしょうか。
ざっと書いてみましたが、概論的な内容が多くなってしまったようにも思います。
実際、私の職場にも障がいのある社員がおり、デスクワークを任せていますが、職務記述書を明確にして本人に説明できているとは言えず、改善が必要な状況です…
今回のコラムは、一旦はここで終了としたいと思います。
またの機会になりますが、今度は具体的な仕事の創り方についていくつかの事例も交えながら書いてみたいと思います。