法定雇用率未達成企業に共通する4つの課題[1/2]

厚生労働省の平成28年集計では障がい者法定雇用率が未達成の民間企業が過半数(51.2%)いることが発表されました。障害者雇用はこの5年間で確かに前進しましたが、達成企業が半数未満の現状では、お世辞にも障害者雇用が普及しているとは言えません。

現在、障がい者法定雇用率を達成している企業が年々その割合を高めている一方、法定雇用率未達成企業はさらに厳しい状況へと追い込まれています。

障害者雇用の企業間格差が拡大した一番大きな要因として、障がい者の求人環境の変化が挙げられます。以前のように障がい者の求人を出せば何人も応募が来る状況と現在は異なり、障がい者求人市場は完全な売り手市場となっており、障害者雇用が上手くいっている企業に応募が集中しています。この傾向は、今後より顕著になっていきますので、1日も早く好循環側に回らなければ、より困難な道のりが待っています。

今回は、障がい者法定雇用率が達成できない企業に共通する4つの課題から、障がい者法定雇用達成の糸口を見つけたいと思います。

1.障がい者採用・障害者雇用に手間が掛けられない

障がい者採用・障害者雇用に手間が掛けられない

健常者雇用に比べて手間が掛かるにも関わらず障害者雇用は手間が掛けられないという問題は、多くの経営者・人事担当者を悩ませています。

大企業であれば、雇用する障がい者の人数も多く、障害者雇用専門人事のポジションを用意することも出来るかもしれませんが、通常は障害者雇用専門のポジションを設置することは難しいでしょう。

そういった事情もあり、同じ人事担当が健常者採用と障がい者採用を兼務するケースが、最も一般的だと言えます。さらに、採用後の障害者雇用も健常者雇用と兼務という形で総務担当が務めることになります。

中には、人事も総務も兼務という企業も少なくなく、かかる負担は非常に大きなものとなります。

現在の障がい者法定雇用率を照らし合わせると、24人の健常者に対して1人の障がい者を人事・総務担当はサポートすることになります。この状況では、どうしても24人の健常者が優先されてしまい、1人の障がい者は後回しになってしまいます。さらに、障がい者の方が手間が掛かるとなると、尚更後回しにされてしまいます。

経営者や担当者が障害者雇用の重要性を理解しており、しっかり取り組みたいと思っていたとしても、現実問題それは相当難しいことです。

担当者からすると、障がい者採用・障害者雇用に割く時間を作る為には、担当する社員を増やしてもらわなければいけないが、会社が増員してくれない。企業からすると、障害者雇用の担当者を増やす余裕が無い。担当者を新たに雇用する位なら、罰金(障害者雇用納付金)を払う方が簡単で安く済むとなるのが自然です。

これからの障害者雇用を発展させる為には、まずは担当者が障がい者採用・障害者雇用に手間が掛けられる状況をつくることが先決です。

強烈なトップダウンの元で障害者雇用に着手しても、それが担当者の犠牲の上に成り立っている限りは一時的であり、継続は困難でしょう。

大切なのは障害者雇用をはじめることではなく、障害者雇用を継続させることです。継続可能な長期的計画を立てて取り組まなければいけません。

2.障がいへの誤解が多い

障がいへの誤解が多い

人事担当者の方に障がいについて質問した際に、誤解が多いことに毎度驚かされます。

最もよくある誤解は障がい区分によるものです。

例えば、「身体障がいの方はOKですが、精神障がいはNGです」であったり、「知的障がいの方にうちの業務は出来ません」のように障がい区分という単なる括りだけで判断する担当者の方は多いのですが、これは間違いです。

精神障がいにも度合いがあり、人によって違う障がい特性もあります。知的障がいや身体障がいも同様です。そして、何より一人ひとり性格が違いますので、業務への向き不向きは障がい区分だけでは判断できません。こういった誤解をしている担当者の多くは、以前居た障がい者の方と同じ障がいを過大評価し、それ以外の障がいを過小評価する傾向にあるように思います。

一昔前のように選り好みをしていても障がい者が来てくれる時代ではなくなった今では、そんな誤解は早く捨て去らなければいけません。障がいの特徴について勉強することは良いことですが、それだけで判断できる程、人間は簡単ではありません。

私は、誤解に支配されている担当者には、一人でも多くの障がい者を自分の目で見ることをすすめています。

今まで書類選考で落としていた人達を面接に呼ぶのも良いですが、障がい者支援施設を見学させて貰うことも有効です。百聞は一見に如かずで、自身が今まで判断材料にしてきたものがいかに単なる誤解だったかを痛感すると思います。中には、案内してくれた人が職員さんではなく利用者さん(障がい者)だったことに最後で気づくというケースすらあります。採用までいかないまでも良い勉強の機会やメリットがあますので、オススメです。

法律補助金の制度や障がいそのものの知識は大切ですが、頭でっかちにならず、実際にその目で障がい者の方を見て判断することも同様に大切であることを忘れてはいけません。障がいの誤解を解くのは難しいことではありませんので、まずは知識偏重型学習から脱却する為、担当者の方は騙されたと思ってその目で見て体験する機会を作ってみてください。

第1回「障害者法定雇用率未達成企業に共通する4つの課題」

法定雇用率未達成企業に共通する4つの課題[2/2]

2017.02.06

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