取材レポート:就労移行支援事業エンカレッジ『オンラインしごと体験』

新型コロナウイルスが世界にまん延してもうすぐ2年が経とうとしています。日本はコロナワクチンの接種が進んでおり、少しずつ制限が緩和された生活を送ることができるようになってきました。

その一方で、アフターコロナといった新たなスタンダードが浸透しつつあり、我々は様々な場面でコロナ前の生活からの変化も求められています。
障がい者の支援や求人・雇用の場面も例外ではありません。緊急事態宣言が発令された地域では、その期間に通所や通勤が制限されたために希望する支援が受けられなかったり休職状態となった障がい者がたくさんいました。採用計画にも支障が出てしまい、法定雇用率に影響してしまった企業もあります。
障がい者就労支援の場面では、『実習』の受け入れを新型コロナウイルス感染防止の観点から見合わせている企業が増えているため、就職に向けた社会経験の機会が奪われたかたちとなっています。

そういった中、以前にミルマガジンでも支援施設インタビューでご紹介をしました大阪を中心に京都・東京で就労支援活動を実施している「就労移行支援事業所エンカレッジ」が、企業に足を運ばなくても参加可能な『オンラインしごと体験』という『実習』オンラインコンテンツをスタートさせました。

支援施設インタビュー:株式会社エンカレッジ

2017.08.03

『実習』は、これから就職を目指す障がい者にとっても、本格的な障がい者雇用に取り組む企業にとっても、両者が理解を深める貴重な体験の場としての役割があります。

《就職を目指す障がい者》

  • 自分の特性(得意な業務または苦手な業務)を理解する機会
  • 企業の職場での仕事を通じて体験する社会経験の場
  • 実際に企業ではたらく従業員とコミュニケーションが取れる機会

《障がい者雇用に取り組む企業》

  • 従業員が障がい者への理解を深める機会
  • 想定業務を試行する機会
  • 採用に向けた適性確認の場

しかしながら、新型コロナウイルスにより『実習』の機会が減少した現状において「就労移行支援事業所エンカレッジ」が提供する『オンラインしごと体験』では、障がい者と支援者、企業からのニーズを満たすサービスを受けることができるようになっています。

その特徴は、

①,世の中にどんな仕事があるか、動画を通して知ることができる

  • 企業で勤務する従業員が具体的な仕事内容や1日の流れを説明
  • 文字だけでは伝わらない職場の雰囲気や仕事の中身を知る

②,会社でおこなわれる実際の仕事を、30分から模擬的に体験することができる

  • 10種類以上の仕事を手軽に疑似体験
  • 自分の実力を試したり、適した仕事を知る機会

③,バーチャルオフィススペースで職場に近い環境で実施が可能

  • 実際に企業に出向かなくてもオンラインで手軽に参加
  • 顔を出さずに参加することも可能

となります。

従来の『実習』の場合、事前に受け入れ企業に大学や支援事業所を通じて申し込み、企業側で選考をしてから、ようやく『実習』を開始する流れになるのですが、『オンラインしごと体験』では、手軽に短時間で参加することができます。

エンカレッジでは、今年の6月から全国の大学14校と連携をして、障がい学生及びグレーゾーン学生を対象にした『オンラインしごと体験』トライアルを実施しました。新型コロナウイルスによる影響もオンラインコンテンツのため、トライアルには200名以上の学生が参加。大学・障がい学生・支援機関の関心の高さがうかがえます。
参加する障がい者にとって従来の『実習』では、企業が切り出す業務も限定的なものとなることが多いのですが、この『オンラインしごと体験』であれば30分単位で10種類以上の体験ができますから、自分の適性業務に出会う可能性が高くなります。また、体験できる仕事の種類は今後も拡張されることになっています。

企業の人事担当者にとってもメリットがあります。今後、障がい者を雇用する際に想定する仕事を『オンラインしごと体験』を通じて、全国の障がい学生や障がい者に体験してもらい、業務の適性判断に活用する事もできます。
また、これまでに『実習』を実施していた場合、受け入れのための準備(支援側からの人材の提案、選考、受け入れ部署の選定、仕事の切り出し、本人へのフィードバックなど)に費やす時間や労力が大きく軽減されますので、障がい者と同様に参加ハードルがかなり低く設定されています。

実際に『オンラインしごと体験』のご利用を希望される場合、エンカレッジが提供するコンテンツ「Boosterキャリア」への登録が必要となります。また、現在所属する大学や就労移行支援事業所による『オンラインしごと体験』の導入も必要となりますのでご確認をお願いします。

我々のような障がい者の就労に関わる立場として、『実習』の機会が減少する中でこのようなコンテンツがあることで、これから就職を目指す障がい者や支援者は大きな励みになるサービスだと感じています。

株式会社エンカレッジ
所 在:大阪市西区新町1-4-26 四ツ橋グランドビル2F
URL:https://en-c.jp/
『オンラインしごと体験』
URL:https://shigoto-taiken.com/

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム