私は10年ほど前にボルダリングに興味を持った時期があり、しばらくの間でしたがボルダリング設備のあるジムに足繫く通っていました。今回の東京オリンピックでは初めて正式種目となりましたが、当時から人気に火が付いていたように思います。
その頃を振り返ってみると、
・「近隣に施設があるのか」
・「事前に購入するものはあるのか」
・「通う場合はどの程度費用が掛かるのか」など、
分からないことばかりだったために躊躇してしまい、実際に始めるまでにしばらく時間が掛かりました。
その後、同じくボルダリングに興味のある友人を誘って1時間の体験コースに申し込みをし、競技のルールや登り方のコツなどをジムのインストラクターから丁寧に指導をいただき、初心者コースにチャレンジしたのが最初の経験でした。
それからは運動目的で週に1~2回の頻度で通い、徐々に道具(専用シューズや滑り止めのチョークなど)を揃え、インストラクターや諸先輩たちからのアドバイスをもとに経験値を積むことで、登れなかったコースを少しずつクリアさせることに楽しさを感じるようになりました。(ボルダリングは見ているだけでは伝わりにくいですが、主に初心者コースである垂直の壁を登るだけでも指先や腕への負担が大きい競技なため、壁が手前側に角度があったり、複雑な設定がされているコースをクリアした人を見ると心から拍手を送りたくなります)
おそらく、新しいことを始めるときというのは設定する目標は高くあったとしても、入り口は小さなところからスタートさせる方が結果として定着につながる取り組みとなるのではないでしょうか。
障がい者の雇用についても同じような点があると思っています。
これから本格的に障がい者雇用に取り組む企業の人事担当者にとってイチから始める場合、先ずは障がい者の方との「小さな接点作り」から始めてほしいと思います。
会社としての明確な目標(法定雇用率の達成、精神障がい者の雇用、新たな事業など)があると越えるハードルが高くなり過ぎてしまい、仮に一度は越えられたとしても、毎回高すぎるハードルを越え続けるというのは、人事担当者だけでなく障がい者を受け入れる組織にとっても大きな負担になってくると感じます。
それでは、障がい者雇用を始めるための「小さな接点作り」とはどのようなことでしょうか。
①近隣の障がい者就労支援福祉サービス、支援学校を見学
障がい者就労支援福祉サービスとは、障がい者が自立や就職に向けて必要な知識・技術を学ぶために設置された事業所が提供する福祉サービスになります。
大きく「就労移行支援事業」「就労継続支援A型事業」「就労継続支援B型事業」3つの役割りに分けられ、それぞれ障がいの程度や目指す目的によって利用することができます。
合計すると全国に約18,000ヶ所の事業所がありますので、近隣の事業所に見学の申し込みをしてみてください。多くの事業所は企業からの見学にはウェルカムで対応していただけます。
また、18歳以下の障がい児たちが通っている支援学校でも同様に企業からの見学などを受付けていると思います。
②障がい者がはたらいているところを見学
自社で障がい者の雇用を進めるにあたり、実際にはたらいている障がい者の姿や会社の雰囲気を知るというのもきっかけのひとつになります。
障がい者の雇用経験が浅い場合であっても、障がい者がはたらくところを見学することで、担当してもらう仕事の切り出しのイメージも持ちやすくなりますし、従業員への説明も伝える点が明確になってきます。
最初に見学をされるのであれば特例子会社が良いと思います。
特例子会社は障がい者雇用を世の中に広めたいという意識が強いため、「自社の雇用の参考のために見学がしたい」と伝えれば快く対応していただけます。
最近では、特例子会社が実践している仕事も多岐にわたってきましたので、自社で想定する仕事に当てはまるところを見つけることができると思います。
③実習(2~3日)の受入れ
実習の受入れは、上記の見学よりも少しハードルが高くなります。とは言え、それだけ障がい者に関する知識や経験を積み重ねるという点では、得るものが大きい接点のひとつです。
実習というのは、一般企業への就職を目指しているまたはそれだけの能力がある障がい者が職場体験として企業内で実際の仕事に従事することです。障がい者側にとっては就職のための社会経験の場となり、企業側としては「障がい者理解」「支援活動の一環」「採用活動」のようなメリットがあります。
実習を通じて、障がい者のはたらく力や人となり、障がいの特性を理解が進んだという企業からの声は多く、特に採用時には実習を取り入れることでミスマッチを防ぎ、定着率の向上につながります。但し、いきなり本格的な実習を導入するのは躊躇してしまうと思いますので、先ずは2~3日・4時間程度のライトな実習の受入れで十分です。
また、実習を通じて自社の障がい者雇用を進めるにあたっての課題の顕在化をすることもできます。
④その他
障がい者に対するイメージを変えるという点でこちらの映画をお勧めしたいと思います。
先日、ミルマガジンでご紹介した映画で、演じている役者自信がダウン症なのですが、愛嬌のある素晴らしい演技が見られます。障がい者に対するイメージが変わるきっかけになる良い作品です。
上記以外での障がい者との接点の持ち方はあります。
例えば、障がい者の方たちに自社の見学に来てもらい、「会社のこと」「はたらくということ」を知ってもらう機会を作るのも良いのではないでしょうか。
※①~③について、新型コロナウイルス感染予防対策により、それぞれの事業所や地域によって対応が変わりますので、先ずはご確認ください。