今後も「法律による雇用の促進」または「社会的な義務・責務」といった観点は、障がい者も含めた共生社会実現へのはたらき掛けを後押しし、障がい者の雇用については法定雇用率の達成は当然のこととして、企業には更なる「雇用の質」を高めるための取り組みが求められると考えています。
今回は、企業の障がい者雇用担当部署の役割りに関するご質問にお答えしようと思います。
人事担当になった数年前から、私が中心となり障がい者雇用の取り組みを始め、ようやく3年前に法定雇用率を達成させることができました。
現在、雇用する障がい者の人数も増えてきたため、これまでのように私がひとりで障がい者の求人や雇用を担当することが厳しい状況になってきています。
今後、組織として障がい者雇用に取り組むにあたり、どのようなことに注意していけば良いのか教えてください。
よろしくお願いします。
《資材メーカー、従業員数約800名、人事担当》
【A】
障がい者雇用の担当をするのは概ね人事部門であり、雇用に積極的な経営者や担当者が中心となって、「法定雇用率の達成」を第一の目的として取り組む企業が多いと思います。企業で取り組む様々な事業と同様に、障がい者の雇用も進めていく中で多くの課題に直面することがあり、その都度担当者が中心となって解決に必要な対応を求められます。
企業ではたらく障がい者の特性も、これまでは思い込みや間違った知識が邪魔をしてしまい、身体障がい者や知的障がい者を雇用する割合が多数を占めていましたが、最近は精神障がい者や発達障がい者の求人も増加傾向にあり、安定した雇用の定着を考えた時に職場で専門的な支援が必要となる場面も増えてきています。
取り組みを始めた当初というのは、中心となる担当者の意識の高さに伴って、苦労や失敗を重ねながら周囲への配慮や協力を惜しまず進めた結果として一定水準の雇用数まで結果を残すことができます。企業規模に合わせた障がい者の雇用数や勤務地の数にもよりますが、当然のことながら担当者ひとりのマンパワーでできる範囲というのは限られてきます。
特に、上記でも述べたように現在の障がい者雇用は採用する障がい者の特性が広がったことにより一緒に勤務する従業員への理解と協力がこれまで以上に高くなり、時には専門的な支援が求められるということを考えると、障がい者の職場定着には障がい者就労支援福祉サービスなどの外部リソースへの相談や連携も重要な手段のひとつとなってきます。(法律改正や助成金のような活用できる制度に関する情報も得られます)
企業の障がい者雇用も規模や内容によって「組織化」させていくタイミングがあります。
仕事の場面ではよく聞かれる話で、ある業務について特定の従業員が属人化してしまったことによるメリットとデメリットが生まれてしまうというのは、障がい者雇用という特性上では非常に起こりやすいと感じます。障がい者雇用も進み法定雇用率も達成できていた状態の企業が、ある一定の時期から離職者が増え採用も上手くいかずに雇用率が割り込んでしまった結果として、納付金(罰金)の支払い義務が発生してしまったというのは少なくないお話です。
例えば、「雇用する障がい者が〇名以上かつ精神障がい者・発達障がい者の雇用が半数近くに」といった指標を設けることで、企業内の障がい者雇用がそろそろ次の段階への移行が必要だと捉えることができますので、それが障がい者雇用を継続性ある取り組みへとするための「個」→「組織」への“成長”のタイミングだと思います。
組織化の注意点
当然のことながら、「組織」化させるにあたり注意するべき点があります。
「個」→「組織」へと進めるためには、『役割の明確化』と『情報の共有化』が重要だと考えます。
①と②は「個」であった時には担当者内で行動し情報管理しておけばよかった半面限定的な成果となるのですが、雇用の拡大と質の向上には担当の「組織」化で実現させることができます。
例えば「障がい者の配属」を見た場合、人事担当者の目が届く人事部の配属が多かったり、別部署であっても相談や問題解決は人事が中心となって対応します。これを「組織化」させると、
《職場》 | 《人事》 | |
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役割の明確化 |
・日常業務のサポート |
・部署管理者からの相談対応 |
情報の共有化 |
・コミュニケーションの方法 |
・支援機関からの情報を部署と共有 |
といった具合に、「個」のときよりも、詳細で厚みのある取り組みに成長させることができます。
これは、障がい者雇用を統括する部署(人事)やチーム内でも同様に、『役割の明確化』と『情報の共有化』をベースとした組織づくりが必要となります。
次回に続く。